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Article Memories vol.10: 週刊東洋経済 1/30号:1億人の「職業地図」

Theme: 金融・経済・政治

Time: 約20分

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経済を見る眼 

生活保護に至る前の支援の意義

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、生活困窮者が増えている。しかし、生活保護の受給者数を見ると、意外なことに増えていない。

 

今後受給者増の可能性はあるが、なぜこれまで増えてこなかったのか。
この背景として、雇用調整助成金生活福祉資金の特例貸付などの利用が影響したという見方がある。それに加えて、リーマンショック以降、住居確保給付金など、生活保護に至る前の段階での支援制度が拡充されたこともあるだろう。

 

生活保護に至る前の段階で支援をしていくことには、次のような利点があると考えている。
第1に、早期に生活再建を図れる点。

第2に、スティグマ(恥辱)を感じにくい点。

 

ただし、住居確保給付金は有期の制度である。住居さえ確保できれば何とかやり繰りできる人は多いので、期限後の支援のあり方を議論する必要がある。一方で、感染拡大が長引けば、生活保護の受給者が増えて、「社会保障の最後の砦」としての生活保護の重要性が一層高まる。もっと「入りやすく出やすい制度」にできないか。
 未来は不確実であり、誰もが貧困に陥るリスクを抱えている。広く社会として、生活困窮者を救済していく制度のあり方を議論すべきだ。

 

 

HSBCが宣言、「サステナブル金融」の時代

 

20年10月には、自信の事業運営およびサプライチェーンのネット・ゼロ達成期限を30年に設定。さらに、広範な業種の顧客の排出量削減、低炭素経済への移行支援によりパリ協定の削減目標に適合させ、50年までに顧客自身のネット・ゼロを実現させるという意欲的な目標を発表した。顧客の低炭素経済への移行を支援するため、今後10年間で7500億米ドル~1兆米ドルという、大規模な融資および投資を行う。

 

同グループが多くの顧客を有しているアジア圏は、持続的な経済拡大などを背景に、温室効果ガスの排出量が高い。低炭素経済への移行を目指して、今後よりいっそうの取り組みが期待されている。アジア諸国が低炭素経済への移行を果たすことは、世界全体に与える影響も大きく、その意味でもHSBCは重要な役割を担うことになる。

 

同社は、世界最大級の貿易金融のプロバイダーであり、環境問題を重視した投資のリーダー的存在として知られている。また、持続可能性に配慮したサスティナブル・サプライチェーンファイナンスなどの金融サービスも提供している。

 

 

ニュースの核心 

北朝鮮党大会で露呈した超えがたい経済苦 

 

今回の党大会の真の目的は、北朝鮮の経済回復に道筋をつけること、そしてそのための朝鮮労働党の組織改編だった。経済制裁やコロナ禍、昨年発生した水害という三重苦に北朝鮮はあえいでいる。
金委員長は大会開幕の辞で「16年からの国家経済発展5カ年戦略の目標はすべての部門で大幅に未達」と、失敗を認めた。さらに「党中央委員会活動総括報告」の内容を見ると、「新たな5カ年計画期間に人民の食住衣問題の解決でなんとしても突破口を開く」などといった経済分野に関する言及が報告の半分を占めている。それに対して、軍事分野は10%以下だ。

 

しかも開会中に行われた「部門別協議会」では、「軍事分野の目標は暫定中止で、経済活動に注力すべき」とされ、経済活性化に集中して議論がなされたという。
とくに北朝鮮内の企業活動の再開や活性化が課題とされ、他国では税金に当たる政府への上納金の負担軽減が決定されたようだ。

 

金委員長は党の組織改編を行い、今大会で「党委員長」から「総書記」と肩書を変えた。同時に党員の世代交代を進め、スリム化も行った。故・金日成(キムイルソン)主席、金正日(キムジョンイル)総書記も使った歴史的な肩書で求心力を高め、政策の効率的な実行を図るつもりなのだろう。
 だが、経済活性化を図りたいのなら、核開発をやめなければ経済制裁は解除されない。さらなる発展には外国からの投資は必須だ。「自力更生」「一心団結」という大会のスローガンではおぼつかない。

 

 

ニュース最前線 

01 岡藤CEOの存在感示した 伊藤忠「2つのトップ人事」

 

