Book Memories vol.2 : 元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法
Theme: 金融
Time: 約20分
Difficulty: 易
vol. 1の記事
Book Memories vol.1 : ビジネスエリートになるための 教養としての投資 奥野一成 - BobY2
で述べたように、 保守的な日本人は、「投資」という言葉に対してあまり親しいイメージを持っていない。それはおそらく、「投資」することは難しく、損をすることの方が多いと考えているからだ。
しかし、アメリカをはじめとする国々では「長期・積立・分散」という投資の基本を実践し、損するリスクを抑えてまったりと資産運用している人々が多く、そういう意味では、日本人は「自分の所有する資産に対して何もしない」ことによって損をしていると捉えることもできる。少子高齢化により、将来の退職金、年金に対する不安の高まる現在の日本においては資産運用は将来の幸福のためには欠かせないものとなっており、特に日本人は若いうちから「長期・積立・分散」の資産運用を実践するべきである。
幸い近年のAIの発展から、ロボアドバイザーによって、「投資は難しい」「投資は怖い」というイメージを持ち、深い知識を持たない人々にも「長期・積立・分散」の投資を今すぐ始めることが可能になっている。これからの予測不能な時代においても今まで通りの衣食住足る生活、あるいはより良い生活を送るために、金融危機などのイレギュラーな事態にも対応可能な”正しい”資産運用を行える環境があることを知り、行動を起こすべきである。
今回そのようなことを学んだのは、
元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法
柴山和久著 ダイヤモンド社
という本。
link below ↓
自分なりに大事だと思ったところをまとめたので、興味のある方は読んでいただければ、と思う。
特に本を読んだ上で自分なりの解釈だったり派生させたことを書いたりしているわけではないが、一種の教科書的な感じで大事な点をさくっとまとめ、自分の知識の幅を広げていくためのアウトプットのツールとして使うことにしている。また記事の最後にVocabs欄を設け、キーワードや経営学用語などを載せているので知識を効率的に広げていただきたい。読者の方々にはもし知らないことがあれば身につけていただきたいし、ただ要約しているだけなので、よくわからない点があれば自ら購入して読んでいただくなりと、自由に使っていただければと思う。
[Vocabs]
・プライベート・バンク:通常は3億円から5億円、少なくとも1億円の資産を預けないと口座開設すらできない、富裕層の金融機関。
・長期・積立・分散:アメリカを含む世界中の株式や債券などに幅広く資産を分散し、資産のバランスを調整しながら毎月、追加投資を行ことを10年、20年と続ける。
・小型株:上場企業の中でも比較的、規模が小さい企業の株式。
・ボトムアップ・アプローチ:個別企業に対する調査に基づき、個別銘柄を積み重ねてポートフォリオを組成していく運用方法。
・テーマ投信:その時々で盛り上がっているキーワードをテーマに投資先を選ぶ。
「表面的なわかりやすさ」、「過去のリターンの高さ」から、投資初心者に人気。
多くのテーマ投信は「過去のリターンの実績」が高い。
・早期償還:投資信託が運用停止になり、その時点の資産価値で現金になって戻ってくること。
・デューデリジェンス:事業や企業の価値や将来性を評価すること。
・アウトサイド・イン:企業の内部情報にアクセスせずに、公開情報の範囲で企業の価値や将来性を測ること。
・アルゴリズム:複雑な数式の組み合わせ
