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Article Memories vol.8: 週刊東洋経済 1/16号:激動 マンション・住宅

Theme: 金融・経済・政治

Time: 約20分

Difficulty: 

 

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経済を見る眼 

悲観は不要、長期の構造変化に対応を

 

 ・インバウンド(外国人観光客)需要のように、無理やり抑えられてきたものは、一気に元に戻るだろうし、今まで以上に拡大する可能性もある。

 

不動産の建設のように、何十年という長期のスパンで収益性を考える投資の場合には、コロナ禍の影響は一時的な収益の落ち込みということになる。回復したあとの期間のほうがずっと長いのだから、目先の落ち込みや不安感に惑わされることなく、その長い期間の収益性をしっかり評価していくべきだ。

 

 ・企業内での設備投資も、本来は中長期的な収益性を判断軸にすべきものが少なくない。そうであれば、コロナ禍による短期的な落ち込みだけに目を奪われるのではなく、もっと長期の収益性を判断材料とすべきだ。

 

 ・ただし、厳密には目先の状況を重要な判断材料とすべきときもある。1つは、流動性の確保が必要な場合だ。どれだけ長期の収益性がよい事業であっても、現在のキャッシュフローがなければ、投資を実行できなかったり、事業の継続が難しくなったりしてしまう。そのため、長期的な収益性よりも、短期的な流動性の確保が必要な場合も出てきてしまう。

 もう1つは、現在の経済状況が、産業構造の変化や経済全体の構造変化を引き起こし、事業の将来性に大きなインパクトを与えてしまう可能性だ。この場合には、今後どのような構造変化が起こり、それがどのように将来の収益性に影響を与えるかをよく検討する必要が出てくる。コロナ禍を契機に、デジタル化やグリーン化への投資拡大に世界全体が舵を切っていることを考えると、ほとんどの産業において、元に戻るというよりは、構造変化が生じると想定すべき状況ではあるだろう。

 

・構造変化が生じるからこそ、今生じている変化から、将来に関する適切なシグナルを受け取るべきだ。その際には、現下の変化が、将来にわたってどんな大きな変化を生じさせるのか、という長期的目線、長期的なビジョンがより一層重要になる。そして、どうしても現状に引っ張られ悲観的になりがちな見通しを、いかに払拭していくかも大切なポイントとなる。 

 

ニュースの核心 

意外に効果大!? 新試算で浮上した年金改革案 

 

2020年12月25日、厚生労働省年金財政検証の追加試算を公表した。ほとんど報道されなかったが、今後の年金制度改革を占ううえで重要な資料になりうるものだ。追加試算で仮定されたのは、現在は別々である基礎年金と厚生年金の報酬比例部分の給付水準調整期間を一致させるというものだ。実際の法改正では制度内部の資金配分見直しが想定される程度で、家計や企業の保険料負担が増えるといったものではない。にもかかわらず、調整期間を一致させると、将来世代の年金給付水準は現行制度に比べ10%前後(標準世帯)も改善されることがわかった。

 

少子高齢化で諸外国に先行する日本では、04年の法改正により世界でもユニークな制度が構築された。一言でいえば、年金財政の均衡に、より重点を置いたものだ。具体的には、現在の保険料率(厚生年金18.3%の労使折半)を固定したうえで今後約100年間の収入総額を想定し、この期間内で収支が均衡するように給付水準を調整していくというものだ。給付調整では、将来世代だけの犠牲とせず、現在の年金受給者を含めて実施するマクロ経済スライドという方式が採られている。この給付調整は、基礎年金と報酬比例で個別に適用されている。見通しでは、収支差悪化が大きい基礎年金において、より長い調整期間を必要とし、給付水準低下は報酬比例を大きく上回る状況だ。これにより生じる不都合は、公的年金所得再分配機能が損なわれることだ。

 再分配機能を担う基礎年金の目減りがより大きく進むとなれば、シワ寄せは低中所得者の給付へ行く。これをどう是正するかという問題意識が政府や有識者の間で共有されてきた。

 

給付水準調整期間の一致は、結果的に基礎年金での短縮報酬比例での延長を意味するため、基礎年金では将来給付水準は改善され、報酬比例では悪化する。

 

有識者の間でもやや意外感があったのは、総給付(基礎+報酬比例)でみると、大半の世帯で給付水準が大きく改善されるということだった。

 