伊藤忠では繊維や食料といった生活消費関連事業がいわば花形で、化学畑は目立つ存在ではない。
だが、エネルギー・化学品カンパニーは蓄電池や再生可能資源由来のバイオマスプラスチック事業に参入するなど、伊藤忠が重視する環境配慮型ビジネスを手がけている。

 

現在の伊藤忠は各部門がバランスよく稼ぐことが特徴だ。資源事業への依存度も低く、非資源事業が純利益の約8割を占める。

 

強く必要性を唱えているのがビジネスモデルの転換だ。顧客ニーズが多様化する現在、商社が従来の強みとしてきた縦割り組織では対応し切れないケースが多く、各商社の課題となっている。伊藤忠も今後は顧客ニーズを基に新たなビジネスをつくる「マーケットイン」型への組織転換を目指す。

 

全国で1日約1500万人が来店するファミマの顧客購買データの活用など、ファミマの強みを伊藤忠が営む事業全体の成長に結びつけることが期待される。
伊藤忠の今後の成長エンジンと期待されるファミマだが、多くの課題も抱えている。

その1つが「21年問題」だ。ファミマとユニーグループ・ホールディングスとの16年の経営統合に伴い、サークルKサンクスの約5000店舗がファミマにブランド転換した。この転換組の加盟店契約の更新が、21年から始まるため、加盟店をいかにしてつなぎ止めるかが問われている。

また、弁当などの商品開発力はコンビニ王者のセブン−イレブンに見劣りする。

 

マーケットインを重視する次世代の伊藤忠にとって、ファミマの事業強化・活用はグループのさらなる成長へのカギを握りそうだ。

 

 

02 NHKが総務省に「回答」 それでも続く値下げ圧力 

 

NHKはネット常時同時配信の認可を求めた際、高市早苗・前総務相から、三位一体の改革(業務・ガバナンス・受信料)を求められていた。新年度を目前に控えて、これがNHKの宿題になっていた。
今回の経営計画において、業務面では現在3チャンネルある衛星放送を23年度中に2チャンネルに削減し、将来的には1チャンネルへの移行も視野に入れる。現状、3波(AM2波・FM)を持つラジオは2波(AM・FM)への削減を検討する。
ガバナンス面では、業務が重複し肥大化していると批判されていた関連団体を縮小する。さらに中間持ち株会社制度を導入して子会社の経営に対するグリップを強め、ガバナンス強化を図る。

三位一体改革の中で最も注目度が高かった受信料については、値下げを明示した。

 

NHKは今回、23年度に値下げを行うとしている。詳細は未定だが、値下げの原資は700億円規模で、受信料を支払っている世帯が約4000万であるため、1世帯当たり年間1750円の引き下げとなる。だが、NHKにとって「23年度の値下げ」で終わりではない。今後は、受信料の継続的な引き下げを求められそうだ。

 

新たな制度では、一定額を超える繰越剰余金を、受信料の引き下げに充当することを義務づける。事業収支の黒字が続いてNHKの繰越剰余金が積み上がれば、それに応じて受信料の引き下げが継続されることになる。ただし、すぐに実現するという保証はない。NHKが今回示した21年度予算は、20年10月に実施された受信料の値下げが通年化することや新型コロナ影響による収入減少などで、事業収支が230億円の赤字(20年度の中間期の事業収支は449億円の黒字)になるとの見通しを出している。仮にこうした状況が続けば、繰越剰余金が積み上がらないため、23年度の値下げ以降は、受信料の引き下げが行われないという可能性もある。

 

そのため、21年度に悪化するとしている収支が、どこまで改善されていくのかがポイントになる。23年度中に値下げが行われると、翌年度の事業収入も低下する。値下げの実現にはコスト削減を継続して収支の黒字を維持することが必要になる。NHKには、向こう3年の経営計画におけるコスト削減にとどまらず、今後も継続的に事業運営のムダを見直すことが求められる。総務省の“監視の目”が緩むことはないだろう。

 

 

03 寒波とLNG不足が直撃 長期化する電力の逼迫 

 

大寒波の襲来をきっかけに、全国規模で電力の需給が逼迫している。

電力会社や電気事業連合会は家庭や企業に節電を呼びかけるとともに、休止していた老朽火力発電所の稼働や、電力会社のエリアを超えた広域的な電力融通を続けている。だが、いつ電力不足に陥ってもおかしくない。
 電力需給が逼迫している要因は、大寒波や悪天候による太陽光発電の出力低下といった供給側の要因に加え、暖房用などの電力需要が急増する需要側の要因もある。

