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Book Memories vol.7 : 伝説の7大投資家 リバモア・ソロス・ロジャース・フィッシャー・リンチ・バフェット・グレアム

Theme: 金融

Time: 約30分

Difficulty: 易

 

 

 

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 vol.1・vol.2・vol.6の記事で述べたように、

 

Book Memories vol.1 : ビジネスエリートになるための 教養としての投資 奥野一成 - BobY2

 

Book Memories vol.2 : 元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法 - BobY2

 

Book Memories vol.6 : 初心者でも勝率99%の株ポートフォリオ戦略 - BobY2

 

保守的な日本人は、「投資」という言葉に対してあまり親しいイメージを持っていない。それはおそらく、「投資」することは難しく、ギャンブル色が強く損をすることの方が多いと考えているからだ。

 

  しかし、莫大な利益を上げてきた伝説の投資家たちの考え方を学ぶことで、長期運用によってリスクを抑えながら利益を上げることは可能であることがわかる。

 

 「投資」と「事業」を行うことは同じであるため、相場変動に一喜一憂するのではなく、良い会社・強い会社の株を持ち続け、企業の経営状態、業績等の「事実」を見る。

企業の変化に目を向け、点検する。

そして事実と株価の隔たりで稼ぐ。

というものが彼らの行う長期投資において共通する考え方。

 

 さらに、投資において数字を見る力等の知能ももちろん重要ではあるが、最も大事なのは正しい考え方や精神力である。やはり伝説の投資家たちは皆、各々がしっかりとした自分なりの考えを持ち、かつ、努力を惜しまず強い精神力を持っているものだ。

 

株式市場に対する勉強をおろそかにせず、しっかり取り組む。

相場は必ず正しいから、冷静な心を保ち、待ち続ける。

予想通りでは攻め、予想がはずれたら損切りすることをいとわない。

確信があるならリスクはないも同然であり、そこまでの道のりをしっかり歩んでいければいいだけ。

 

といった面をしっかり守れば長期運用で失敗することはないものだ。

もちろん口で言うことは簡単だが、これらの事柄を頭に入れ、実行していくことでおのずと結果はついてくるものである。

 

 今回そのようなことを学んだのは、

 

伝説の7大投資家 リバモア・ソロス・ロジャース・フィッシャー・リンチ・バフェット・グレアム

 

桑原晃弥著 KADOKAWA

 

という本。

 

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link below  ↓

 

 

 

 自分なりに大事だと思ったところをまとめたので、興味のある方は読んでいただければ、と思う。

 

 特に本を読んだ上で自分なりの解釈だったり派生させたことを書いたりしているわけではないが、一種の教科書的な感じで大事な点をさくっとまとめ、自分の知識の幅を広げていくためのアウトプットのツールとして使うことにしている。また記事の最初にVocabs欄を設け、キーワードや専門用語などを載せているので知識を効率的に広げていただきたい。読者の方々にはもし知らないことがあれば身につけていただきたいし、ただ要約しているだけなので、よくわからない点があれば自ら購入して読んでいただくなりと、自由に使っていただければと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 [Vocabs]

 

ジェシー・リバモ:(1877年~1940年)  

1929年の大恐慌の引き金を引いたとも言われる「ウォール街伝説の投機王」。

驚くほどの成功と幾度もの破産を経て悲劇的な最期を迎えている。

ベンジャミン・グレアム(1894年~1976年)  ウォーレン・バフェットが「生涯の師」と呼ぶ投資理論家。割安株指向の「バリュー投資」の創始者として知られている。


フィリップ・フィッシャー:(1907年~2004年)  

数字だけで投資先を選ぶグレアムに対して、数字だけではなく将来の成長性や競争力を重視する「成長株投資」の創始者

バフェットのもう一人の師。


ジョージ・ソロス:(1930年~)

「クォンタム・ファンド」の設立以来、幾度かの損失はあるが、ほぼ一貫して勝ち続けている「世界一のマネー・マネジャー」。

イングランド銀行を 叩き 潰した男」とも呼ばれる。
1992年のイギリス通貨ポンドへの巨額空売りによって勇名をはせたほか、1997年のアジア通貨危機ではマレーシアのマハティール首相から痛烈な批判を浴びるなど常に投資の世界の主役として君臨していた。
長い投資人生の中で毎年、勝利し続けるウォーレン・バフェットと比べれば、ソロスの場合は年によって大きな損失を出すこともあるが、長期で見れば失うよりも 儲ける方がはるかに多い投資家であり、かつてある雑誌が評したように「世界最強のマネー・マネジャー」であることは間違いない。

 


ウォーレン・バフェット:(1930年~)

「世界一の投資家」「オマハの賢人」と呼ばれ、投資の世界以外にも強い影響力を持っている。

毎年、卓越した成績を挙げ続ける負けを知らない投資家。


ジム・ロジャーズ:(1942年~)  

37 歳で「クォンタム・ファンド」を離れ、バイクと車で2度も世界中を回った「冒険投資家」。

自分の目と足で成長を確信した新興国市場への株式投資を得意とする。


ピーター・リンチ:(1944年~)  

マゼラン・ファンドの資産を在任中の 13 年間で777倍へと成長させた伝説のファンドマネジャー。

個人投資家向けに「アマチュアの利点」を説いている。

 

暗黒の木曜日:10 月 24 日、9月以降続いていた下げ基調が一段と加速、株式市場は売り一色となり、ウォール街周辺は警官隊が出動して警戒にあたらなければならないほどの不穏な空気に包まれていた。  

 

悲劇の火曜日暗黒の木曜日当日午後から銀行家たちが買い支えを行ったことによって市場は落ち着きを取り戻したかに見えたが、休み明けの 28 日にダウ平均は1日で 13%も下落し、続く 29 日にも暴落は続き、平均株価は9月のピーク時から4割下落していた。


ERM危機:ERM(欧州為替相場カニズム) からの脱退を余儀なくされた。

 

ブラック・ウェンズデー:ソロスがイギリス政府やイングランド銀行を相手に大勝利を収めた。


株式投資で普通でない利益を得る:フィッシャーのベストセラー。


株式ブローカー:昔ながらの無礼な連中で、価格はすべて知っていても、価値については何も知らないタイプ。

株式ブローカーが見ているのは「価格(株価)」だけであり、その企業が実際にはどれほどの価値を持っているかには何の関心も持っていなかった。


周辺情報利用法:その企業に関係する人たちに徹底して聞き込み、「 15 のポイント」に注目することでその企業の成長性や競争力、本当の価値を見抜くというフィッシャーのやり方。

いわゆる「聞き込み」。

興味を持った企業の複数の関係者に話を聞いたり、取引先や顧客、競合企業などから話を聞くことで、その企業の持つ強みや弱みを知り、成長の可能性などを探って行こうという考え方。


シケモク買い:経営状態は良くないが、企業が持っている資産などに比べて株価が極端に安い企業に好んで投資するというもの。

 

一夜成金:一時的には素晴らしい成績を挙げ、時代の 寵児 となったものの、やがて消え去る人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 本文

 

[1.ウォール街のグレートベア ジェシー・リバモア]
[2イングランド銀行を潰した男 ジョージ・ソロス]
[3.百聞は一見に如かず ジム・ロジャース]
[4.成長株集中投資の大家 フィリップ・フィッシャー]
[5.伝説のファンドマネジャー ピーター・リンチ]
[6.オマハの賢人 ウォーレン・バフェット]
[7.バフェットの師 ベンジャミン・グレアム]

 

 

 

・7人の生き方も、投資に対する考え方もさまざまだが、いずれの投資家にも共通するのは、誰かの真似をするとか、何も考えずに誰かのあとをついていくのではなく、自分の頭で考え、自分の責任で行動するという強さ。

 

 

1.ウォール街のグレートベア ジェシー・リバモ


大恐慌の引き金を引いた男

・大きな損失を被った投資家たちがパニックに陥って株の損失を埋めるためにさまざまな事業や国に投じていた資金を引き揚げ始めたことで、証券市場の大暴落がやがて世界恐慌につながったとも言われている。


・リバモア自身、「一個人が市場を動かし、価格を思うまま上下させるなど不可能なこと」(『世紀の相場師ジェシー・リバモ』リチャード・スミッテン/訳・藤本直/KADOKAWA)と答えている。


・暴落が起きる数カ月も前からリバモアは高騰を続ける株価の先行きを下落とにらみ、売り込んでいた。株数にして100万株、金額にして1億ドルを超える仕込みを終えていたリバモアはすさまじい勢いで株価が下落する大恐慌のさ中、巨万の富を得ることになった。時価総額にして 29 日までで260億ドル、いったん底を打った 11 月半ばまでの3週間で300億ドルもの富が消滅したと言われる大恐慌の中で、リバモア一人は巨万の富を手にすることができた。