・ノルウェー政府年金基金:世界最大規模の運用資産と洗練された投資手法、そして高い運用実績で知られる。
・21世紀の資本:世界的なベストセラーとなったトマ・ピケティ教授の本。
・r >g :rは資本のリターン、gは経済成長率。
「rはgより大きい」という意味の数式は、投資のリターンが経済成長率を上回ることを意味する。
・リスク・プレミアム:リスクを取ったことによって得られる特別な見返り(プレミアム)。
・実感なき景気回復:給与の伸びが経済成長率(g)を下回ること。
・BRICs:ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の頭文字を合わせた造語です。Goldman Sachs が2003年に発行したレポートの中で用いて以来、一般にも広く使われるようになった。
・ミセス・ワタナベ:日本のFX投資家の総称。
一人一人の取引額は少額でも数のパワーで全体の取引額が大きく、為替市場に影響を与えることもある。ほとんどのプロの機関投資家の格好の餌食になるが、ごく一部が成功して億単位の資産を築く。
・コア・サテライト運用:あるべき資産運用の一つの形。
「コア」となるのは「長期・積立・分散」で、「コア」を取り囲む「サテライト」、つまり衛星のような存在が個別株やテーマ投信による短期投資。
・GPIF:日本政府の年金基金。年金積立金管理運用独立行政法人。
・株価指数:投資対象とする市場全体をきちんとカバーしているかどうかの基準。
米国株の場合、いろいろな種類の株価指数があり、最も有名なのは「NYダウ」だが、AppleやP&G、Walmartなど米国を代表する大企業30社しかカバーしていない。
同じく有名な「S&P500」は、米国に上場している企業の時価総額の8割を占める500社をカバーしている。課題があるとすれば、S&P500がカバーする500社は、大企業ばかりだということ。
あまり知られていないが、「Russell 3000」や「CRSP US Total Market Index」 といった株価指数に連動する投資信託は、大企業と中堅企業の両方に投資し、株式市場全体をカバーすることになる。
VTI:Apple、MIcrosoft、Amazon、Alphabet(Google)、Facebook、Johnson&Johnsonなどの巨大企業から中堅企業まで3000以上の銘柄が含まれているETF(上場投資信託)。
米国の株式市場全体に投資するのとほぼ同じ効果が得られる。
・トラッキング・エラー:投資信託の価格の動きと、目標とする株価指数とのずれを測ることができる指標。
・純資産総額:資産運用をずっと続けられるような、安定した投資信託であるかの基準。
投資の大きさ。投資家からどれだけ多くのお金を預かっているか、つまり人気度をチェックできる指標。
・早期償還リスク:純資産総額が小さい投資信託が、ある日突然、運用停止となり償還されてしまうリスク。
・リバランス:rebalancing。
最適な資産配分になり続けるよう調整すること。
多くの場合、「値上がりした資産を売り、値下がりした資産を買う」という方法を取る。
・効率的フロンティア:リスクが同じでリターンが一番高い点の集合の曲線。
曲線上にある点の一つ一つは、最も投資効率が良い資産配分になっている。
・バランス型:株式や債券などが一定の割合で組み合わさっている投資信託。
バランス型を一つ買えば、複数の資産を持てることになるが、時間が経つにつれ、株式の割合が年齢と合わなくなり、多くの富裕層はこうした方法は取っていない。
・安く買って、高く売る:Buy low sell high。
投資の基本。
・フィデューシャリー・デューティー:fiduciary duty。