 

電力供給は綱渡りが続いている。その要因として、LNG(液化天然ガス)の調達難が指摘されている。LNG火力発電は日本全体の発電電力量の約4割を占め、電力需要の増減にスピーディーに対応できる強みがある。ただ、その性質上、長期にわたる備蓄ができないうえ、調達そのものが難しくなっている。燃料の確保が難しくなっていることにより、LNG火力の多くが出力を抑制しての稼働を余儀なくされている。

供給面でのさらなる制約となっているのが、LNG火力と並ぶ主力電源である石炭火力発電所でのトラブル多発だ。

 

卸電力市場での価格高騰はユーザーにも影響を与えることになりそうだ。電力やガスの契約切り替え支援サービスを展開するENECHANGEには、1月に入り、卸電力市場の価格に連動する料金プランに加入する電力ユーザーから、契約内容や解約に関する相談が相次いでいる。

 需給逼迫を解消する見通しが立たない中、影響はさまざまな方面に及びつつある。

 

 

フォーカス政治 

再燃し始めた通商交渉への「不安」 

 

「日本はすべて役人任せだ」
縦割りの厳しい体質をそのままにして官僚に丸投げした、リーダーシップの欠如。
政治が動かないから、役所は省益優先の姿勢を崩さず調整はいつも難航した。

 

3チャイナ、2ジャパン──。
「ほかの国は二人来ても、一人しか発言しない。あるいは一人しか来ていない。日本は二人来て、二人発言するわけですから、これは大変だった」

3チャイナというのは、中国、香港、台湾のこと。2ジャパンは、外務省と通産省が国際交渉でつねに張り合っていて、閣僚会合があると大臣が2人出席することが多いという意味だった。

 

「大臣が座る席を2つ欲しい、3つよこせ、というのは外務省が議長国と交渉するが、なぜそれだけ必要なのかを説明しなければならず消耗した。こんな要求は『大臣レベルで仕切り役がいない日本』と受け取られる」
そんな態勢が一変したのは最近のことだ。
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を決断した際、当時の安倍晋三首相は初めて「担当閣僚」を決め、経済再生担当相の甘利明氏を指名した。各省の利害が交錯する通商協議を1人の閣僚に任せるのは前代未聞。省益を守ることに関心を集中させていた霞が関には緊張が走ったが、意思決定はスムーズだった。

一元化は「1強」と呼ばれた力のある政権がTPPを重視したからこそ可能だったのだろう。

 

2021年、米バイデン政権の誕生で、日本は延期されていた日米貿易協定協議の「後半戦」などを始めねばならない。通商交渉で政治による「統一された国家意思」を前面に出せるようになったのは「1強」と呼ばれた力の強い政権が存在したからであるとすれば、首相官邸の求心力が低下している現在、各省調整ができず「2ジャパン」と皮肉られた時代に戻るおそれはないのだろうか。
通商政策に関与する政府当局者によると、霞が関には「TPPは内閣府、日米協議は外務省、RCEP(日中韓など15カ国による東アジア地域包括的経済連携)は経産省」という奇妙な縄張りが新たにできつつあるのだという。

 

グローバル・アイ 

コロナ禍前から続く構造問題 バイデン政権に希望はあるか

 

米国の政権交代と新型コロナワクチンの接種拡大を見込んで、景気は2021年に回復するとの楽観論が強まっている。だが、これはお門違いというものだ。コロナ禍が想定を上回って長引くおそれがあるからだけではない。真の問題は、コロナ禍前から米経済が壊れていることにある。
確かにコロナ禍前の失業率は3.6%と歴史的な水準に下がっていたし、株価も高値を更新し続けていた。しかし、その一方では、高い収入と出世につながる「まともな雇用」が激しく枯渇するようになっていた。

 

もちろん、全体として見れば新たな雇用は生み出されてきたが、その中心は所得額では底辺の仕事だった。つまり、まともな雇用が低賃金の雇用にどんどん置き換えられていったのである。

 