「意外な」結果が出た背景には、基礎年金に2分の1の国庫負担が充てられていることがある。基礎年金の給付が向上することで国庫負担も増え、大抵の所得層にとって報酬比例の低下分を補って余りあるほどになるからだ。逆にいうと、現状の変更を迫られるのは、国庫負担を担う財務省となる。この制度変更により約20年後に年1兆円前後の国庫負担増が予想される。

 調整期間一致の効果は大きいだけに今後、年金改革議論の主役の1つに加わるだろう。

 

ニュース最前線 

01 後手に回ったコロナ対策 「緊急事態宣言」を再発令

 

急な方針転換には、感染拡大がこれ以上続くと内閣支持率の低下に歯止めがかからなくなるという官邸の危機感があったとみられる。菅内閣の支持率は2020年12月に入って急落。感染拡大を抑えるための新たな対策を求める声が国民の間に広がっていた。

 

政府が緊急事態宣言に踏み切ったのは、内閣支持率の低下という要因もあるが、医療体制の逼迫が続いているからだ。 

 

行政当局が把握する重症者病床数は、流行ピーク時に確保する計画上の数値であり、すぐに患者の受け入れが可能かといえばそうではない。病院スペースの転用や機材の準備などに時間がかかるためだ。

受け入れ病床の確保が進まない理由は何か。日本はOECD経済協力開発機構)加盟国の中で、人口当たりの病床数が最も多い国であり、病床数という点では、感染者が圧倒的に多い欧米より有利にみえる。英国やドイツでは病院の多くが公立で、行政主導の医療体制を組みやすい。これに対して、日本の病院の7割は民間病院が占めている。感染した患者を受け入れるかどうかを決めるのは、それぞれの病院長であり、日本では行政が受け入れを要請するにとどまる。感染者の受け入れが可能な医療機関数のうち、事業主体別の割合は、民間病院は18%にとどまっている(20年10月時点)。こうしたことから、有識者の間では「公立病院や公的病院を中心に一部にシワ寄せが来ている」と指摘する声がある。

 

・公立(公的)であるか民間であるかに関係なく、病院側にも感染者を受け入れられない事情がある。その1つがマンパワー不足だ。急性期病院の多さが専門医の分散を招き、感染拡大に対応できていない可能性がある。

 2度目の緊急事態宣言では失敗は許されない。前回の緊急事態宣言のときよりも限定的な飲食店の営業時間短縮や夜間外出の自粛要請だけで感染拡大を止めることができるのか。予断を許さない。

 

02 日経平均「3万円台」説も 株価楽観論に潜むリスク

 

年末年始に新型コロナウイルスの感染者が急増し、「日経平均株価3万円」と鼻息が荒かった市場関係者のマインドに冷や水が浴びせられた。年末の大納会前日に30年ぶりの高値をつけたばかりの日経平均は3営業日連続で下落し、新年相場は出足から足踏みした。再発出される緊急事態宣言は、期間が1カ月程度で、営業を停止される対象業種も絞り込まれる。それゆえ、経済への下押し圧力は前回より限定的とみられるものの、21年1〜3月期のGDP(国内総生産)成長率はマイナス予想に転落。緊急事態宣言の期間も長期化が懸念されている。

 

・20年の日経平均は上下の変動幅が1990年に次いで史上2番目に大きかった。

 

年足で2年連続の陽線となり、アベノミクス以来の長期上昇トレンドが大崩れせずに継続している。21年は年末に向け3万円に迫るか、大台を超えるとのアナリスト予想が多い。背景には、各国政府の財政拡大中央銀行の大幅な金融緩和がある。FRB米連邦準備制度理事会)のバランスシートは過去最高の6.62兆ドルに拡大。日本銀行当座預金残高も年初に617兆円となり、前年同時期と比べて2割近く増加した。過剰流動性は株式市場のみならず、金や不動産、ビットコインの価格をも押し上げている。

 

さらに、コロナワクチンの普及で経済が正常化に向かうとの期待にも後押しされている。

 

20年後半の上昇ピッチが急だったため、年初の下落もまだ調整の範囲内で、緊急事態宣言でも上昇トレンドは崩れないというのがメインシナリオだ。

 

2万7000円を割り込んだ水準は投資家の強気・弱気の分かれ目となるからだ。歴史的に見ても、バブル時の最高値3万8915円(89年12月)から、バブル崩壊後の最安値7054円(09年3月)までの下げ幅の6割強を戻した2万6700円台は、多くの投資家に抵抗線として意識されている。