信頼される側が、信頼せざるを得ない側の利益を最優先する責任を負うよう定めたルール。
2017年に金融庁が定める。過去数百年にわたってイギリスやアメリカで発展し、20世紀のアメリカで金融機関の責任に応用されるようになる。
・Betterment:米国のロボアドバイザー。
2018年3月の時点で預かり資産は約1.5兆円(135億ドル)。
・ハーバードはなぜ日本の東北で学ぶのか:山崎繭加著 ダイヤモンド社
本文
[:1.5つの失敗から学んだ投資の鉄則]
[:2.時間と世界を味方につける資産運用とは? ]
[:3.日本の資産運用はガラパゴス化している]
[:4. 日本人が知らなかった”正しい”資産運用]
[:5. 人間の脳は資産運用に向いていない]
[:7. お金から自由になったら何をしたいか]
・アメリカの個人金融資産に占める預貯金の割合は、わずか14%。
・大きな資産を築くことができるのは、金融リテラシーが高いからではなく、富裕層向けの資産運用サービスを利用できるから。
一番備えるべきは日本人
・資産運用は長期的な目線で行う。投資対象を世界中に分散する。年齢とともに少しずつリスクを下げていく。
・「老後への備え」の解になるのは、資産運用。
・人間が資産運用に失敗する主な要因は、ノーベル賞に二度輝いた行動経済学によって既に明らかになっている。例えば、タイミングを見計らって投資をすると、かえって損をすることの方が多いこと。
1.5つの失敗から学んだ投資の鉄則
・ごく普通の金融商品であっても、正しく活用しないと結果として失敗してしまうのが資産運用の難しいところ。
銀行の特別待遇に舞い上がった
「過去のリターンの実績」で選んだ
・「過去のリターンの実績」だけに気を取られ、投資信託の中身やリスクを理解しないままに選んでしまった。
・「過去のリターン実績」が良いからといって、それが続くとは限らず、むしろその逆のケースが多い。アメリカでは、2006年から2011年までの5年間でリターンが高い投資信託の上位20%について、その5年後に追跡調査すると、半分近く(46%)のリターンが下位20%まで悪化するか、運用停止になっている。
・テーマ投信で成功する方法のひとつは、まだブームが到来していないテーマを選ぶこと。
・継続的に適切な売買のタイミングを見極めることができる投資家は、プロのなかにも少ない。
銀行のブランドだけで判断した
・資産運用の王道は、「長期・積立・分散」。
・アメリカでは、大規模になれば良心的に運営していてもコストをカバーできるため、純資産額が数兆円の投資信託が人気。日本では、預かり資産が100億円に満たない投資信託が全体の8割を占めているため、日本の投資信託を買うときは特に、純資産額総額を確認し、長期投資を託すにふさわしい安定性があるかどうかを確認する必要がある。
オススメされた株にそのまま投資した
・十分な時間と費用をかけて情報を集め、徹底的に分析を行えば、企業の価値や将来性はある程度、合理的に評価できる。
「有名だから」と投資した
・有名企業には、時として個人投資家による投資が集中し、「買いたい」という人が多くなると需給のバランスが崩れ、株価が実力以上に上がってしまう。
・「長期・積立・分散」の資産運用が、日本では全く知られておらず、一般の人が世界水準の資産運用をしたいと思ってもその方法を知るすべがない。
名だたる投資家たちの実績も幸運による、という事実
・資産運用の評価の一つに、ベンチマークとなる指標(例えば日経平均)と比べる方法があり、重要なのはリスクとリターンの両方を比較することで、リターンだけを比較するだけでは無意味。
・名だたる投資家や資産運用会社の功績の多くが、いわば幸運によってもたらされていた。
2.時間と世界を味方につける資産運用とは?