株価にも同じことがいえる。好調な株価は、必ずしも経済が健全であることを意味しない。大企業が強大な力を振りかざし、人々を犠牲にしながら荒稼ぎをしていても株価は上昇する場合がある。米国の歴代政権がそうしてきたように、法人税をさらに引き下げ、資本家をもっと優遇すれば、株価はいっそう上がるかもしれない。経済が今年回復したとしても、このような忌まわしいトレンドは変わらない。少なくとも、これは放置しておいて勝手に改善する問題ではないのだ。大卒未満の人々に稼ぎのよい雇用が戻る見込みはない。それどころか、大企業の立場はコロナ禍でさらに強まった。だからこそ、沈み込む実体経済をよそに、ウォール街はあれほどの活況を呈しているのだ。
歴史的にいって、好況は構造問題を覆い隠し、深刻化させることが多い。そのような過ちを巨大なスケールで繰り返さないためには、以前から経済と社会をむしばんできた構造問題と正面から向き合わなければならない。


中には連邦最低賃金の大幅引き上げのように単純な方法で対処できる問題もあり、そうしたものはすでにバイデン新政権の政策リストに載っている。だが、もっと本質的な変革が最低でも2つ必要だ。第1に、人間の仕事をロボットに置き換える技術開発に力を傾ける流れは止めなくてはならない。自動化が進む経済にはまともな雇用は生まれないし、富が幅広く行き渡ることもない。

第2に、経済・社会生活においいて、ますます幅を利かせるようになった大企業のイデオロギー的影響も何とかする必要がある。ごく一握りの企業が技術革新と経済政策のあり方を牛耳っているようでは、まともな雇用の創出や格差の縮小など到底望めない。

 

バイデン政権は構造問題と向き合う意欲を見せてはいる。だが、その布陣はどうか。米国の経済を一段と利己的なものにした企業の出身者がブレーンに名を連ねている時点で、大変革の望みは薄いといわなければなるまい。

 

 

グローバル・アイ INSIDE USA 

MARsに見る人民の怒り トランプ現象は終わらない

 

ミドル・アメリカン・ラディカルズ、頭文字を取ってMARsという。あえて訳せば「米国中産階級過激派」だ。トランプ政権誕生前後に論議された。本をただせば、1970年代、米国政治が激しく流動化した時期に、その震源とみられた「サイレントマジョリティー(物言わぬ多数派)」を指して一部で使われ出した言葉だ。
トランプ共和党政権からバイデン民主党政権へと移った今、改めてMARsを考えてみたい。政権交代を前に起きたトランプ支持者らによる米連邦議会議事堂襲撃事件は、米国で吹き荒れるポピュリズムを強く印象づけたからだ。

 

ポピュリズム1.中央に対する地方の反感、2.エリートに対する民衆の反抗や懐疑、3.外来の人や物を排斥する土着主義(ネイティビズム)──を原動力に改革を求めていく運動だ。そこには既存の政治体制に反発する革新性とともに、よそ者を排除する反動的な面がある。つまり、右とも左ともいえない。

 

彼らは人工妊娠中絶など社会問題では保守的立場を取る一方で、社会保障医療保険ではリベラル(進歩的)な政策を求め、単純に左右に分類できない存在であるとわかった。

彼らは混迷する経済や社会の価値観に翻弄され、生活を守ってほしいと願う人々だ。エリートに支配された政治に自分たちの声は届かないと怒り、政治から疎外されているとも感じていた。

 

彼らにとって連邦議会は怒りを向ける対象でしかない。たとえトランプが失脚しても、また似たような扇動者に操られ、連邦議会でもホワイトハウスでも襲撃するかもしれない。彼らは左側にもいる。

 

バイデン政権は一応、上下両院を支配し、長い政治経験を持つ大統領が、トランプ後に旧来の主流派が戻ってくる共和党と妥協を図って政権運営をするだろうという楽観的観測もある。ただ、すさまじい格差問題などに根本的改革がない限り、MARsは怒りを抱えたまま潜在し続ける。右ではトランプないし後継者を、左ではサンダース派勢力を介し、彼らが米国政治を揺さぶる構図は消えない。

 

 

マネー潮流 

電力危機から得られた教訓 

 

年明けの電力市場は未曽有の混乱に陥った。

電力という商品は貯蔵が利かない特性から、需要量に合わせて発電量を時々刻々調整する必要がある。需要が急増し供給が不足する場合には需要が抑制されるまで価格が上がり続け、最悪の場合には停電が起きる。

 