チョーク・ボーイ時代に学んだ相場師の心得とは


・リバモアは雑然とした数字の中に規則性があることや、客の予想と現実の数字はめったに一致しないことに気づいていた。


・「株価が変動する姿のみに意識を集中せよ。変動の理由に気をとられるな」

株価の上げ下げの理由はさまざまに語られる。しかし、その理由は現実には無数にあり、たとえ正確な理由が分かったとしても、それはすべて後付けに過ぎない。そんなものを考え知ったところで1セントにもならない。大切なのは現実の数字に目をこらし、その動きを正確に読み取ることだけだというのがリバモアの得た教訓。


・「相場で傷を負いたくなかったら、事実、現実、論理から1ミリたりとも離れないことだ。好ましくない結果が生じたとすれば、市場が間違ったわけではない、トレーダーが間違いを犯したからだ」。


・人は時に市場に対して希望を抱いたり、予測を口にするが、リバモアはそうした 曖昧 なものに頼るのではなく、「市場が発信する論理的に間違いのないシグナルを確認して行動する」という原則を常に意識していた。相場で成功したければ、希望など捨て去ることだ。ただひたすらに数字の動きを見つめ、事実のみを直視する。


株式市場はしっかり勉強しなければならない相手


・「片手間に相場を張る人間は何百万といても、相場を張るという技を磨くことにフルタイムで取り組む者は数えるほどしかいない」  

いつの時代も相場を張る人間は山ほどいる。


・リバモアにとって株式市場は「しっかり勉強しなくちゃならん相手」であり、それも「生半可なやり方じゃなく、腰のすわったやり方」で取り組むべき相手だった。


・ほとんどの人はブローカーに電話を一本かけるだけで売買ができる簡単さのせいか、さしたる勉強も努力もすることなしに大金を投じてしまう。

「これは無知以外の何物でもない」というのがリバモアの考え方だった。  

相場に限ったことではないが、最終的な成功を勝ち取るためにはたゆまぬ分析や、ひたむきな勤勉さが欠かせない。それなくしてはまぐれ当たりの成功はあったとしても、驚くほどの成功を手にするのは難しいというのがリバモアの生涯変わらない「哲学」。


無敵の突撃小僧


・お金を賭けないギャンブルなら人はいくらでも冷静でいることができるが、そこに「勝った、負けた」が加わると感情が表れ、冷静さを失うというのはよくあることだ。投資の世界で多くの人が失敗する理由の一つとして「人間の欲には際限がないからだ」とはよく言われること。


・人間というのは弱い生き物で、ある程度の 儲けが出たところで引けばいいものを、「あといくら儲けたら手を引こう」と欲をかいて深入りした挙句に大敗を喫することがよくある。危ないなとは思いつつ、つい引きずられてしまう。この辺で戦線を縮小しようと考えながらも深入りしてしまうのが投資の厄介なところ。


身銭を切ってこそ自分の考えが正しいかどうかを確かめられる

 

・「市場で自らを鍛え、何かを学び取りたいと念じるなら、身銭を投じて、自分の手口を注視し、失敗から教訓を得ることだ」  

実際に大切なお金を賭けない限り、自らの考え方の正しさを確かめる 術 はないし、厳しい局面で自分がどう動くのかを確かめる方法はない。どれほど優れた理論を持っていても、お金がかかった局面でその理論やルール通りに動けるとは限らない。


・頭で考えるだけ、言葉にするだけなら誰でもできる。そこに実行が伴って初めて知識やアイデアは真に誇り得る経験となっていく。


勝つべき相手は相場ではなく自分の中の感情の起伏である


・相場に敗北を喫した人はたいていの場合、外に敗北の理由を見つけようとするもの。


・「市場は常に、絶対的に正しい。それに対して人間は、しばしば誤った予想を抱き、進む道を踏み誤る」  

相場には人間の心理が影響する。期待通りの利益が出たにもかかわらず、「もっと儲けたい」という欲に負けてさらに突っ込んでいく。かと思うと、思わぬ損失に我を忘れて損失を取り戻そうとさらに突っ込んだ結果として大敗を喫することもある。本来、自分の予想とは逆の方向に株価が走り始めた場合、メガネ違いが明らかなのだから「やめる」と決断すべきところをそれができないのは「エゴ」のせいだというのがリバモアの

見方。


・相場で勝つためには何が必要か。

バモアによると一つ目はタイミングであり、二つ目は手持ち資金。

そして三つ目が最も重要であり、それは「冷静さを失わない自制心」。


・勝負である以上、思い通りにいかないこともあれば、予想以上の結果が出ることもある。そんな時、我を忘れ突き進むのではなく、「冷静さ」「平常心」をいかに保つかが相場に勝つ秘訣。


・相場で勝つためには徹底した研究と、己の感情をコントロールすることが必要。


すべてを失うことは重要な学習機会


・すべてを失うことで初めて何をすべきではないかを学び、そして次に向かう気力も湧いて来る。リバモアは生涯に4度もの破産を経験しているが、最後の破産を除いてはすべてを失った後、その数十倍、数百倍もの利益を手にしている。


最初からすべてを投じるな、まずは読みの正しさを確かめろ


・「市場の動きを確認するために、小口の打診をする」。


・「相場の大きな展開を辛抱強く待つ」。


企業価値に比べて時価総額が極端に低い割安株などに関心を示すことはなく、大きな波に乗って、 怒濤 の相場を手掛け、大きな利益を手にするのがリバモアのスタイル。

ところが、こうしたやり方では相場判断を間違えるとすべてを失う恐れもある。


・目論見 と逆の方向に走り始めた時に、もしすべてを投じていればすべてを失うことになるだけに、そういう場合には即座に「やめる」ことが必要。


・企業改革でもそうだが、一気にすべてを変えようとすると大きな抵抗に遭う。失敗に終わればお金を含めて大きな損失を出すことになる。それを避けるためにはまず小さな改革、あまりお金のかからない改革からスタートし、 手応えを感じながら少しずつ大きな改革へと広げていくのが利口なやり方。


・「相場の流れに変化が起き始めているという自分の判断を確認するために、私は小口の取引で打診するという方法をとっている。『売る』にしろ、『買う』にしろ、わずかな額からスタートし、自分の判断が正しいかどうかを試すのだ」。


・相場に「絶対」はなく、市場を相手に「全戦全勝」はあり得ない。何かを感じたらまずは探りを入れる。その結果が予想通りであれば、本格的な売買へと進むのがリバモアのやり方。


チャンスが来るまで辛抱強く待ち続けろ


・リバモアは市場をねじ伏せることなど絶対に不可能だとよく分かっていた。勝つためには「勝つ条件」が揃わなければならない。それも一つや二つではなく「すべての条件」が揃って初めて大きく勝利できると考えていた。それには「待つ」ほかはない。「相場師には忍耐が必要だ」がリバモアの考え方。


・リバモアにとって「株を買うのに高すぎる」というケースはないし、「空売りから入るのに株価が低すぎる」ということも決してなかった。大切なのは「市場にいつ切り込み、いつ引き揚げるか」というタイミングだけであり、そのタイミングを逃すことなく勝負に出るのがリバモアのやり方。


・もし株価が予想に反する動きに出たらどうするか。

その時は株価を追いかけるのではなく、あっさりと撤退し、次のタイミングを待てばいいだけのこと。


・いつまでたっても「好機到来」といかなかったらどうするのか。

そんな時も決して焦ることなく好機を待てばいいだけのこと。


・「相場師は忍耐強く待ち、そして行動を開始するだけでなく、取引を開始した後も、再度気長に時の到来を待たければならない。


・リバモアが本格的に行動を起こすのは自分にとって好都合な環境が形成された時だけだ。それ以外は決して余計なことをせず、ただひたすらに好機到来を待ち続けた。時には時間がかかることもあるが、リバモアは気にしなかった。

相場師に必要なのは「並大抵ではない忍耐力」。


・「考えをめぐらすことで金が儲かるわけではない。ひたすら待つことで金が手に入る」  

もちろんぼんやり待つわけではない。株価の動きを丹念に追い、事実だけを追い続ける。そして「好機到来」となるや、一気に勝負に出るのがリバモアのやり方。


・時には単に「待つ」だけではなく、「離れる」ことも必要。
「休みなく相場を相手に勝負し、勝ち続けるのは不可能であり、またそうすべきではない」。


・リバモアにとって相場は全身全霊を傾けて行う頭脳活動だった。だからこそ「休暇が必要」。

 