10兆円も10万円も、資産運用のアルゴリズムは同じ
・10兆円でも10億円でも、それこそ500円でも、資産運用のアルゴリズム自体は同じ。
・「長期・積立・分散」が、資産運用の世界的なスタンダード
・世界最大級のファンドでも過去20年のうち4年はマイナスのリターン
・リスクを適切な範囲に抑えつつ、長期的なリターンの最大化を狙って資産運用を行う。
・世界中の株式や債券、不動産やコモディティ(金やプラチナ、原油など)に、バランスよく分散する。詳しくは、株式、不動産、コモディティは指数連携型のETF(上場投資信託)を活用し、債券は満期の異なる10銘柄ほどで組み合わせる。
「長期・積立・分散」を25年間続けたら
・過去25年の間には、国際的な金融危機が5回発生している。
1997年 アジア通貨危機
1998年 ルーブル危機
2000年 ドットコム・バブル
2008年 リーマン・ショック
2012年 ユーロ危機
・金融危機によって資産は一時的に減るが、「長期・積立・分散」の資産運用を続けていれば増えていくのは、世界経済が中長期的に成長し続けているから。世界全体に分散投資をすると、中長期的には資産運用のリターンが世界経済の成長率を上回る。
・分散投資が大切なのは、さまざまな資産を組み合わせることで、リスクを減らして安定的に資産運用できるから。
・リーマン・ショック当時、株式市場は暴落していたが、米国債や、安全資産とされる金の価格は上昇していた。
・資産運用をしていて大きく円高が進むと、円建てでは資産が目減りするため、怖くなって資産運用をやめてしまうかもしれないが、冷静に考えると、円高は海外の資産に割安で投資をする絶好のチャンス。
・円高のときには割安で、円安のときには割高で追加投資をする。円高で資産が目減りした局面でも、淡々と追加投資をするから、為替リスクをある程度ならしていくことができる。
・「相場が上がったときに強気になって投資をし、相場が下がったときにパニックに陥って売ってしまう」という心理的に陥りがちな罠を積立投資によって避けることができる。
退職金も年金も減り、若いうちの資産運用が欠かせない
・日本では若い人ほど、働きながら資産運用をする必要に迫られている。
・現在35歳の人が定年を迎える25年後には、退職金の平均額は1000万円に満たない水準になる。
・多くの会社では、定年前にやめると退職金の額が大きく削減され、転職が当たり前となった今、退職金を受け取ることはもはや「当たり前」ではない。
・これまでのライフ・プラン : 退職金で資産運用
これからのライフ・プラン : 働きながら資産運用
「r > g」の実践 -世界経済の成長を上回るリターンを目指す-
・世界銀行や国際通貨基金(IMF)は、世界経済が今後、年3~4%程度で成長していくと予測している。これを前提とすれば、「長期・積立・分散」の資産運用では、世界経済の成長率を上回る4~6%のリターンを目指すことができる。
資産運用で、格差社会から身を守る
・日本をはじめ多くの先進国では、投資によって得られた利益に20%前後の税金が課せられる一方、通常の経済活動から得られた利益には、所得税あるいは法人税が一般的に30~60%ほど課せられる。先進国では、税制で優遇して投資を促進することで、イノベーションを起こして経済を活性化させ、雇用を増やそうとしている。
・皮肉なことに、21世紀が平和の世紀となれば、人類社会は再び格差社会へと逆戻りしていく。
・「長期・積立・分散」の資産運用によって、世界経済の成長率を上回るスピードで資産を増やし、格差社会から身を守っていく。
3.日本の資産運用はガラパゴス化している
金融の専門家もエリートも日本人は預金頼み
・銀行に万一のことがあっても1000万円までは国に保護されるから、複数の銀行の預金に1000万円ずつ入れる。
・金融の専門家ですら自分の資産は預金中心。
・日本人の1800兆円の金融資産のうち、実に51.5%が預貯金。
「長期・積立・分散」は日本ではうまくいかなかった
・日本国内だけで「長期・積立・分散」の資産運用をしても、海外の富裕層のように成功体験を積むことは難しかった。
ガラパゴス化は必然だった
・欧米では、為替取引は投資銀行や機関投資家のトレーダーが行うものとされており、個人投資家が行うケースは稀。
日本はお互いの富を奪い合うゲームへ突入
・買った時のリターンを大きくするには、値動きが鳴るべき大きい投資対象を選ぶ。
日本の資産運用は新たなステージへ