今回の事態にはいくつかの要因がある。まずは年末から日本列島を含む北東アジア全域を襲った寒波である。コロナ禍で産業需要は抑制されたが家庭の暖房需要は増加した。加えて再エネによる供給が夏場は機能するが、冬場は不安定になる。そんなときには化石燃料で発電するのだが、低炭素時代で環境負荷の低い天然ガスへの依存度が近年増えており、島国の日本は海外から液化天然ガス(LNG)を輸入する必要がある。


今回の危機にはこのLNGが大きく関わっている。寒波が北東アジア地域を直撃したことから中国や韓国でも発電需要が急増した。

わが国は昨年末まで卸電力価格が低迷したため発電業者はLNG調達を抑制し手持ち在庫も絞っていた。そこに寒波が襲来し、急きょ燃料調達に動いたものの、他国も買い出動をしたことに加えて、輸出国や海上航路のボトルネックでLNG市場は極端な供給不足となった。そこで長い冬を乗り切るために発電出力を低下させて燃料在庫を温存したため、予備率が急減し綱渡りの発電状況となっている。

 

ここには電力自由化に伴う構造的な問題も内在する。2016年の全面自由化後に新電力と呼ばれる小売電気事業者が数多く市場に参入した。彼らは顧客のニーズに合わせて魅力的な条件で売電するが、電力調達はJEPXの直物市場に依存してきた。

長期固定価格で売電し直物の変動相場で日々調達する行為は、金融機関が顧客に資金を長期で融資し、超短期(翌日物)で調達する行為と本質は同じである。リスク管理が発達した金融業界では、価格(金利上昇)リスク流動性(資金調達不能)リスクは根幹のリスクとして認識され日々管理される。だが、この概念が希薄な電力業界ではリスクの過小評価が常態化したと考えられる。金融的観点からは、今回の危機は電力契約の長短ミスマッチリスクが顕在化したケースと捉えることができる。

 

停電のない低炭素電化社会の実現には、再エネを縁の下で支えるLNGが不可欠だ。

来るべきクリーン電化社会に向けて、電力業界のリスク管理体制の強化LNGの流動性を高める方策が望まれる。50年に向けてマネーも石油からガス、そして電力へと移っていくであろう。

 

 

【第1特集 1億人の「職業地図」】 消える仕事、残る仕事 1億人の「職業地図」

 

CoverStory 

パンデミック、AI、脱炭素…激変する雇用環境 2030年に消える仕事・残る仕事

 

2030年、仕事を激変させる「7つのキーワード」

パンデミック

DX

AI・ロボット

脱炭素

ジョブ型雇用

ギグワーク

遊び

 

 

20年から大企業が相次ぎ導入したのが「ジョブ型雇用」である。職務定義書(ジョブスクリプション)を基に、職務(ジョブ)の達成度で社員を評価するもので、日立製作所三菱ケミカル資生堂等が採用。そこにあるのは旧来の硬直的組織では革新的イノベーションは生まれないとの危機感だ。

 

組織に縛られない働き方もある。ネット経由で単発の仕事を「ギグワーク」として請け負う人が増え、仲介サイトへの登録者数は750万人を超える。プログラミングやデザイン、翻訳のような机上の仕事から、フードデリバリーのような現場の仕事まで、自分の時間を融通してできるようになった。

 

 

PART1 

「消える仕事」 18業種の現在と未来 コロナ後も構造変化についていけるか

 

「コロナ禍が終わっても時代錯誤のビジネスモデルが変わらなければ顧客離れが進むだけ」
銀行はその最たるものだ。超低金利で利ザヤを稼げず、都心の支店やATMは重荷である。みずほ銀行は1月18日から紙の通帳発行で1100円を徴収、儲からない小口や非デジタルの客層を選別し始めている。就活でも銀行員は一転、不人気業種となった。

 

何が引き金になるにせよ、変化が激しくなればなるほど、職業ごとの明暗はより顕在化するだろう。個人にとっても、選択を間違えば、大きな後悔となりかねない。

 

 

01 マイナス金利、再編圧力、AIで支店は激減 銀行員

 

業界 TOPIC
地銀合併特例法
20年11月に施行された地方銀行に合併や経営統合等の再編を促す法律。同一県内で合併しても独占禁止法適用除外となる。

 