・カードプレーヤーは一手ごとに「意味のあるプレー」をしなければならないという衝動にかられるというが、同様に投資家も常に「意味のあるプレー」を追い求めることで大敗を喫することがある。


・相場師はつい目の前のチャンス、訪れるチャンスをただの一つも逃すまいと休みなく相場に張り付こうとするが、そこからもたらされるのは無謀な取引であり、焦りが生む敗北でしかない。


・「誰であれ株で利益を得ようとするなら、資金を遊ばせる時期を設けなければならない。時にはすべての資金を引き揚げ、再度船出する時期を待つのだ。時間と金はまったくの別物であり、時間は時間、金は金という意識を忘れてはならない」。


内部情報や極秘情報を信じるな


ウォーレン・バフェットのあまりに有名な原則がある。

「原則一、損をしないこと。原則二、その原則を忘れないこと」だが、それほどに投資家や相場師にとって原則は大切で、たしかにその原則を破った時、人は窮地に陥ることになる。


・リバモアが破ったのは投資にあたって守り続けてきた「相場は誰とも組まず一人でやる」と「内部情報や極秘情報を信じるな」というもの。


・リバモアはそれまで誰とも組まず、常にたった一人で相場を張っている。誰にも相談せず、誰とも組まずに、自分一人で徹底的に研究して、考え、決断するというのがリバモアのスタイルであり、それ以外の人間が入り込むことも、誰かの情報が入り込む余地もまるでなかった。


・「情報はすべて危険である。情報はあらゆる形態を装い、採用をもちかける」。


・株の世界には「四方八方から暗示のネタが降り注いでくる」だけに、そんなものを信じ込んだらすべてを失ってしまう。信じるのは株価が示す事実のみ。リバモアは情報からあえてわが身を遠ざけるようになった。


損は切れ、利益を確保せよ


・利益の出る株はある程度放っておいてもいいが、損が出た場合には早めに損を切るというルール。


・相場で大敗を喫するのはどんな時か。

最初の予想と違う方向に流れ、損失が出たにもかかわらず、その損失を取り返そうとさらなる勝負に出て大けがを負うケースがとても多いように、相場の失敗を相場で取り返そうとしたり、損失を嫌ってさらなる追加投資に走ると損失は取り戻せるどころか大きく膨らむことになる。


・「取引開始から 10%以上の損が出たら、その時点で手じまいする」。


・損失を取り戻すためには2倍の出費が必要になる。 50%の損失を取り戻そうとすると、100%の利益が必要になる。損失が出るということは市場に非があるわけではない。判断を間違えた自分の問題だ。だとすれば「最初の判断が間違っていた」ことを潔く認め、さっさと損切りして、その銘柄と決別するのが賢明な選択というもの。


・企業経営でも戦争でも最も難しいのは撤退や退却。


・「利益の出ている取引は放置しておいてよいが、損が出た場合は即断即決が必要だ」。


孤高を恐れるな。「みんながやっている」は正しさを保証してはくれない

 

・「大衆と同じバスに乗っていても、時期が来たらいつでもそこから飛び降りようと身構えている。そして、逆方向に進む結果となることも恐れはしない」。


4度目の破産、そして悲劇の死


・投資においても、生きていくうえでも最も厄介なのが人間の感情というやつ。

 


2.イングランド銀行を潰した男」 ジョージ・ソロス

 

生き残れ、さもなければ次はない


・「危険をおかすことは、悪いことではない」。


・「リスクをおかす際は、すべてを賭けるな」。


・「うまく行っていない時、最初にすべきことは、投資額を減らすことだ。損失を取り返そうとしてはならない。投資を再開する時は、小額で始めるべきだ」。


・時に現実がシナリオ通りに進まないことだって当然ある。そんな時、ソロスはどうするか。

「私は間違えた」と言って、すぐにおりることも 厭わない。


・「テコ入れを行なうと、市場が予想通り動いてくれれば抜群の業績をあげられるが、予想がはずれた時は、悲劇的結果を覚悟しなければならない。一番判断に困ることの一つは、どのレベルのリスクが安全かということだ。どんな場合にも使える物差しはない。ケース・バイ・ケースで判断しなければならない。最終的には、自分の生き残り本能に頼るしかない」。


・「戦うための資金が残れば損失を取り戻すことができるが、すべてを失ってしまうと次はない。それがソロスの「生き残り」策。


・投資家であり続けるためには決してすべてを失ってはならない。大きく勝負に出る一方で、次への備えも怠らない。投資家には「生き残り」も重要な資質となる。

 

ソロスとジム・ロジャース、最強のチーム誕生


・伝説の投資家にとって「ウォール街のど真ん中」は余計な情報が飛び交う邪魔な場所に過ぎない。


「株式市場はつねに間違っている」からスタートする


・ソロスはウォール街証券アナリストたちについて、「企業経営者のためのプロパガンダを 吹聴 しているに過ぎない」存在であり、「会社の決算報告書から盗んできたような」投資レポートの中に「めったに価値あるものを発見できることはない」と切り捨てている。

ソロスは言う。 「われわれは、〝株式市場はつねに間違っている〟という仮説から出発している。だから、もしウォール街の連中と同じことをすれば、失敗することは目に見えているわけだ」  

だからこそ、ソロスのファンドは大手の機関投資家が株式価値を減らす時代でさえ、高い成長率を維持することができた。ソロスは多くの投資家とは正反対の考え方をすることで成功者となった。ウォール街の大多数が株価を夢中になって追いかけているのに対し、ソロスは経済や社会、政治の動きを追い、そこにどんな変化が起きているのかを知ろうとした。株価はそうした変化の結果として上下するのだから。


苦汁をなめる覚悟がなければ勝負をするな


・「損をすることなくして、金儲けをすることはできない」

がソロスの考え方だが、「損をすること」は間違いなく投資を「苦痛」なものとし、またいろいろなものを失うことにもつながっていく。


・「ゲームに参加したければ、苦痛に耐える覚悟がなければダメだ」  

投資は投資家に大きな富や名声をもたらすこともあるが、そこに至る過程はとても過酷なものだ。リスクを負いながら、時に失敗を甘受しながら、自らの読みに 賭ける勇気を持ち続ける。それだけの苦痛に耐える覚悟があってこそ大いなる成功者となることができる。


まず投資し、あとで調査しろ


・「まず、市場の感触をつかみたい。売り手としてどのような気持ちか、見たいのだ。もし簡単に売れるようなら、簡単にこれらの債券がさばけるようなら、もっと買いを入れたい。だが、売りに苦労するなら、買い手にまわるべきかどうかは疑問だ」。


・市場には論理的な側面と非論理的な側面があるとよく知っていたソロスは、いつも市場が自分の予測した通りに動くとは考えていなかった。予測とは違う動きに出ることもある。そのため、ソロスは本格的に動く前に往々にしてテストを試みた。


・「投資をする際、私はほとんどの場合、仮説を立て、それを市場でテストすることにする」  

テストした結果、「正しい」という確信を得れば、ソロスは一気に大きな賭けに出るが、予測と異なる動きを市場がした場合には
「もう一回、仮説を検証しよう。なぜこうなったのかの理由を考え直そう、どのような認識に基づいていたのか、市場の動きと突き合せてみよう」。


・トレンドの変化をつかんだなら、市場はこう動くという仮説を立て、その仮説をテストするために、まずは小さく買いを入れてみる。そうすれば仮説が正しいかどうかがすぐに見えてくる。そして正しければ突き進み、間違っていれば仮説の見直しを行う。

こうした検証を経ているだけに、周囲から見た「大きな賭け」もソロスにとっては「結果の見えている賭け」となる。


正しい時にどれほど大きく稼ぐか、間違った時にどれだけ小さく損をするか

 

・「重要なことは、正しいか、間違っているかではない──正しい時にいくら稼ぎ、間違っている時にいくら損をするかだ」。


・現実と予想にズレが生じた時、ソロスは「私は間違えた」と言って降りることを厭わない。間違ったまま突き進むと、あっという間に破滅してしまう。それでは「次」はない。反対に現実が予想通りに動き始めた時のソロスは 躊躇 しない。


・「もし株が上がったら、もっと買え。もし正しいと思ったら、買うんだ」

「正しいと思ったなら、なぜ持っているものすべてを賭けないのか」がソロスの考え方。


・平凡なファンドマネジャーはある程度の成果を挙げたなら、そこで満足してしまい、あとは損失を出さないように慎重な取引に終始してしまうが、ある程度の成果を挙げ、もし自信があるのなら、さらにその上を狙えというのがソロスの要求。