・お互いの富を奪い合うゲームは、本来あるべき資産運用の姿ではない。
・富を奪い合うのはなく、世界経済の成長がもたらすパイを分け合う資産運用なら、投資した人が皆、豊かになることができる。
資産も料理のように「メイン」「サイド」で組み立てる
・個別の株式やテーマ投資などはやるべきではない、やってはいけない、ということではなく、興味があるなら、いろいろなタイプの投資をやってみるのがいい。
・資産運用を成功させるために守るべき重要なルールは、「長期・積立・分散」の資産運用を、7割以上に保つということ。
七面鳥の罠:安定したリターンに安心してはいけない理由
・リスクを明らかにすることが規制で求められているのは金融商品のいいところ。しかし実際には、個人投資家は過去のパフォーマンスに目を奪われ、リスクについての説明を読み飛ばしてしまうことがよくある。
・七面鳥のたとえ話は、限られた期間の実績を見て安心するという心理的な罠に陥るなという警告を与えてくれる。「リスクが低くリターンが高い」という金融商品は存在しない。仮にそのような実績となっていたとしても、見逃しているリスクがないか、パンフレットを隅々まで確認するなど、納得がいくまで調べる必要がある。
4.日本人が知らなかった”正しい”資産運用
・「長期・積立・分散」の資産運用の6つのステップ
ステップ1:資産運用の目標を立てる
ステップ2:最適な資産配分(ポートフォリオ)をつくる
ステップ3:具体的な銘柄を選定する
ステップ4:取引の前に、もう一度リスクを確認する
ステップ5:積み立てを設定する
ステップ6:リバランスを着実に行う
ステップ1:資産運用の目標を立てる
・老後のために資産運用するなら、将来、年金が受け取れるという前提で3000万円から4000万円あれば安心だと言われている。
ステップ2:最適な資産配分(ポートフォリオ)をつくる
・一人一人にとって最適な資産配分は、投資を始める年齢、運用できる期間、投資の経験があるかないかによって変わってくる。
・20~40代であれば、ある程度リスクを取れるという前提に立つと、「債券」などに比べてリスクが高い「株式」の割合を70%~80%にまで増やすことが一般的。
一方、50~60代で10年後くらいにリタイアを考えているなら、「株式」の割合は50~60%が妥当。
・「株式」の割合を減らせば、期待できるリターンは減るが、リスクも抑えられる。資産が大きく減るのが不安だという人は、リスクを抑えてスタートするのも良い。
・「長期・積立・分散」の資産運用では、どの企業や産業の株価が上がるのかを正確に予測するのはほとんど不可能であるから、特定の企業(例えばApple)や特定の産業(例えばヘルスケア)に集中せず、米国の上場企業になるべく幅広く投資することを考える。
ステップ3:具体的な銘柄を選定する
・最適な投資信託を選ぶ3つの基準
「投資対象とする市場全体をきちんとカバーしているかどうか」
「資産運用をずっと続けられるような、安定した投資信託であるか」
「コストパフォーマンスが良いか」(手数料)
・米国の株式市場全体をカバーするような投資信託を選ぶ。
・日本の場合、トラッキング・エラーが開示されていない投資信託や、開示の仕方が非常にわかりにくい投資信託がある。わからなければ判断のしようがないため、選択肢から外すのが賢明。
・純資産総額が1000億円以下の投資信託はお勧めできない。
・日本で売られている投資信託の8割は純資産総額が100億円未満で、しかも悩ましいことに、日本では良心的な運用方針で運営されている投資信託に限って、純資産額総額が非常に小さい。
・米国の投資信託やETF(上場投資信託)の場合、すべての手数料が開示されているので、比べるのは簡単。
・難しいのは、日本の投資信託を選ぶ時で、残念ながら、一部のコストが小さなフォントや注意書きで開示されているだけ、といったケースもある。日本では、コストを誠実に開示している投資信託の方が手数料が高い、と誤解されているケースもあり、注意が必要。
ステップ4:取引の前に、もう一度リスクを確認する
・「相場変動リスク」「為替変動リスク」「信用リスク」
・世界経済全体に投資してリターンを狙うということは、国際的な金融危機が起これば、資産が大きく減るリスクがある。
・リーマン・ショック級でなくとも、過去25年で国際的な金融危機は5回発生している。今後、20~30年と資産運用を続けていくにあたっては、幾度かの金融危機を乗り越える場面があると考え、リーマン・ショック級の最悪のシナリオも想定したうえで資産運用を始めることが大切。