2030年の銀行員
長期の超金融緩和で利ザヤが悪化、大幅リストラを迫られているのが銀行だ。駅前の支店はビルの2階にある空中店舗になり、窓口やATMはスマホのネット銀行に代替される。融資でも、取引先の膨大なデータをAIが瞬時に読み込んで信用調査をこなし、現在の主要業務は置き換えられるかもしれない。出世レースでは同期で支店長になれればよく、30歳代で多くの行員が子会社へ転籍し、本体に残るのは一握り。


業界最新事情
目下の焦点は収益環境の厳しい地方銀行だ。経営改革を後押しし競争力を向上させるために、合併特例法の施行、日本銀行による当座預金金利上乗せのほか、政府によるシステム統合費用への補助金等も俎上に載せられている。「地銀連合」構想で10行程度との資本提携を掲げる、SBIホールディングスが台風の目である。

 

 

13 ディーラー・トレーダー

 

ディーラー・トレーダーになるには
銀行や証券、生保等に就職。

ディーラーは自社資金を投資し、トレーダーは顧客の資金を仲介する。

 

業界TOPIC

IFA
独立系金融アドバイザー。証券会社で多数の“太客”を抱える社員が独立。富裕層の資産形成をサポートする。

 

2030年のディーラー・トレーダー
コンピューターで1秒に数千回売買する高頻度取引(HFT)は、今や株式市場や為替市場の相当部分を占める。ディーラーのマーケットメイキング機能は年々低下し、AIが人間並みに売買の“機微”も学習すれば、この流れに拍車をかけるだろう。

業界最新事情
 コロナ禍で巣ごもり投資を始めた個人のデイトレーダーが拡大。扱う商品もより低価格でできるFXや仮想通貨の比重が増している。

 

 

PART2 

「残る仕事」 18業種の現在と未来 必要なのは高度なスキルか創造力か

 

コロナ禍前から指摘されてきたのが2010年代から深層学習(ディープラーニング)で急激に進化したAIだ。

 

長期的に有望なのは大きく2つ。

1つはAIやロボット、IoT等を自ら利用する仕事、もう1つは人間にしかできない仕事だ。

 

「現在は“遊んでいた人”の時代。スティーブ・ジョブズイーロン・マスクも子どものように遊びにのめり込んでいた」。好きな分野で頂点に立ち、プロとしてマネタイズできれば、これ以上の幸せはない。
 時代が変われば職業のあり方も変わる。既成概念に縛られない仕事が将来伸びる可能性もある。

 

 

17 経営コンサルタント

 

業界TOPIC
マッキンゼー・マフィア
業界の雄である同社の出身者。大前研一氏や勝間和代氏、南場智子・DeNA会長ら、顔ぶれは多彩だ。

 

2030年の経営コンサルタント
グローバルなM&Aから地方中小企業の事業承継まで守備範囲は広い。働き方改革企業統治等、制度や慣行をめぐる激変は今後も必至だ。“コンサルバブル”も指摘されるが、企業が第三者の声に頼る傾向は不変で、コンサルタントへの引き合いは大。

業界最新事情
目下のニーズはDXだ。テレワークやリモート会議の整備等、デジタル化に遅れた企業は数多い。近年では戦略系のマッキンゼーボストンコンサルティンググループに対し、IT関係に強いアクセンチュアが勢力を拡大中で追い風が吹いている。

 

 

18 スタートアップ起業家

 

業界TOPIC
SPAC
特別買収目的会社。事業のない“箱”のような企業で上場後に買収先を探す。ソフトバンクG系が米国で上場。

 

2030年のスタートアップ起業家
設立から上場までの期間は現在、平均17年間、最短2〜3年だが、さらに短期化が進む。全体では脱炭素が注目されそうだ。


業界最新事情
在宅勤務や遠隔診療を後押しするDX系のスタートアップに脚光。

 

 

PART3 

会社員が知りたい9職種の「市場価値」 自分の年収と待遇は見合うか

 

ジョブ型雇用とは職務を限定して社員が会社と契約を結ぶ雇用制度を指す。本人の同意なしに関係ない職務に就くことはなく、賃金や評価も職務の成果で決まる。現在の日本で主流の「メンバーシップ型雇用」は、終身雇用と年功序列が前提となっており、ジョブ型雇用とは対照的になる。

 

だが一歩外に出れば潰しが利かないのが会社員。いつ自分が戦力外になるかわからない。

 