・読みが正しい時に、「儲けすぎ」ということはない。むしろ読みが正しいにもかかわらず、その機会を最大限に利用することなく、「そこそこの儲け」で満足するマネジャーこそソロスには我慢がならなかった。


・攻める時には急所を攻める。正しい時にどれだけ儲けるかで長期的にどれだけの収益を挙げることができるかが決まることになる。


・「分析に優れた者は何千といるし、トレンド予測に優れた者も何百といる。だが、その情報を使いこなし、引き金を引き、自分が思った通りの大勝負に打って出るとなると、それができる者は一握り以下に限られる」。


ソロス、「伝説の投資家」に


・ソロスがやったのはヨーロッパの経済やイギリスの経済を冷徹なまでに分析、政府の政策と現実の市場との間にある矛盾を読み取って投機を行うこと。


・イギリスの経済は低迷していた。にもかかわらず、通貨だけが高値を保つのは難しい。当然、イギリスはいずれERMを脱退し、ポンドを切り下げることになるというのがソロスの読み。


・イギリスの首相や蔵相は切り下げを否定したものの、ソロスは「現実の厳しさ」をしっかりと見ていた。


・「分かり切った賭け」だった。  

自分たちが正しい時、賭け金を「どれだけ大きくするか」「どうやって最大限に利用するか」こそがソロスの言う「本当の決断」。


・「良心がとがめるために、ある行動を控えなければならないのなら、私は腕のいい投機家ではなくなってしまう」。


政治的発言をするうえで名声は大いに役に立つ


・「名声を得たことによって、私は、発言したいことを発言する機会を提供されるようになった。そのことに私は満足している。政治的発言を聞いてもらえるという点で、名声を得たことはとても便利なことだ」。


・世の中にはお金を儲けること自体を目的にする人もいれば、金儲けを目的達成の手段と考える人もいる。

どちらを選ぶかで人はソロスの言う「自らの成功の 虜 なのか、それとも自らの運命の支配者なのか」が決まることになる。


「国境なき政治家」として


・「歴史的な規模にまで膨らんだバブルは、想像以上に膨らみ続ける」。


・トレンドを読む達人ソロスにとっても近年のバブルは簡単には読み切れなかった。


・投資家に求められる「今後、世界の相場はどうなるのか」以上に、「国境なき政治家」として積極的に発言するのがソロス。


・ソロスは誰もが認める伝説の投資家だが、ソロス自身は投資家としてのありとあらゆる名声と莫大な富よりも「国境なき政治家」という呼称の方が気に入っているのかもしれない。

 

 

3.百聞は一見に如かず ジム・ロジャース


ビジネスをするのに「若すぎる」ことはない


ウォーレン・バフェットによると成功するための条件は学歴や人脈ではなく、いかに早くビジネスを始めたかで決まる。


社会通念や常識が間違っているのはしょっちゅうだ

 

・ロジャーズとソロスのクォンタム・ファンドが圧倒的な成功をした理由の一つはウォール街の常識に疑いを持ち、 大勢 に安易に従うことをしなかったからだ。  

ロジャーズによると、常識には間違っているものもあれば、正しいものもあり、その常識が間違っているのか正しいのかを自分自身で調べ、そして考えることが大切。


・常識や社会通念に限らず、マスコミの報道だって、そのすべてが事実とは限らない。悪意ある虚偽ではないにせよ、すべてを 鵜 吞 みにすると判断を間違えることになる。インターネット上の情報が虚実入り混ざったものであるように、世の中に流れている情報や、世間の人が「常識」と考えているものの中には間違いもあれば、時代に合わなくなったものだってあって当然。


・広い意味での社会的、経済的、政治的な動きが、ある産業の株ないしはグループ関連株の方向性をどのように変えてしまうかということに、より大きな関心があった。

われわれの認識と、市場での株価の間に大きな隔たりがあればあるほど、好都合である。なぜなら、それで金儲けができるから。


・大切なのは常識や情報を鵜吞みにすることや大勢に従うことではなく、何が正しいのかを調べ、判断すること。


・常識を疑い、社会通念を疑う。群れの後ろを黙ってついていくのではなく、自ら正しいと信じた道を行く。こうした姿勢を通して人は考えることを学び、何が正しいのかを自分で考えられる力を手に入れることができる。


・「大勢に従って成功した者は、これまで1人もいない。もし周囲の人々が君の行動を制止しようとしたり、馬鹿にし始めたら、それは素晴らしい成功へのサイン」がロジャーズのアドバイス


他人に流されるな、自分で考えて行動しろ


・「需要と供給の法則を覆した者はいないし、これからもいまい」。


・価格が上がりすぎると、いつも決まって起きることがある。誰かがその実態を見破るか、誰かが代用品をつくる。
何かが高騰すれば、人も企業もそれに代わる何かをつくり上げるし、それまではコストを抑えようと我慢をするもの。


・木が天まで伸びることはないし、株価が永遠に上がり続けることもない。価格が上がれば、需要が減少し、人は代替え品を求めるようになる。やがて供給が超過し、価格も下がるか落ち着きを見せることになる。


投資は価値があると「知っている」と言えるまでは何もするな

 

・「自分がよく分かっているものに投資しろ」がロジャーズが授ける投資のアドバイス


・投資をするのなら完全に理解しているものに投資する。それがロジャーズのやり方。


・「I thinkではなく、I knowなのだ」。


・投資をするにあたって、その対象に「価値があると思う」というだけで投資をしてはいけない。「価値があることを知っている」と言い切れるまで徹底して調べ抜き、そして確信を持ったうえで投資をする、というのがロジャーズの考え方。


・あらゆる財務データを最低でも過去 10 年、できればそれ以上に 遡って分析をする。細かい注意書きも決して見逃さず、見通しについてもすべて裏を取る。  

そのうえで、経営者はもとより、競合相手や得意先、取引先といった関係する人たちに可能な限りヒアリングを行って、自分の仮説が正しいかどうかを検証するという。こうしたステップを積み重ねたうえで、「知っている」と言えるようになって初めて確信を持って投資ができる。


・大半の人が成功できないのは、徹底して調べることをせず、不十分な調査のまま、「価値があると思っている」レベルで投資をするから。


・「思っている」を「知っている」にするためにはたくさんの努力と徹底した調査が欠かせない。大変な労力を要するが、ここに至るステップこそが投資の成否を左右する。


・投資は価値があると「知っている」と言えるまでは何もしてはいけない、というのがロジャーズのアドバイス


確信のある「バカな」行動こそが勝利を手繰り寄せる


・周囲の人がある人の行動を止めようとしたり、バカにし始めたりしたら、それは良い兆候。


・周囲が「間違っている」と考える行動が結果として正しく、成功をもたらす例はいくらだってある。誰かが先に始めたことに追随しても、大きな成功は望めない。みんながやりたいと思っていることで成功するのも難しい。むしろみんなが「バカな」と思うような行動の方がうまくいく。投資の世界では、大衆に追随するのではなく、大衆の考えや心理に逆らうことでこそ成功を手繰り寄せることができる。


リスクの大小は「みんなが」ではなく自分がどれだけ知っているかで決まる

 

・ロジャーズは投資で冒険はしない。


・「投資はいかなるときも慎重でなければならない。投資の第一のルールは元手を失わないことだ」。


・何も知らない人にとっては大きなリスクに思えても、すべてを調べつくし、現地をよく知っていればリスクを感じる必要はない。ロジャーズの投資の基本は、「すべてを調べつくす」こと。


・過去に遡って資料を読むことはもちろんのこと、可能な限りのヒアリングを行うというステップを踏むことで、自らの仮説の正しさを確信できて初めて投資に踏み切っている。


・「保有銘柄はできるだけ少なくすべきだ。ポートフォリオとはどれが上がるのか自信がないから、みんな買うという発想だ。上がるもののみを買い、下がるもののみを空売りすればよい」  周到な準備と確信、その裏付けがあってこそ人は「上がるもののみを買い、下がるもののみを空売りすればよい」と言い切ることができる。


「途方もない価値のもの」に疑いの目を向けろ


・「途方もない価値のものに出くわしたときは、一歩引き下がって何かがおかしいのではないかと自分自身に聞いてみること、立ち止まって考えてみることだ」。


・どんなものでもそうだが、本来の価格以上で売るのは難しい。一時的には可能かもしれないが、いずれは「本来の価格」へと落ち着くことになる。  

投資の世界では時に「途方もない価値のもの」に出くわすこともあるが、そんな時にはロジャーズの言うように「何かがおかしいのでは」と考える姿勢が欠かせない。それが「次にとるべき行動」を教えてくれることになる。