 

1ドル=102円台まで進んだ円高も気になる。FRBの金融緩和によるドル安が主因のため日銀も対抗策を講じにくい。拡張財政・金融緩和の出口議論のリスクもあるが、23年まで利上げをしないFRBをはじめ、早期の緩和縮小は想像できない。それでもワクチンが多数の人々に行き渡り、集団免疫がある程度でも形成されてくれば、無尽蔵の資金供給という金融・財政政策は大義名分を失う

 

・仮に数年後であっても、追加緩和の終了ETF(上場投資信託)の買い入れ額の縮小をどのように行っていくか。日銀がその検討を始めそうだという思惑だけで投資家がこぞって利益確定に走り、株価の上値を押さえてしまう。21年後半はそうしたリスクシナリオもある。

 

結局、金融緩和と財政拡大の出口は見えず、過剰流動性が株価を下支えする状況が当面は続くことになる。カネ余りゆえに、本格的な景気回復が遅ければ遅いほど好都合。足元の株式市場は、歪んだバランスの上で底堅さを続けている。

 

出口戦略量的緩和策やゼロ金利(政策)、マイナス金利(政策)などの超金融緩和策を解除して正常化を進めるに当たり、経済や市場に大きなショックを与えることなく軟着陸を図る戦略のこと。一般的には、軍事行動や投資活動などで、損害を最小限に抑えつつ撤退するための作戦のことを意味する。

【参考文献】

https://www.daiwa.jp/glossary/YST2461.html

 

 

03 三菱UFJ銀が大抜擢人事 新頭取に託された課題 

 

「金融機関は100年に1度といわれるような改革を進めなければならない時期にある。それに対応するため、世代交代、若返りを一段と進める」と頭取交代の狙いをそう語った。

 

半沢氏が率いる銀行部門は厳しい経営環境にさらされている。金利が続き、利ザヤが縮小しており、預金を集めて貸し出すという従来のビジネスモデルだけでは立ち行かない。足元では、新型コロナウイルスの影響で、企業の資金繰り支援という大きな課題も抱える。コロナの影響が長引き倒産が増えてくれば、与信費用の拡大も覚悟しなければならない

 

この先、預金と貸し出しを中心とする商業銀行のビジネスモデルが成長ドライバーになることは難しい。半沢氏には「損益分岐点を下げ、コスト構造を変える」ことが求められる。要は、経費率(営業経費÷業務粗利益)を下げ、収益力を高めることだ。20年3月期、MUFGは3メガバンク体制になって初めて三井住友フィナンシャルグループに純利益首位の座を明け渡した。海外子会社の減損が主因で、21年3月期には再び逆転する見込みだが、三井住友に距離を詰められていることは確かだ。

格差を生む要因の1つが店舗だ。三井住友は店舗削減で先を行く。

 

半沢氏は12月の会見で経費率が高い要因を問われ、「語りきれない。残念ながら、いろんな要因がある」としつつ、「本部の要員がほかのメガバンクより多く、海外での残高増加に伴って規制対応コストも高くなっている」と例を挙げた。

 

「旧3行合併後に大企業は三菱、個人はUFJといった“分割統治”をしたことで抜本的なリストラができなかったことが根本的な要因だ」と指摘する。行内の関係性を重視した結果として先延ばしにされてきた改革に、いよいよ手をつけるときが来たわけだ。

 半沢新頭取はどこまで大胆にコスト改革のメスを入れられるか。就任初年度から、その実行力が問われる。

 

フォーカス政治 コロナ失策生むあしき「日本モデル」 

 

日本モデルのおかげで感染拡大が軽度で済んだという楽観もあった。しかし、昨年末以来の感染者急増は悪い意味での日本モデルの所産ではないかと思える。あしき日本モデルとは、先の大戦で明らかになった日本の政策決定をめぐる政治家、官僚のマインドセット(思考態度)である。

第1は、取り組むべき目標が多岐にわたり、優先順位をつけられないという点である。政府は感染拡大の抑止と観光・サービス業を中心とした需要喚起策を同時並行で追求している。的確な目標を設定できないのは、政策に携わる政治家や官僚が不都合な真実を認識する知的廉直さを持っていないためであろう。