1つの分野を極めるには1万時間の練習が必要という。会社員に置き換えると、フルタイムを8時間として年250日=2000時間働けば、5年間で1万時間に到達する計算である。
ただし時間をかけたスキルもいつ陳腐化するかわからない。リスクを避けるには自分の引き出しを増やし、複数のジャンルで秀でるのが理想的。

 

会社員ならスキルばかりでなく、キャリア=現場での経験も武器だ。

 

重要なのはどんな環境にも対応できる柔軟性と自分を客観視する冷静さ。自分自身の“価値”がいくらか知っておいて損はない。

 

 

02 財務・経理

 

TOPIC
IFRS
国際会計基準。上場企業では229社が採用し、トヨタ自動車も今期から移行。のれん代やリース会計等、日本基準と違う点も多い。

 

2030年の財務・経理
 バックオフィス的で地味な印象が強い。だが近年では、エクイティーファイナンスによる資金調達配当や自社株買い等で、企業の経営判断にも関わる戦略的な部門として位置づけられている。ディスクロージャーへの対応やリスク情報のモニタリングも財務・経理の新たな役割だ。CFO(最高財務責任者)は今やキーパーソンの役員となった。

 

 

就活人気企業の10年前・5年前・今/職業別に見た自殺者の傾向

 

就活生はどうしてもその時点で華やかで将来性がありそうな企業・業界を選びがち。だが、5年後や10年後も花形、とは限らない。

 

今から10年前に入社した2011年卒生の就職ブランドランキングの1位はフジテレビジョンだ。まだテレビ業界が輝いていた時代だが、その後、スマホ等の普及による若年層のテレビ離れもあって、成長が鈍化。

 

5年前の16年卒で1位だった三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)等のメガバンクもそう。当時、各行が1000人以上採用していたこともあり、人気の筆頭となっていた。しかし、マイナス金利による収益の悪化やフィンテック導入に伴う窓口業務の縮小で、採用を抑制。今や斜陽産業の色が濃い。銀行に次いで支持されたANA等のエアラインも、コロナ禍で業績が急悪化し、目下、正念場を迎えている。

 

現在、1番人気は伊藤忠商事等の総合商社だが、将来ずっと順風満帆という保証はない。

 

 

リーダーのためのDX(デジタルトランスフォーメーション)超入門 

第13回 米展示会「CES」でわかる世界のDX強者

 

Point
1 CESはもはや家電見本市ではなく、業界横断的なテクノロジーの祭典だ
2 各社の出展内容で見るべきは、経営トップが世界観を提示できているか
3 DXを進めるためにも、魅力的な発表で有望な企業との協業機会をつかもう

 

1月11日から4日間にわたり、世界最大のテクノロジー展示会「CES (コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」が開催された。

 

今やテクノロジーと無縁な業界はない。あらゆる企業の幹部にとって、CESの動向は注視すべきものになっている。
開催形式に関係なく重要なのは、各社の製品だけでなく、年初というタイミングで、どの企業がどの分野に注力しているかという流れを把握することだ。なぜ今この製品を展示するのか昨年の競合による出展の後追いなのか。展示の仕方には戦略の差がにじみ出る。
さらに細かく見るべきなのは、テクノロジーで将来がこう変わるという世界観を、各社の経営陣が自分の言葉で提示しているかどうかだ。

 

ビジョンや世界観を示し、構想を紹介する動画だけでなく、そこにフィットする製品はこれだ、ということを見せるのが重要だ。
今年は、どの企業が出展しなかったかという視点も大事だ。

 

今年の出展者の中でも目立ったのがGMだ。

CESではここ数年、ベンチャー企業の開発したEVが注目を集めたが、GMはそこから学び、自社の戦略にうまく取り込んだ。何といっても経営トップ自らが動向を理解し、行動に移せている。

 

サムスン電子LGエレクトロニクスなどの韓国企業は小さな国内市場を飛び出し、GAFAなどの米国の巨大テック企業と競うため、コロナ禍でも海外へ情報発信する重要性をよく理解している。

 

CESは商談する場でもあり、出展企業にとってはソフトウェア会社やベンチャー企業とオープンイノベーションを進めるための場所だ。出展効果を感じないのであれば、魅力的な世界観を伝えきれていないということだろう。

 

 

 

 

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