大きな変化に気づいたらその意味を考えよ


・「投資家であれば、何か大きな変化が起こるのを見たら必ず次のように考え始めねばならない。これは何を意味するのだろうか。どんな影響があるのだろうか。これによってどんな経済的、政治的、社会的な変化が起こるのだろう」  

今日のようなグローバル経済下ではある国やある地域の変化が他の国や地域に大きな影響を与えることになる。


・ある変化に気づいたなら、それがどのような変化をもたらすのかを推論する必要がある。ロジャーズはこうした変化をとらえ、影響を推論することで投資のチャンスを見出していった。

「ビッグチェンジがあるところにビッグチャンスがある」とはロジャーズの言葉だが、チャンスをものにするためには考えることが必要。


・重要なのは日々の株価の動きではない。大きな変化、突然の変化をとらえ、その変化がもたらすであろうものと、現状の株価の間の隔たりが大きければ大きいほどビッグチャンスがあるというのがロジャーズの考え方。


・数十年に1度とか、100年に1度といった大きな変化なら、自分が生きているうちに出合えない可能性だってある。ロジャーズの言う「大きな変化」は世界規模、国家規模である必要はない。それぞれの業界にとっての数十年に1度の変化はしばしば起きており、そこにチャンスがあるというのがロジャーズの考え方。


・ある業界に起きる大きな変化をとらえることができれば大儲けできるというのがロジャーズの考え方。


外に出よ、そこにはたくさんの学びがある


・「読書は、もちろん考える力をつけるための助けにはなる。でも、考える力を得るためには、それ以上の努力が必要だ。哲学書を読む人はいる。しかし、そこに書いてあること以上に、考えるということを真剣に学ぼうとする人間は稀だ」。


・投資においても「学ぶこと」は必要だが、それ以上に自分の目で確かめ、自分の頭で考える力が成功には欠かせない。


・投資に精通するためには、本を読んだり、ビジネス・スクールで学んだりする以上に、自ら世界を見て、「大きな変化」を肌で感じ取る方がはるかに大切だ、というのがロジャーズの考え方。


・学び方にはいくつものやり方がある。学校で学ぶのも一つのやり方なら、現地現物でものを見て、自分で考えるやり方もある。あるいは、実際に投資をすることで学ぶやり方もある。ロジャーズは学校で学ぶことを否定しているわけではない。しかし、それだけでは限界があり、人は何よりも外の世界に出て、自分の目で見て、変化を感じ取ることでさらに大きなものを学ぶことができると信じていた。


投資で大切なのは「自分」をよく知ること

 

・「もし自分が天才だと思ったら、しばらくは何もしてはいけない」

「何でもできるという気分になったら、何もしないこと」  

投資に限ったことではないが、大きな成功を手にすると、人は「何でもできる」「自分は天才じゃないか」「このまま勝ち続けてやるぞ」といった気持ちになりやすい。目の前に広がっているのは栄光へのゴールで失敗などありえないとつい思ってしまう。そこに落とし穴がある。過信や慢心は見る目を曇らせる。冷静な目、リスクを測る目を失えば、人はたちまちのうちに穴ぼこに落ちることになる。


・「優秀なトレーダーは、自らが間違いを犯しやすい人間であることを自覚している」  投資の世界に「確実」とか「絶対」という言葉はない。どれほど調べつくし、確信を持っていたとしても、状況が大きく変われば、そんなものは吹っ飛んでしまう。確信を持った投資であっても、そこにリスクは必ず存在する。


・「間違った」ことを素直に認めて、すぐに正しい方向へ転換することが肝要。


・大切なのは自分をよく知ることだ。人は時に判断を間違えるし、熱狂の中で冷静さを失うこともある。しかし、自分が「間違える」ことを知り、「冷静さを失うこともある」と知っていれば上手に対処できるし、たとえ失敗しても損失を小さく抑えることができる。過信や慢心からは何も得るものはない。投資で成功するためには「人は間違える」ことを知り、間違えた時には素直に間違いを認めることだ。そこにこそ成功し続ける鍵がある。


百聞は一見に如かず、一見は一行(行動)に如かず


・歴史に学ぶことの大切さを説いているロジャーズによれば、「昔日の経済大国が最貧国になったケースはいくつもある」という。

 

 

4.成長株集中投資の大家 フィリップ・フィッシャー


バフェットはグレアムとフィッシャーのハイブリッド

 

価格だけで企業の価値を知らないブローカーとは違う投資顧問会社


・企業の「価値」と「価格(株価)」は必ずしもイコールとは限らない。素晴らしい企業価値を持つ企業の株価が何かの事情で大幅に下がってしまうこともあれば、実際の企業価値をはるかに上回る株価で取引される企業もある。


・バフェットやグレアムの流儀は「投資とは企業の一部を所有すること」という言い方から分かるように「価格」よりも「価値」に重きを置いて、実際の価値よりも価格がはるかに低い、つまり「お買い得」の時に投資をしてできるだけ長く「所有する」こと。


・みんなが「常識」と考えていたものがすべて正しいわけではなく、そこにもたくさんの間違いがあり、常識とは別の投資原則がある。


大切なのは正しい投資原則を身に付けること


・二つの基本的考え方。
「大きな利益を得るためには忍耐が必要ということである。株価に何が起こるかを予想するほうが、それがいつ起こるかを予想するよりも簡単だから」。
「株式市場がみんなを欺こうとする性質を持っているということ」。

「みんながしていることにつられて同じことをしてしまえば、たいていはまったく間違っている」。


・多くの個人投資家があとになって高いツケを払わされるのは、投資の基本概念を知らないままに意図せず間違った考えや投資方法を覚え、実行してしまうから。


・大切なのは正しい原則を知ることであり、そうすればきっと大きなチャンスをつかむことができるというのがフィッシャーの考え方。


超成長株を見つけて永久に保有しろ


・フィッシャーの投資方法を端的に言えば、「 10 年、 20 年で株価が 20 倍、 30 倍になるような成長力のある少数の企業の株を見つけ出し、それが驚くほど値上がりするまで長期間、ほぼ永久に持ち続ける」というもの。


・フィッシャーは最も多い時期でも 30 銘柄ほどしか保有していないように、とことん絞り込んだ「超成長株」にしか投資をしていない。

 

・超成長株を発見し、そして長く持ち続ければ人は誰でも驚くほどの利益を手にできるというのがフィッシャーの考え方。


・「安く買って高く売ろうと派手な動きをするよりも、真に優れた企業を見つけ出し、市場がどれだけ激しく変動してもその企業の株を保有し続ける方が、実際のところ、はるかに大きな利益をはるかに多くの人たちにもたらした」。


アメリカの株式取引所に上場している企業の中には 25 年から 50 年前に1万ドルを投資していれば、その価値が 25 万ドル、あるいはそれ以上になっている企業は決して少なくない。


・大切なのは日々株価の動きを追いながら、頻繁に売り買いすることではなく、真に成長し続ける企業をしっかりと選び抜き、どんな時にもしっかりと持ち続けること。


超成長株は部屋に籠って数字を分析するだけでは見つからない

 

・成長株を見つけるためには、部屋に 籠って資料を 漁るだけでは無理がある。


・成長企業を見つけるためのポイントを 15 挙げているが、そのいずれもが「部屋に籠って数理計算をするだけで判断できる」ようなものではない。


・「世間一般の人たちが優れた投資法の鍵を握るものと思い込んでいる財務統計分析を使ってできることといったら、かなりの労力を注いだあげくに、現在は割安だと判断できる銘柄を見つけ出すくらいのことでしかありません」。

財務統計分析を丹念に行うことで、時に掘り出し物を見つける可能性はもちろんある。しかし、それによって得られる利益は成長株への投資で得られる利益に比べてわずかなものであるだけでなく、時にはわずかな利益さえももたらさないままに問題を起こして消え去ることだってある。


・成長株に比べて、割安株は「どれほど割安な株であっても、せいぜい5割引きのバーゲン品でしかない」というのがフィッシャーの考え方。


・投資家の中には大量の書類を書斎に持ち込んで、週に何時間かをかけて研究することを楽しみにする人もいるだろう。そうすることで割安株をいち早く見つけることを無上の喜びとする人がいても構わない。しかし、そこから得られる利益は素晴らしい経営者のもとで成長し続ける企業を「合理的な知性を働かせて見つけ出した」投資家が得るものに比べるとはるかに小さなものになる。


・投資家は超のつくほどの成長株を見つけたいなら、部屋に籠って数字を見ているだけではなく、外に出て積極的に自分の目で見て、自分の耳で話を聞かなければならないというのがフィッシャーの考え方だが、どちらの道を選ぶかは投資家次第。