第2は、作戦・政策を遂行するために必要な物的手段を軽視する精神主義である。大阪をはじめ医療体制の逼迫が報じられている。政治の役割は人員、設備・資材を確保することであり、献身的に働く医療従事者に十分な報酬を提供することである。流行の第1波が収まった後、医療体制整備のための時間的な余裕は十分存在したはずである。しかし、コロナ感染者受け入れに伴う医療機関の収入減、医療従事者の疲弊は放置されたままである。

 

コロナとの「闘い」には合理性が不可欠である。しかし、政治における合理性の喪失は、安倍晋三菅義偉の2代の政権がもたらした帰結である。第2次安倍政権発足以来、為政者は国会審議における論理を徹底的に破壊した。

 

過去2回の総選挙は安倍前首相による突如の解散によるもので、野党側の混乱、弱体も相まって、争点不明の不毛な選挙だった。今回は準備期間も十分であり、政権を懸けた真剣勝負が期待できる。自民党に必要なのは、長期政権のおごりと腐敗について反省し、国会と国民に対して率直に謝罪することである。菅首相では難局を乗り切れないことが明らかになれば、正論を唱えて党内で孤立している石破茂氏やしがらみにとらわれない河野太郎氏を9月の総裁選挙で新しい指導者に押し立て、総選挙に臨むという手段もあるだろう。

 

・野党側は4年前に比べればはるかに態勢が整っている。問題は政権選択選挙に向けてどのような政権構想を打ち出すかである。立憲民主党共産党と明確な連立政権協定を結んで総選挙に臨むことは、政治的受容可能性の点でも、数の確保の点でも実際には困難である。次の総選挙で立憲民主党共産党と、コロナ対策・生活支援で大まかな合意をつくって議席数増を目指し、首尾よく自民党を凌駕できればその段階で、党派を問わずまっとうな政治を取り戻すための連立を幅広く呼びかけて政権樹立を目指すというシナリオである。

 自民党菅首相麻生太郎副総理、二階俊博幹事長を廃位するくらいの自己改革ができないならば、自民党を含めた再編成を志向することが必要となるほど、日本の危機は深刻である。

 

グローバル・アイ 米中テック戦争の切り札は米国でなく欧州が握る 

 

欧州連合(EU)の行政執行機関・欧州委員会が、デジタル規制でまたしても新たな世界標準を打ち立てた。同委員会が先日明らかにした「デジタルサービス法DSA)」と「デジタル市場法DMA)」は、巨大テック企業の力をそぐことを狙いとしており、GAFAなど米国を本拠地とする大手IT企業に幅広い影響を与える。

 

DMAは自社サービスの優遇を違法化するもの。一方のDSAはテック企業に対しアルゴリズムの開示のほか、ヘイトスピーチやデマといった有害コンテンツの削除という重い義務を課す。これらの対策により、デジタル経済の規制は欧州の枠を超えて大幅に強化されることになるだろう。というのは、EUの規制は世界的なインパクトを持つことが多いからだ。「ブリュッセル・エフェクト(効果)」と呼ばれる現象である。EUは世界有数の市場であるため、大抵の多国籍企業は市場アクセスの必要経費としてEU規制を受け入れている。各地の規制に逐一対応するのも手間なので、グローバルな規制対応をEU基準に合わせている企業も多いたとえそれが米国の大企業に多大な犠牲を強いるものであったとしても、EUの規制は米国の中小企業やインターネット利用者にメリットをもたらす。ITの巨人に競争を挑む米国の中小企業は、自国の政府ではなく、EUを頼みとしなければならない状況が何年も続いている。個人データ保護やヘイトスピーチ対策の強化を望む利用者は、米国にも多数存在する

EUが規制の世界標準づくりに動く一方で、米国はデジタル経済を野放しにし、長年にわたって拱手(きょうしゅ)傍観を続けてきた。だが米国の風向きもいよいよ変わりつつあるのかもしれない。米下院司法委員会は2020年にデジタル経済に関する報告書をまとめ、反トラスト法(独占禁止法)強化などの対策を強く求めた。米国は放任主義をやめて規制に動くのが賢明だ。その手始めとしては、個人情報保護を目的とする連邦法の制定が好適だろう。

 

さらに米国には、規制の主導権を取り戻さなければならない、もっと差し迫った理由がある。テック規制で世界的な影響力を強める中国の存在だ。バイデン次期米大統領はデジタル規制でEUと対決するのではなく、連帯の道を探るべきだ。中国の独裁的なテクノロジーの脅威を考えれば、EUと緊密に連携したほうが得策だし、米欧の利害対立も克服できないはずはない。何しろ双方の市民が求める人間中心のインターネットは、自由な民主主義個人の自由という共通の価値観の上に成り立っているのだから。