ステップ5:積み立てを設定する
・積立をしながら、株価が上がる局面でも下がる局面でも淡々と投資していく方がいい。
・余裕があるなら、毎月の積立額を少しでも増やしてみる。
・株価が下がったり、円高になったりして資産の評価額が下がった時の落胆がかなり大きいと予想されるため、無理に積立をすることはお勧めしない。
・純粋に長期投資という観点からは、手元にあるお金すべてを早く資産運用に回せるというメリットから、一括投資をお勧めする。
・本質的な問いは、「一括と積立、どちらなら、長期投資を続けられるか」。元本割れのリスクも理解したうえで、「自分は一括投資をして、資産全体をより長期的に運用しよう」と思うなら、一括投資が向いている。
・資産運用をいくらから始めるか迷っているなら、手元にあるお金のうち、半分を一括投資、残り半分を1~3年かけて積立投資とし、バランスを取ってみるのもいい。
・最初に手元にあるお金を投資し終えた後は、例えば毎月、新たな余裕資産が入ってくる場合には、やはり積立投資をしていくことをお勧めする。
ステップ6:リバランスを着実に行う
・リバランスを行うと、中長期的に資産運用のリスクを下げつつリターンを上げられる。
・リバランスは1年に一度、多くても半年に一度のペースで行う。加えて、相場に大きな動きがあって資産配分が大きく崩れた時にも行う。
・値上がりした資産の一部を売ることで税金が発生する可能性があり、あまりに頻繁過ぎるリバランスはかえって逆効果になることがある。
・工夫すれば、値下がりしている資産を優先して買い、積立投資と同時にリバランスを行うことも可能。
・積立投資をしながらリバランスをすると、値上がりした資産の一部を売らなくていいので、税金がかからない。
富裕層は資産配分をこう決める
・最適な資産配分を実現したいなら、私たち一人一人の金融資産は「効率的フロンティア」上にあればよい。
・数十年かけて「効率的フロンティア」上を動かしていく。
・「最適な資産配分」は、複数の投資信託を組み合わせて買うことで実現できる。株式の投資信託、債券の投資信託......と、資産クラスごとにいくつかの投資信託を組み合わせて持っておけば、それぞれの投資信託で運用する資産を自分のタイミングで少しずつ変えていくことができる。「最適な資産配分」を実現し続けるには、複数の投資信託を組み合わせることをお勧めする。
「長期・積立・分散」なら、投資の初心者がプロより有利
・「短期的なリターン」をどうしても求められてしまうプロと比べ、一般の個人投資家の方が有利なこともある。
・時間を味方につけるには、資産運用をなるべく早く始め、長く続けることが大切。若くから始めていれば、より長い時間を味方にできるので資産運用に成功しやすくなる。
・長く続けて時間を味方につけることは簡単に聞こえるが、プロの投資家にとってはハードルが高い。
・為替ヘッジをかけると確かにリターンは短期的に安定するが、コスト(一種の保険料)もかかるため、長い目で見るとリターンは悪化する。
・プロの投資家とは異なり、個人投資家は誰からも運用報告を求められず、長期投資に徹することができる。短期的なリターンに一喜一憂しないと心に決めれば、時間を味方につけ、長い目で資産運用を続けられる。
資産運用をどう終えるか
・資産を取り崩すメリットは、一括で引き出すわけではないので、リタイア時点でたまたま株価が高いか低いか、円高か円安かに左右されずに済む、ということ。
毎月取り崩しをすることで、株価や為替のリスクを和らげることができる。
・運用している資産が多いと、リタイア後も資産の額が増え続ける。つまり、運用で資産が増えるスピードが、取り崩しのスピードを上回る。やや極端な事例だが、「長期・積立・分散」の資産運用をリタイア後も続けていく効果の一例である。
・生活費に余裕がある間は「長期・積立・分散」の資産運用で資産を築き、リタイア後は「長期・分散」で毎月取り崩しをしながら資産運用を続けていくのが良い。
5. 人間の脳は資産運用に向いていない
人間の脳が正しい行動を妨げる
・多くの投資家が行っているのは、本来あるべきリバランスとは正反対の行動。
(高く買って、安く売る)
脳は「損すること」が大嫌い
・資産運用をするとき、直感があてにならないのは、たとえ一時的にでも、人間の脳が「損をすること」を極端に嫌うから。
・行動経済学の研究では、「損をすること」による感情の揺れは、「得をすること」による感情の揺れのおよそ2倍になると言われている。