大切なのは「数字」以上に「数字を信頼できるか」である

 

・「書かれた数字がすべてではない」。


・投資家にとって企業が発行するアニュアル・レポートは投資の判断をする大切な資料となる。しっかりと読み込むことで、あるいは財務諸表などをしっかりと分析することで、その企業が投資するに足る企業かどうかを判断している投資家は決して少なくないだろう。では、こうした数字や資料がきれいに仕上がっていればそれで十分かというと、もちろんそうではない。


・「アニュアル・レポートの書き方が気に入ったというだけの理由で株を買ってはならない。レポートの向こう側に隠された事実こそが投資家にとっては重要」。


・レポートの印象だけで企業を判断するのは、外側を包む包装紙だけで箱の中身を評価するようなものだ。たしかに人は本の表紙を見て、その本を手に取るかどうかを判断する傾向があるが、どれほど表紙が素晴らしくとも、本の中身が同様に素晴らしいとは限らないように、企業の姿を就てるアニュアル・レポートがそのまま企業の真実を伝えているとは限らない。


・企業が発表する数字についても同様だ。投資分析には数字は必要だが、数字だけで判断できるかというとここでも「絶対」はない。


・「大切なのは、数字を手に入れるかどうかではなく、どれだけ細かい数字を手に入れられるかでもなく、手に入れた数字が十分に信頼できるものかどうかという点」。


・レポートや数字は投資判断の一根拠にはなるが、絶対的な根拠とはならない。だからこそ、フィッシャーは「聞き込み」が必要だと考えていた。経営者や社員、元社員や取引先、顧客などへの聞き込みを通して「レポートの向こう側に隠された真実」の一端にでも触れることができるならその方がいい。


・もちろん一投資家にできることには限界があるわけだが、投資家は公になっているレポートや数字だけで投資の判断をするのではなく、可能な範囲でその奥に関心を持つべき。

そうした姿勢を持って投資判断をするだけでも随分とものの考え方は変わってくるもの。


・投資にはこうした自分の目で確かめるとか、自分の頭で考えを巡らすということがとても大切。


・今の時代、私たちの周りには山のように情報が 溢れているが、大切なのは情報の量や細かさではなく、手に入れた情報が十分に信頼できるものかどうかを考えること。


見るべきは過去の数字よりも未来の成長可能性


・万全な準備をしたうえでの聞き込みを行って初めて企業の成長力を知ることができる。


株式投資を行う場合、たいていの投資家は過去数年間の株価の動きを見て、最高値と最安値が記録された表を前に株を買うための「最適」な値段を算出しようとするが、フィッシャーはこうしたやり方を「愚かなやり方」「危険なやり方」と「力を込めて」言い切っている。

理由はそんなことをしてもたいした意味はないし、場合によっては大きな利益を得られる企業を見逃してしまうから。


・「投資家にとって意味を持つのは過去五年間ではなく、今後五年間の利益だということを忘れてはなりません」  

投資の専門家たちは過去に起きた出来事がその後も続くと思い込む傾向がある。過去の数字が芳しくない企業は未来も同様の数字で推移すると勝手に思い込むように、過去に繁栄した企業が何もしなくとも反映し続けると誤解することになる。

しかし、大切なのは「過去の数字」以上にその企業が未来に向かってどんな戦略を持ち、どんな研究開発を行い、その市場がどんな可能性を秘めているかである。


・「われわれが支配下に置かなければならないのは過去ではなく未来」。


・過去の統計ばかりに頼っていると、その企業の中で進んでいる変革や挑戦を見過ごし、せっかくの投資機会を見失うことになりかねない。過去の株価の動きを知ることは株を買うとか売る際の絶対的な指標にはなりえない。今後数年の間にその企業が何をしようとしているのかを知ることこそが株式投資では大切だ、というのがフィッシャーの考え方。


束の間の成長企業ではなく長く成長し続ける企業を


・フィッシャーが成長企業に投資をする理由は「安いから」ではなく、「成長によって大きな利益を約束してくれる」からだ。そしてその成長は「束の間の成長」ではなく、可能な限り長く続くものであることがポイント。


・企業というのはたとえ売り上げが下がっている、あるいは伸び悩んでいる状況でも1度限りの好決算を出すことはできる。大胆なリストラを行うとか、持っている資産を売却するといった方法を使えば株価を上げるくらいの利益を出すことができる。あるいは、ブームと言っていいほどの追い風に乗って売り上げや利益を大きく伸ばす企業だってある。たとえば大ヒットゲームなどが出て、あるいはマスコミが取り上げてくれたといった理由で売り上げを大きく伸ばすが、こうした企業の中にはブームが去った途端に低迷する、あるいは大量の在庫を抱えて経営が危機に陥るケースも少なくない。


・「幸運だけで長い間、成長し続ける企業などありません」  

企業が成長し続けるためには優れた経営力や強い営業力、卓越した研究開発力などたくさんの要素が欠かせない。こうしたものがあって初めて企業は成長し続けることができるわけだが、こうした企業であっても毎年、増収増益を続けていくことができるとは限らない。


・企業は毎年、スムーズに伸びていくのではなく、実際には不定期で散発的な伸びを重

ねていくというのがフィッシャーの見方。
だからこそ、成長企業を見つけるうえでは長いスパンで考えることが欠かせない。


・「企業の成長は、一年単位で見るのではなく、たとえば五~六年をひとつの単位として判断するべきです」  

探すべきはパッと咲いてパッと散る人気企業ではない。5年、 10 年といったスパンで見た時に長く成長し続けるだけの力を持つ企業である。時に成長が鈍化することもあるかもしれないが、長く持ち続けることでこうした企業は確実に大きな利益を投資家にもたらしてくれる。

だからこそ、フィッシャーが言うように投資には「忍耐」が必要。


「聞き込み」には万全の準備が欠かせない


・「 15 のポイント」をチェックすることで初めて「超成長企業」を見つけることができる。


・「聞き込み」というのは関心を持った企業のお店を訪ねたり、取引先に話を聞いたり、企業の経営陣や社員に話を聞くことを指している。つまり、手に入る資料やレポートを読み込むだけではなく、実際に自分の目で見て、足で確認をするということ。


・聞き込みが必要だからと、いきなりその企業を訪ねて、経営陣の話を聞けばいいのかというと、もちろんそうではない。


・「その企業に投資をするうえで必要なすべての知識のうち少なくとも 50%を集めるまでは、決して経営者を訪ねるべきではない」。


・経営者に限ったことではないが、ビジネスの話をする際に相手が「話をするに足る人間」かどうかは大きな差になって表れる。相手がきちんとした下調べを行い、しっかりとした準備をしていると分かれば、実りのある会話が成り立つが、何を聞けばいいのか、何を話せばいいのかよく分からないままに訪ねてきた人間と貴重な時間を割いて話をするほどビジネスマンは暇ではない。  もし投資の判断をするために訪問をしようとするのなら、資料にある程度目を通し、周辺での聞き込みも行って、「何を聞きたいのか」を明確にしてから訪問することが必要。


・準備を欠いた聞き込みならやる意味がない。


・「たいていどんなことでも、いい加減にすませておけるようなことは、もともとする価値がない」。


・成長株を見つけることはたやすいことではない。しっかりとした準備を行い、適切な行動を取った人間は報酬を手にすることができるが、いい加減な行動ですませようとする人間は判断を誤って損失を被ることになる。「聞き込み」は決して「いい加減」にできるものではない。しっかりとした準備と丹念な会話を経て初めて投資に値する企業を見つけることができる。いい加減な調査やいい加減な聞き込みをするくらいなら、成長株投資など初めから手を出さない方がいい。


よく知りもしない会社への投資ほど危険なことはない


・フィッシャーのほかの投資原則も常識外。
一つは「分散投資の否定」であり、もう一つは「保有期間は永遠に:。


株式投資の世界でよく知られている原則の一つに「分散投資」がある。資金を運用する場合、一つに集中するのではなく、なるべく幅広く複数に投資して、リスクを低く抑える方がいいという考え方だ。たしかにそうだろう。どんな企業にも「絶対」がない以上、リスクを分散するためにも「分散投資をした方がいい」にはとても説得力が感じられる。フィッシャーも分散投資そのものを全否定しているわけではない。しかし、分散投資を意識するあまり、もう一つのリスクを忘れてはいけないと説いている。
「分散することなしに少数の銘柄に集中的に投資するよりも、分散投資にこだわるあまり、よく知りもしない会社に投資する方がはるかに危険なのだということを、投資顧問はおろか投資家本人さえ考えてもみない」。


