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Article Memories vol.6: 週刊東洋経済  12/26-1/2合併号:2021大予測

Theme: 金融・経済・政治

Time: 約15分

Difficulty: 

 

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ニュースの核心 

炭素中立にそぐわない輸入バイオマスに規制を (政治)

 

菅義偉首相の所信表明により、日本でも遅ればせながら、「2050年のカーボンニュートラル炭素中立」が国の目標となった。生産や消費による二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を限りなくゼロに近づけるとともに、それでも排出されるものを森林による吸収などで相殺する。

 

再生可能エネルギー固定価格買い取り制度FITFeed-in Tariff)において、バイオマス発電は木材の成育時にCO2を吸収するため、カーボンニュートラルと見なされて推進されている。しかし、その大半を占める輸入バイオマスビジネスの実態に批判が強まっている。環境団体はバイオマス燃料に関し、日本において輸入が急増している事実や、東南アジアや北米において生産過程で希少な動植物が生息する天然林の伐採が急速に進んでいる実態を指摘。トラックや船舶による長距離輸送で大量のCO2を排出することもあり、カーボンニュートラルはまやかしであると批判している。

 

・様相を一変させたのが12年にスタートしたFITだった。輸入材を燃料に発電した電力についても高い買い取り価格を保証したことで、木質ペレットやパーム油などの海外産バイオマス燃料の輸入に道を開いた。FIT法では、環境負荷の低減やわが国の国際競争力の強化・産業の振興、地域の活性化がうたわれている。だが、「輸入バイオマスでは地域の活性化につながらず、エネルギー自給にもならない」と指摘される。FITに基づくバイオマス発電の認定容量のうち約9割を「一般木材」のカテゴリーが占めており、「そのほとんどが輸入バイオマス」とみられている。

 

経済産業省は持続可能性に関する認証の取得を義務づけることで野放図な発電用パーム油の輸入を制限しようとしているが、規制強化に反対する生産国との間で綱引きが続いている。
 輸入バイオマスは石炭火力発電の延命手段になるおそれもある。経産省はCO2排出量の多い旧式の石炭火力発電所の休廃止を打ち出したが、木質ペレットやパームヤシ殻などを混ぜれば計算上は熱効率が上がり、見かけ上CO2排出量を減らすことができるからだ。
 まっとうなカーボンニュートラルを推進するためにも早急に実態を把握し、まやかしの方策に歯止めをかける必要がある。

 

フォーカス政治 

菅首相が狙う本格政権に4つの壁 (政治)

 

菅首相は就任直後、内閣支持率調査で鳩山由紀夫氏、小泉純一郎氏、細川護煕氏に次ぐ歴代4位の高率を記録したのも、安倍内閣末期の低迷状況の反動や、自民党田中角栄氏以来の「たたき上げ首相」に対する好感のほかに、4つの足かせの克服に挑む新首相への期待も理由の1つとみられた。
 その後、2~3カ月で支持率は急落した。とはいえ、「並みの内閣」の水準で、低迷といえるほどではないが、菅流政治の中身がしだいに明らかになってきたのも支持率低下の原因の1つであった。
 独自のミクロ経済政策への挑戦姿勢と同時に、目指す政治の全体像や達成目標、あるいは立国の基本路線やマクロ経済政策などの欠如安全第一の不明確答弁や逃げの説明の多用、他方で「人事権を武器とする強権政治」という官房長官時代以来の菅流手法などへの批判や不満が見え隠れし始めた。
 菅首相の持ち味は「仕事力」と「生命力」といわれる。仕事力は課題発見力、問題解決力、そのための組織操縦力や人脈構築力、生命力の要素は、権力闘争に負けずに生き抜く力、政治の潮流や空気をかぎ取る嗅覚、ぶれない判断、約束を守り、裏切らないという生き方、と政界では評されている。

世襲・無派閥で首相に到達したパワーは筋金入りだが、トップとしての政権運営力は未知数である。今後の浮沈は民意の支持の有無に懸かっている。民意との結託は、改革実行力と同時に、菅流政治のグランドデザインとそのシナリオを明示して共感を獲得できるかどうかが勝負の分かれ目となる。

 

・21年の政治はコロナ情勢五輪問題次期衆院選次期総裁選の4点が軸となるのは間違いない。

 