・「損をしたくない」というごく自然な感情が、冷静な思考を妨げているのが人間の脳が資産運用に向いていない本質的な理由。
資産運用のスタート直後ほど一喜一憂する理由
・リターンがゼロ付近で動く、つまり元本付近でプラスとマイナスを行ったり来たりするときは、ほんのわずかな変化にも過敏に反応してしまう。
・心の揺れは、「長期・積立・分散」の資産運用を軌道に乗せる上で、極めて大きな障害になる。
・資産運用を始めたばかりの苦しい時期を乗り越えることが、「長期・積立・分散」の資産運用を成功に導く。
リーマン・ショックでは「何もしない」が正解だった
・過去の金融危機で株価は大きく下落したが、やがて回復している。
・今回も一時的な下落であるなら、損失も一時的なものに留まる。
・株価が大きく下がっている今売ると、一時的であるはずの損失が確定してしまう。
・手元のお金に余裕があれば、割安で追加投資をする大きなチャンス
金融危機を予測するのは難しい
・Lehman Brothers、Merrill Lynch、Morgan Stanley などの投資銀行は、リスクを減らすどころかどんどん増やし、経営破綻するか、破綻の寸前まで追い込まれた。
一方、リーマン・ショックが起こる前に資産配分を変えてリスクを減らしたのが、JP Morganだった。投資のプロの間でも、金融危機が起きるか起きないかの見立ては、大きく分かれた。
・金融危機を予測すること、いざ金融危機が発生した時に正しく行動することは投資のプロでも難しい。
・金融のプロの世界では、知識も経験もあるトレーダーが取引するより、あらかじめ組み込まれたプログラム通りに行う自動取引が選ばれ始めている。人間の脳はそれほど感情に左右されやすく、投資に向いていないことの裏返しと言える。
富裕層が資産運用をプロに任せる本当の理由
・資産運用を代々プロに委ねてきた富裕層は、自分が資産運用のプロではないということをよく知っている。人間の脳が資産運用に向いていないということも経験値からわかっている。彼らは自分の判断で資産運用をせず、プライベート・バンカーに任せることで、感情による失敗を未然に防いでいる。
・投資が趣味というわけでもない限り、富裕層は資産運用をプロに任せてしまう。仕事に充てたり家族と過ごすなど、もっと大切なことに自分の時間を使うべきだと考えている。
スイスのプライベート・バンカーが明かした、富裕層の悩みごと
・富裕層向けの資産運用サービスとして長い伝統を誇るのは、なんといってもスイスのプライベート・バンク。
・富裕層は「資産を守ること」を一番に考えている。ヘッジファンドに出資して、ラッキーだったらリターンが増えるが、資産が大きく減ってしまうリスクがあり、多くの富裕層はそのリスクを取りにいかない。
・余計な投資をしないことで予期せぬ損失を避け、世代を超えて富裕層の資産を守り、増やしている。
・資産を守り、増やすのが目的だから、教科書通りの長期的な分散投資が基本。
スイスのプライベート・バンカーにとって最大の名誉は、今の世代だけでなく、その子や孫へと、世代を超えて資産運用を任せられること。
・富裕層の悩みのほとんどは、事業を誰に継がせるか、子どもの教育をどうするか、など資産運用以外のこと。
「スーツはジーンズの敵」
・金融とITで起業するなら、自分でコードが書けるようになることは絶対に必要。
・スーツの世界の感覚でエンジニアの世界を理解しようとしてはいけない。
・資産運用のアルゴリズムは、10兆円でも、10億円でも、10万円でも、それこそ500円でも同じように使える。あくまで数式であり、代入する数字は何でもいい。
AIがあなたのプライベート・バンカーに
・きめ細やかなサポートをしていると、プライベート・バンカーは、1人につき20人程度の顧客に対応するので精一杯で、この壁を乗り越えるのが、AI。
・どのアドバイザー(人間やAI)に依存するか、どのような方針で資産運用をするかだけを決めればよい。資産運用についての悩みから解放され、取引に時間を費やすこともなく、そこから生まれる精神的なゆとり、時間的なゆとり、経済的なゆとりは、より豊かな人生を歩み、より豊かな社会を築くために活用できる。
「昔は、自分で資産運用をしていた時代があったらしいよ」
・AIを使った資産運用サービスは、資産運用の必要性をなんとなく感じながらも一歩踏み出していない大多数の人々のためのサービス。
AIが資産運用をしたら、株式市場が不安定になる?