・本当のリスクはどこにあるのか。

自分がよく分からない、しっかりと理解できていない会社に大切なお金を投資する方がはるかにリスクが高いのではないか、というのがフィッシャーの指摘。


・自分が本当に良く知り、やり方も良く知っていることをやる時のリスクはわずかなものだが、良く知らないことを準備不足のままやろうとすると、とても大きなリスクが生じることになる。

同様に自分がきちんと理解している、よく知っている会社への投資は他の人にとってはともかく、本人にしてみればリスクが小さいのに対し、会社名さえろくに言えないような、何をやっているかよく分からない会社への投資はリスクがとても大きくなる。

大切なのは自分がよく理解している、優良な会社を選んで投資することであり、そうした会社は大きな利益をもたらしてくれるのに対し、よく分からない何十もの会社への投資はリスクが高く、かつさしたる利益も生んではくれない。


・実際、フィッシャーのポートフォリオは 30 銘柄を超えたことはなく、晩年は6銘柄、3銘柄と減らしていった。


・たくさんの 籠 やたくさんの卵を持っていれば安心というわけではない。その卵が何の卵かを知らないままに抱え込むことほど不安なことはない。投資で最も大切なのは何の卵で、何が生まれ、どう育つかをしっかりと理解したうえで卵を買うこと。


株を売る理由は三つしかない


・一つ目の理由は「投資対象を選択する時点で判断が誤っていた」ケース。
成長株を見極めるのは決して簡単ではない。それだけに時には判断を誤り、しばらくしてその会社が実際には思っていたほど優れた条件を備えていなかったと気づくこともある。この際、禁物なのは間違いを認めたくないばかりに意地になって持ち続けるとか、そのうちに良くなるのではと勝手な期待を抱いて持ち続けることだ。「大切なのは自分の犯した間違いに早めに気づくこと」がフィッシャーからのアドバイス


・二つ目の理由は「当初は優れた会社であったものが時の経過とともにかつての輝きを失う」ケース。
会社というのは変化していくものだ。良くなっていくこともあれば、成功企業が停滞や失敗へと向かうこともある。経営者が代わるとか、研究開発への投資が鈍るとか、ブランド力が低下するとかいくらでも理由はある。フィッシャーによると、こうしたケースでは投資価値がなくなったということをしっかり認識してすぐに売る必要がある。


・三つ目の理由が「もっと有望な成長株に乗り換える」ケースだ。

株式市場にはみんながはやし立てる「有望株」が次々と現れる。思わず乗り換えたくなることも少なくないが、フィッシャーによると今持っている株にさしたる不満がないのなら、良さそうな株があるとしても、急いで売り払ってまで乗り換える理由はそれほど多くない。

新たな有望株が本物の成長株かどうかを慎重に検討する必要がある。


・しっかりとした準備を経て購入した株が時とともにしっかりと成長し続けているとすれば、その株を売る理由はごく 稀にしかない、というのがフィッシャーの考え方。


「今が売り時」という周囲の声に踊らされるな

 

・正しく選び抜いて買った株には、売り時などほぼ存在しない」というのがフィッシャーの考え方。

 

・本当に優れた企業は成長し続けることができる。もちろん毎年、高い成長ができるわけではなく、時に 躓き、鈍化することもあるだろうが、本当の意味で優れた企業であれば、何十年経とうが、あるいは100年経とうが長く優良企業であり続けることができる。

こうした優れた成長企業に「売り時」などないと言い切っている。


・「良い株を売るように勧める人の意見を真面目に聞く必要はありません」  

将来を確実に予測できるアナリストなど存在しない。そんな 曖昧 な予測に惑わされて、価値ある株を手放すなど馬鹿げている。フィッシャーは言う。 「一見したところ最も危険に思える道こそが実は最も安全な道であるのです。最も危険に見える安全な道とは、つまり投資を続けること。


・大切なのは景気動向など関係なしに、「この会社は安全なのだ」「この会社は今後も成長していくことができる」という確信が持てるかどうかだ。もしそうした確信があるのなら、市場で流される憶測や「売り時」を勧める声に惑わされることはない。人は何をしているか分からない時にリスクを負うことになるが、やっていることに確信があるならリスクなどないのも同然。


・進む道が危険かどうかを決めるのは周囲の声ではない。そこに「確信」があれば、道は安全なのである。ビジネスの挑戦は無謀な冒険ではない。確信なき挑戦は単なる無謀だが、確信があれば人は自信を持って前に進むことができる。


成功は楽をしていては手にできない


・フィッシャーが訪問するのは十分に下調べを行い、周辺への聞き込みを経て、相当絞り込まれた企業である。つまり、フィッシャーが訪問して話を聞く段階では「投資したい」と決断する可能性はかなり高くなっている。

それに対して、「調査をしてみたい」と考える企業に対する投資割合は、250社のうち1社くらいになる。そこから実際に調べる企業はもう少し絞り込まれ、最後に残るのが「2社ないしは2・5社」ということだ。たった1社を絞り込むためにフィッシャーはこれだけの労力を割いている。そのことに対する批判もあったという。たった1社を選ぶのにそんな時間はかけていられない、というものだ。フィッシャーはこう反論している。 「楽をしていては見つけられませんし、毎日見つかるわけでもありません」  フィッシャーの言う成長株とは高い成長を長く持続できる企業のことである。つまり、1社に投資すれば、そこから多くの利益を長く得続けることができる。それほどの利益をもたらしてくれる企業が証券会社から送られてくる冊子をいくつか読むだけで見つかるとしたら、「かえって道理に合わないのではないでしょうか」がフィッシャーの反論。


・それほどの企業を「自分で選ぶ」ためにはそれなりの労力が欠かせない。

「成功には 10%のインスピレーションと 90%のパースピレーション(汗) が必要だ」とはグーグルの創業者ラリー・ペイジの言葉だが、株式投資においても優れた企業を発掘するためにはインスピレーションとパースピレーションが必要。


フィッシャー流超成長株を見つけるための 15 のポイント

 

・フィッシャーが超成長株を見つけるうえで大切にしていたのが「 15 のポイント」。


1、その会社の製品やサービスには十分な市場があり、売り上げの大きな伸びが数年以上にわたって期待できるか。

2、その会社の経営陣は現在魅力のある製品ラインの成長性が衰えても、引き続き製品開発や製造過程改善を行って、可能な限り売り上げを増やしていく決意を持っているか。

3、その会社は規模と比較して効率的な研究開発を行っているか。

4、その会社には平均以上の販売体制があるか。

5、その会社は高い利益率を得ているか。

6、その会社は利益率を維持し、向上させるために何をしているか。

7、その会社の労使関係は良好か。

8、その会社は幹部との良い関係を築いているか。

9、その会社は経営を担う人材を育てているか。

10、その会社はコスト分析と会計管理をきちんと行っているか。

11、その会社には同業他社よりも優れている可能性を示唆する業界特有の要素があるか。

12、その会社は長期的な利益を見据えているか。

13、近い将来、その会社が成長するために株式発行による資金調達をした場合、株主の利益が希薄化されないか。

14、その会社の経営陣は好調な時は投資家に会社の状況を饒舌に語るのに、問題が起こったり期待が外れたりすると無口になっていないか。

15、その会社の経営陣は本当に誠実か。


・特に 15 番目の「経営陣の誠実さ」は重要で、もしこの点で疑問符がつくようなら、他のポイントの評価がどれほど高くても、投資はすべきではないというのがフィッシャーの考え方。

 

 

5.伝説のファンドマネジャー ピーター・リンチ

 

ゴルフ場で学んだ株式投資の魅力


・「株式投資は科学というより芸術であり、何でもはっきりと数量化したがるタイプの人間には向かない」。


・「投資家のなかにも、会社そのものを調べないでも、座って議論していると金融の女神がどの株が上がるか答えを教えてくれるように思っている人がたくさんいる」。


潰れかけのファンドのマネジャーに


・リンチによると初めて買った株というのは、将来の投資の土台になるという。リンチは大きく成長する「 10 倍株」への投資を勧めているが、最初の投資で大きな成長を経験したこともその一因なのだろうか。


4年間で1億ドルのファンドに


・「ファンドマネジャーと運動選手には共通点がある。ゆっくり育てられれば、良い成績を上げられるのだ」。


・リンチによると株式投資にあたって最も重要な経験の一つは、自らの足で調査を行うこと。


・自分が投資していない企業とのミーティングになるべく参加することで、「見逃していることは何か」を積極的にチェックした。企業との朝食、昼食、夕食、そしてミーティングの最後、リンチはいつもこんな質問をした。 「ライバル社の中ではどこが最も脅威となるか?」  