実際の「政治決戦の年」は、21年ではなく、次期参院選が訪れる22年とみる。野党が次の参院選で20以上、議席を増やせば、与党の過半数割れ、つまり「与野党のねじれ」が起こる。そうなれば、与党だけでは国会での法案の成立が困難になり、政権と与党は一気に弱体化する。すぐに政権交代とはならないが、「政権交代可能な政党政治」が復活する。不安定だが、緊張感を伴う政治状況となるのは疑いない。野党は合流・新党結成に踏み出したものの、中途半端な政党再編に終わり、与党撃破態勢が整っていないのは明白である。22年参院選を「政治決戦」と見据えて、前哨戦の21年衆院選の後、本格再編に挑戦する。そのシナリオを視野に入れ、幅広く民意を吸収しうる政権交代可能な野党勢力の再結集の道を模索すべきだ。

 

・21年に4つの壁の克服に成功すれば、次の総裁任期満了は24年9月だが、その前に21年後半から22年にかけて、言い訳なしの「裸の菅政治」の当否が問われ、それに対する審判が22年参院選で下る。大きな前哨戦の年となる21年が間もなく幕開けとなる。

 

グローバル・アイ 

やみくもな公共投資は長期的に経済の重しとなる (経済)

 

・深刻な不況の後には生産性向上につながるインフラ投資が求められるという点で、マクロ経済学者の見解は大方一致している。ところが先進国のインフラ投資は、増減を繰り返しつつも過去数十年にわたり下降線をたどっている。インフラ投資抑制の流れは、今まさに消えようとしているのかもしれない。米国ではバイデン次期大統領が持続可能でグリーンなインフラ投資を重点公約に掲げている。欧州連合(EU)が取りまとめた総額1.8兆ユーロ(約226兆円)の景気刺激策でもインフラ投資は重要な柱だ。さらに英政府は1000億ポンド(約13.7兆円)の野心的なインフラ投資計画を打ち出し、新たに国家インフラ銀行を設立するとした。
 既存インフラが劣化している国は多く、歴史的な低金利で資金調達できる環境にあることを考えれば、こうした公共投資計画には期待が持てる。08年の金融危機後にも、マクロ経済学者の間では同様のインフラ投資が急務だとする意見が大勢を占めた。ただ、当時の経験が示すように、インフラに投資すれば長期的な経済成長率を大きく高められるとは限らない。

 

財政の専門家の間では、インフラ投資においては既存設備の維持・改修が最も投資効果は高いとの見立てが主流になっている。先進国のインフラ投資で最大の障壁となるのは、多分に各種利害の調整だ。新たな公共投資計画を進めるには通常、厄介な地役権問題に加えて、環境に悪影響を与える懸念や、計画に反対する住民の抵抗を乗り越える必要がある。

 

超低金利環境ならどんなインフラ投資でもうまくいくわけではない。詰めの甘いインフラ計画を実行に移せば、環境を壊したり、維持管理費がべらぼうにかさんだりするなど、長期的なデメリットも出てくる。

 現下の低金利がインフラ投資を拡大する好機なのは間違いない。ただ、現実的な費用見積もりを行ったうえで適切な計画を選び出すには、極めて優れた専門家組織が欠かせない。その意味で、英国が国家インフラ銀行を設立するのは理にかなっている。このようなプロの目利きがいなければ、にわかに盛り上がる公共投資熱も期待外れに終わるだろう。

 

グローバル・アイ マネー潮流 

クレジット市場の安定に一抹の不安 (金融)

 

クレジット市場はこれまで実に堅調に推移してきた。国債などに対する上乗せスプレッドが抑制される状況にあり、安定してきたということである。

 

第1に、金融政策と財政政策が盤石に配備されてきたこと。両政策に支えられて、金融資産市場が安定してきたわけだが、とりわけ、社債購入プログラムによるセーフティーネット社債市場そのものを下支えしてきたこと、がある。
 第2に、発行体から見て金利先高感がない状況の中、債券発行ニーズが抑制されていること。金融緩和で資金が供給されている割には発行量が限定的となっているため、社債市場では需給が改善している。
 第3に、ファンダメンタルズの悪化に歯止めがかかっていること。世界中で施行された財政政策によりデフォルト率の上昇は抑制され、また、各社がレバレッジを抑制する行動に出た結果、ファンダメンタルズは想定対比で悪くならなかったと考えられる。
 しかし、表面上はセーフティーネットが存続しているとの解釈が続く一方で、社債市場へのセーフティーネットが徐々に弱まっていることに注目している。