 

グローバル・アイ INSIDE USA 

学校予算を3倍に 新大統領が挑む教育改革

 

バイデン政権は、教育格差の解消を目的に公教育の充実をうたう。幼稚園から高校までの公教育に関し、連邦政府の予算を3倍に増やす方針だ。

 

90年代以降の米国では、公教育に競争原理を働かせる試みとして、チャータースクールが奨励されてきた。競争を好む共和党はもちろん、マイノリティーを支持基盤に持つ民主党も、チャータースクールには前向きだった。

 

バイデン政権の教育改革の重点は、従来型の公立学校にある。公教育の予算を増やして、貧困層の多い公立学校に集中的に配分する。一方で、同様の生徒を対象とするチャータースクールについては、生徒の成績などを厳しく監視し、成果が上がらない場合には、厳しい姿勢で臨むという。一部のチャータースクールで学力が向上していない例もあるため、公立学校の改革を軸に教育格差の是正を目指す方針だ。

 

・バイデン政権の公教育投資の狙いはほかにもある。労働組合だ。公立学校の教員の多くは、民主党の支持基盤である教員組合に属している。公立学校への予算拡充で、労組に属する教師の待遇を改善したい考えである。

 

最近の流行は、裕福な家庭が集まり、自費で専任の教師を雇って子たちを少人数で勉強させる仕組みである。感染リスクの低さに加え、学校再開後も、出遅れた子を待つ必要がない。「持てる者」の選択が、教育格差のさらなる拡大を招きかねない状況だ。

 

マネー潮流 政府への抱きつき戦略を続ける日銀 

 

日本銀行は「2%を実現するためのより効果的で持続的な金融緩和の点検」を行い、3月の金融政策決定会合をメドに公表する。

 

金融市場に過大な期待を持たせないよう、日銀自らが、「金融緩和の枠組みの変更は必要ない」と明言している。

 

日銀がわざわざ「金融緩和の点検」を予告したのはなぜか。そこには2つの狙いがあると考えられる。

1つは、昨年12月にECB(欧州中央銀行)、FRB米連邦準備制度理事会)が追加緩和策を打ち出す中、日銀が何も出さないと、他国の中央銀行と比べて追加緩和に慎重とみられて、円高が進むのではないかと、警戒したことだ。

それ以上に重要なのは、コロナショックを受け物価上昇率がマイナスにまで大きく下振れて、日銀の2%の物価目標の妥当性や目標達成失敗の責任を問う声が高まること、さらに、もはや2%物価目標達成ではなくデフレ回避に向けてより積極的な金融緩和をすべきとの意見が世間で増えていくことなどに対し、先手を打つ狙いではないか。副作用を一段と高める一方で効果が期待できない追加緩和策を、日銀はもはや実施したくないだろう。

 

「点検」を踏まえて、日銀は資産買い入れ策イールドカーブコントロールの柔軟化措置を打ち出すのではないか。それは緩和の持続性を高める措置、と表向きは説明されようが、実際には、副作用に配慮した事実上の正常化策の一環だ。

 

コロナショック後に日銀が最も注力してきたのは、政府の政策を側面支援する形で、企業、雇用を守るための銀行への資金供給策「特別プログラム」だ。

 ただし、政府自身のコロナ対策は、特別貸出制度で企業を流動性危機から救う施策や給付金・助成金で企業・労働者を支える施策から、企業の業態転換・M&Aなどを補助金・税優遇で助け、生産性向上につなげる施策へと移りつつある。さらに、成長戦略の柱として、地球温暖化対策、デジタル化の推進のため、企業に関連投資を促す財政・税制上の措置も導入する。

 日銀は、こうした政府の政策転換を追いかける形で、中小企業の競争力向上に資する業態転換M&Aにかかわる銀行融資地球温暖化対策やデジタル化に資する企業の設備投資への銀行融資なども、現在の「特別プログラム」の対象に加えていく、あるいは同様のスキームを新たに創設する可能性が考えられる。また、地球温暖化対策、デジタル化に積極的な企業の銘柄で構成される株価指数に連動するETF(上場投資信託)の新規買い入れを始める可能性もある。

 できる限り政府の政策に寄り添い続けるというコロナショック後の日銀の政策姿勢、いわば「抱きつき戦略」は、この先も続くことになるだろう。

 

 

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