・様々なタイプのAIが発展していくシナリオのほうが現実的であり、その場合には、AIによって株式市場が不安定になるという懸念は杞憂に終わる。
・倫理的な課題
第1に、私たち人間がAIの正しさをどのように判断するか。
第2に、AIの仕組みについての透明性をどう担保するか。
第3に、AIが利用者の利益を最優先するよう設計されること。
・テクノロジーはあくまで道具であり、それを使って利用者の利益を最優先する仕組みや環境を整えていくことの方が大切。
7. お金から自由になったら何をしたいか
自由になるために実践すべき3つのこと
・若い時は自己投資で可能性を広げる
働かなくても2年間やっていける蓄えをつくる
収入が増えても生活水準を上げすぎない
自己投資で将来の可能性を広げる
・若いうちは無理して資産運用をするより、自分に投資する。
・若い時の自己投資に勝るものはない。自分自身のスキルを磨き、視野を広げるための自己投資は人生を豊かにし、やがては何倍、何十倍もの大きなリターンとなって返ってくるはず。それは「長期・積立・分散」による年4~6%程度のリターンではなく、英会話を学ぶ、資格を取る、バックパッカーとして世界を巡るなど、人それぞれの自己投資のやり方がある。
・若いうちは自己投資をして、なお余裕があるなら資産運用をする、というくらいの考え方でちょうどいい。
「自立した個人」であるためのお金
・応募する側と同じく、採用する側も必死で、学歴や経歴は目を引くものの、やりたいことがはっきりしていない人を採用する余裕はない。
収入が増えても生活水準を上げない
・東京でもニューヨークでも、傍から見れば不相応な生活水準を維持しようと、やりたくない仕事を続けている人をたくさん見てきた。日本人の場合、やりたくない仕事をやるために収入を下げて転職しようとすると、家族の反対にあうケースも多く目にした。
お金から自由になったら何をしたいか
・法律上、第一種金融商品取引業(いわゆる証券業)を営むために最低限、必要な資本金は5000万円。
・世界経済の成長は、資産運用でお金を増やしていく上でのベースとなる。
・真剣に考えるべきは、「何のために資産運用をするべきか」ということ。資産運用によってお金を増やすことは、あくまでも手段であって目的ではない。
・日本では、お金の話をするのはタブーだというイメージが強い。
・「清貧」、「金の亡者」、「守銭奴(しゅせんど)」、「成金」、「ヒルズ族」といった言葉や考え方が定着した背景には、とりわけ「失われた20年」に先立つバブルの時代に、手っ取り早くお金を儲けることや、簡単にお金を増やすことが過度に追求されたことへの後悔と反省の念があるのかもしれない。
以上。
これらの知識をもって、「長期・積立・分散」の資産運用を始めてみてはいかがだろうか。
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