 

米国では、新型コロナウイルス対策として発動したファシリティーのうち社債の購入を含む4本(ほかに中小企業向け融資、資産担保証券への資金供給、州・地方債の購入)の打ち切りが決定された。バイデン政権へのトラップの1つにも見えるが、枠組みを十分に活用してきたわけでもないので、残った資金を賃金プログラムに充てたほうがよいとする意見自体は真っ当にも思える。しかし、クレジット市場に必要なのは“最後の買い手”の存在である。それがなくなれば、潰れるべき企業は潰れていくという状況になるわけであり、それが認識されればクレジットスプレッドは徐々にワイド化してもおかしくない。

 

ECB:European Central Bank欧州中央銀行)は金融緩和策の長期化を発表。PEPP:Pandemic Emergency Purchase Programmeパンデミック緊急購入プログラム)とTLTRO:

Targeted Longer-Term Refinancing Operations長期資金供給オペ)の実施を拡大かつ延長した。ただし、社債購入プログラムがどうなるかについては触れられていない。つまり、欧米ともに社債購入意思は、従前に比較して脆弱に見えることになった。

 デフォルトリスクの増大を受け止めるだけののりしろが今の金融市場にあるかどうか。極めて心もとない。

 

 

 

産業・業界 対コロナ 2年目の闘い

065 銀行 

融資再拡大、地銀再編へ (金融)

 

・銀行は積極的な融資によって資金繰りを支援。その結果、当初危惧されていたような倒産の連鎖は起こっていない。

 

コロナの影響の大きい業種に対しては、運転資金だけでなく資本性資金での対応も求められている。大企業の場合、資本を増強することで、格付けを上げ、社債を有利に発行しやすくなる。中小企業でも資本増強により、複数金融機関からの融資を受けやすくなる。地銀も含め、多くの銀行が返済の優先度が低く、資本に近い性質を持つ「劣後ローン」を拡充中だ。

 

・中小企業向けの融資の中心となっていた無利子・無担保の制度融資には政府の補助がついている。企業から見れば無利子でも、銀行は政府から利子の補給を受けているのだ。地域によっては「普段の融資が金利1%程度であるのに対し、制度融資は2%近い金利がとれる」という銀行もある。加えて、信用保証協会の保証もついている。万が一返済が滞った場合にも、一定期間、信用保証協会が肩代わりする。

 

・自らリスクを取る融資が拡大すれば、そのリスクに応じた引き当てが必要になる。逆に企業が倒産すれば、その企業に対する過去の融資が焦げ付くことになる。コロナ以降拡大傾向にあった与信費用は、さらに拡大するはずだ。銀行員が意識しているのは「2023年の崖」だ。制度融資の無利子期間は3年間となっている。3年後には返済が始まるが、返済が滞り、倒産に向かう企業が増えるおそれが出てくる。ここから数年間は、与信費用が高止まりし、銀行の業績は一段と下押しされるということだ。

 

・11月10日には、日銀が「地域金融強化のための特別当座預金制度」を発表した。地銀や信金は、経費削減や経営統合に取り組むことで、銀行が日銀に預けている当座預金で、年0.1%の金利を受けられるようになる。マイナス金利政策導入以降、銀行は日銀に預ければ金利を取られてきた。今でもそうだが、この制度を利用すれば、一転して金利をもらえるようになる。「チャレンジしない手はない。これを得るために統合までするかは微妙だが、考えるきっかけにはなる」という声も聞かれる。

 

金融庁が地銀や信金経営統合や合併に対し、システム統合コストなどの一部を補助する交付金制度を創設する方針が明らかになった。地銀が統合する際の最大の障壁となっているのは、統合にかかるコスト。その総額は100億円以上に上ることが多い。その一部を負担することで、再編を促す。

 

独占禁止法の特例法も施行されている。今回の特例法によって、一定の条件を満たすことで同一県内の地銀同士の統合が容易になった。再編に向けた障壁は確実に取り除かれてきている。おまけに、再編をすればプラス金利補助金がもらえるというわかりやすいメリットも提示されている。

 

066 証券 

証券界の“亀裂”は深まるばかり (金融)

 

・大規模な金融緩和やそれに伴う株価の上昇もあり、相場活況に沸く証券業界。だが、業界内部には“亀裂”を抱えている。

 

・業界最大手の野村ホールディングスは、コロナ禍の対面営業自粛を乗り越え、国内営業部門の収益が第2四半期以降改善。債券売買の活況もあってホールセール部門の収益が大幅に伸びた。上期の最終利益は2101億円だった。

 

・相場活況の追い風を受ける証券界だが、目下最大の亀裂は、同一グループ内の銀行と証券で顧客の情報を共有することを認めるかどうか。いわゆるファイアウォール規制の緩和や撤廃をめぐって発生している。野村証券など独立系の証券会社が資本市場を歪めるとして規制緩和に反対している。

 

東証の売買停止問題では、万一の事態により東証が停止してしまった場合、取引を再開するためのルールが整備されていなかった。東証側はシステムの再起動を打診したが、多くの証券会社が対応は難しいと回答したため、最終的には売買が終日停止することになった。

 

・取引の再開手順を定めるルール作りはこれから行われることになっている。が、システム投資が新たに必要になる可能性があり、証券会社の規模や態勢によっては対応が難しい。年明け以降の証券各社の意見集約は難航が予想される。

 背景には業態の著しい変化がある。証券会社といっても従来型の対面営業からネット専業、さらにはスマホ専業まで多様化が止まらない。亀裂は21年も簡単には埋まりそうもない。

 

077 商社 

伊藤忠三菱商事を抜く (経済)

 

・幅広い領域で事業を展開する総合商社にとって、新型コロナウイルス感染拡大の影響は避けられない。資源価格が大きく値を下げたことも重なって、各社とも減益は避けられなかった。

 

・20年後半から資源価格は回復傾向にあり、21年度業績は復調に向かいそうだ。

 

伊藤忠商事はかつては業界の「万年4位」だったが、ここ数年は2位にまで業績を伸ばしていた。

とくに生活消費関連事業に力を入れてきた。同社はすでに、時価総額では6月に初めて三菱商事を抜いて業界トップに立っていた。20年7月から8月にかけて約5800億円もの巨額を投じて、大手コンビニのファミリーマートTOB(株式公開買い付け)を実施。商品開発力の向上などで、王者セブンイレブンとの営業力の差を埋められるのか。また、中国など海外展開を迅速に行えるのか。山積する問題をどう解決していくのかが、問われることになる。

 

丸紅はコロナ禍で19年度に約4000億円もの減損を計上し、1974億円の最終赤字に沈んだ。

業績が上向いているとはいえ、時価総額ではトヨタグループの豊田通商に抜かれて「6番手」に後退している。逆転を図れるだけの好材料を株式市場に示せるか。21年には底力が試される。

 

・各商社はコロナ禍で資源事業のボラティリティー(変動率)の高さを改めて実感した。この経験をどう経営に生かしていくのか。21年はその具体策が問われることになりそうだ。

079 就職・採用 

一部学生のみ売り手市場「就活分断化」進む (経済)

 

DX人材などは、新卒や中途、国籍も関係なく採用難が続く。対象学生は、破格の年収が提示されるなど、企業を選べる立場だ。

 

・理系学生の83.2%が6月時点で内定を得ているが、文系学生は62.1%にとどまる。この差は、今後さらに広がるだろう。

 

・日本型雇用の象徴とされる「一括採用」から「通年採用」への移行が進んでいるが、一括採用をメインとするスタイルは当面変わらない。一般学生が通年採用を鵜呑みにして選考ピーク期(3~6月)を逃せば、厳しい結果が待っている。

 

・単純なオンライン化にとどまらず、自己PR動画をAIが評価するような新しい選考方法を導入する企業もある。対面だけで就活を終える学生がいる一方で、あらゆる選考方法に対応しなければならない学生も出てくる。

 横並びの就職活動を経て、社会人になる時代ではない。専攻分野や志望企業などにより、学生たちは分断化された異なる採用プロセスを経験することになる。