同業者が「ライバル」と認める企業はやはり投資対象となりやすかった。こうしたミーティングを繰り返しながらリンチは幅広い業界に精通し、それを基にマゼラン・ファンドの投資先を自分の選んだ銘柄に入れ替え、4年間で5倍、1億ドルのファンドへと成長させることができた。

投資銘柄は自分で調べ、自分で選ぶのがリンチのやり方。


投資理由は「小学生が分かる」レベルまで落とし込め


・「1分半という時間は銘柄の話をするのに十分である。もし(本の) 読者がある企業に投資しようと思っているのならば、小学生が分かる程度の言葉で、生徒が退屈にならないようなテンポで簡潔にその理由を述べられるようにすべきだろう」。


・「分かりやすさ」「簡潔さ」はリンチ流の投資で最も大切なことの一つ。


・日々の生活や仕事を通して、「この会社に投資したい」という会社を発見したならば、次にその会社について自分なりに調査することが必要だ。ちょうど電化製品を買うようにあれこれ調べて、ある程度の確信が持てたなら「買う」という決断をすればいい。


・大切なのは「自分自身が理解し、納得する」ということ。

間違っても「新聞に載っていたから」「知人が薦めてくれたから」「証券会社が推奨していたから」といった程度の理由で買ってはならないというのがリンチの考え方。


証券アナリストが伝える記事はプロの見方であり、それとは別に投資をする人自身がその会社や業界を知り、自分のレベルに合った「ストーリー」をつくることが大切。


・「株を実際に買う前には、その会社の魅力、成長性、弱点などを、もう一度二分間だけ自問自答してみるとよい。子どもにも理解してもらえるまでに理解がこなれていれば、その会社の株に対する投資準備は万全と言えるだろう」  

仕事でもそうだが、上司に指示されたものでも、そこに納得があるかないかで結果は大きく異なってくる。自分の頭で考え、納得したうえでの仕事には知恵も働くし、全力で取り組むことができるが、「上司に言われたから」というだけの納得のない仕事は中途半端になりやすい。そこに納得があればたとえ失敗しても得るものがあるが、納得のない仕事は上司や会社への不満だけを生むことになる。株式投資は自分の頭で考え、自分で納得し、自分の責任で行うものだ。「人気があるから」「証券会社が推奨しているから」だけの投資はやめた方がいい。投資を考えるなら、自分で調べ、自分でストーリーを組み立てる。それがあって初めてどんな局面でも「確信」を伴って持つか、売るかといった決断へとつながっていくことになる。

理由なき投資は失敗を招くだけなのである。


1800万ドルから140億ドルへ

 

・「成功の 99%は努力の賜物である」。


・毎年、200社以上の企業を訪問し、700社以上の報告書に目を通し、「自分が買いたい銘柄を買う」というのがリンチのやり方。


マチュアはプロの真似をせず「得意」を生かせばいい

 

・「第一のルールは、もはやプロの言うことに惑わされるな、ということである。投資の世界に長年携わって来て、私には普通の人がその頭を3%も働かせれば、平均的なウォール街のプロと同等あるいはそれ以上にうまく投資できることが分かってきたので

ある」。
もちろん投資の技術という点や情報量の豊富さから言えば、アマチュアがプロに勝つのは難しい。だからといって、アマチュアはプロの推奨する株を買い、プロの言う通りに売買していれば成功できるのかと言うと、そうではない。

「アマチュアが失敗するのはプロの真似をしようと後追いする時だけである」とリンチが指摘する通り、アマチュアがプロの成功を見て、「あの株が買いだ」「今こそ投資の時代だ」と後追いする時にはたいていブームは後半へと差し掛かっている。たしかにプロの言う通りにやれば、プロは 儲かるかもしれないが、アマチュアの儲けなどたかが知れている。失敗の可能性だって低くない。だからこそ、リンチはアマチュアはアマチュアらしく、アマチュアとしての強みを発揮すればいいと考えていた。


・「あなたは機関投資家のやり方を真似しなくてもよい。もし真似をすると、大きな成果を上げられない破目に陥る。だがアマチュアに徹しなくてもよい」  

マチュアはプロのようにたくさんの投資を日々行う必要もなければ、利益を挙げろと迫る上司もいない。もし投資に相応しい株がなければ、時機を待てばいい。しかし、それ以上に重要なのは、アマチュアは自分の身近で、また自分の職場などで起きている出来事からウォール街よりも早くチャンスに気づくことができるという点だ。さらにウォール街の住人以上の知識を持っていることもある。


・知識を持つ人は、それ以外の人々よりも本来有利な立場にあるにもかかわらず、よく知る企業ではなく、なぜか自分がよく知らない企業、よく知らない分野へと投資をしてしまう。  

マチュアはプロの真似をしてはならないし、プロの言う通りのやり方をする必要はない。アマチュアはアマチュアなりに自分の持てる知識、強みを生かして変化やチャンスに気づき、そこに投資対象を 見出していけばいい。投資に限ったことではないが、人は持てる強みを発揮してこそ成果に到達することができる。


ウォール街の情報よりも身近な情報に目を向けろ


・有望株を見つけるのはとんでもなく難しい。そんな思い込みにリンチははっきりと「ノー」と言っている。理由はアマチュアは「視点」さえ間違えなければ、プロに劣らない成績を挙げることができるから。


・有望株を見つけることに関しては時にウォール街のアナリストよりもアマチュアの方が有利であると指摘している。


・将来、成長する株は証券会社の推奨する株だけとは限らない。自分が暮らす街、日頃利用するお店、日常的に利用しているサービスの中にいくらでもあるというのがリンチの考え方であり、そうしたアマチュアの目で見た「これはすごいぞ」「このサービスはいいな」という発見の中に将来成長する株が案外あるものだとリンチは話している。


・「テンバガー( 10 倍上がる株) を見つけるには、まず自分の家の近くから始めることだ。裏庭になければ、商店街や、職場である。成功の最初の兆しは地域の至る所で見つけることができるはずだ」  

よくよく注意していれば、こうした気づき、こうしたチャンスに人は何度かは出くわすもの。


・チャンスを見つけたければまずは自分の周りから始めてみることだ。自分の周囲には案外と「将来の宝の山」があるかもしれない。身近にある宝を見過ごして、ウォール街が発信する宝を追いかけたところでウォール街の住人以上に成功するのは難しい。


投資にも家電を買うくらいの労力を費やそう

 

・特に大切なのはプロが気づくより早いアマチュアなりの気づき。


・ただちにその企業の株を買えばいいのかというと、もちろんそうではない。手がかりをつかんだなら、次にやるべきは調査。


・たいていの人は相手が株となると、途端に調査を怠ってしまう。


・「家を買うためには何カ月もかけるのに、えてして株式投資は数分間で決めてしまう。ほとんどの人は、株式投資より電子レンジを買うことのほうに、より多くの時間をかけるのである」。


・「株を買うときに、雑貨を買うときと同じくらいの努力をすればよいのである」  

株式投資には調査が欠かせない。大切なお金を使う以上、投資したいという企業に関してせめて電子レンジや洗濯機を買う時と同じように調べたり、見に行ったり、話を聞いたりという最低限の労力を惜しんではならない。


理解できない企業に投資するな


・「理解できない高級そうなものに大事な金を預けようというような不文律が、ウォール街にはあるようだ。近所にある会社なんかはつまらないから避けて、見たこともない商品を生産している会社を探せとでも言っているようだ」。


・弱みを克服するとか、理解できないものを理解しようと努力することは良い心がけではあるが、そこから得られる成果は案外と小さいものだ。それよりも持てる強みを生かし、理解できるものへの投資こそ行うべきである。そこから得られる成果は前者よりもはるかに大きいのだから。理解できない高級そうなものよりも単純で分かりやすいものを選ぶ。そこに成功への道がある。


最初に「本当に投資をするべきか?」を自問しよう


株式投資をするとなると、どの企業に投資するかを人はすぐに考え始めるが、リンチはそれ以前に「自分自身について知る」ということの大切さを指摘している。


・1、家を持っているか?

 2、お金が必要か?

 3、株で成功する資質があるか?


・「万一失敗したとしても、将来的に見て、毎日の生活に支障のない余裕資金の範囲で株式投資をすべきだ」  

これはウォール街に限らず、日本でも一般投資家にとっての鉄則となる。


株式投資で成功するためには決断力や忍耐力、パニックに陥ることなく冷静でいられることといったいくつもの資質が求められる。


株式投資をしたいと考えるなら、まず自問自答すべきである。もし株式投資に自分が相応しくない、向かないと考えるなら、株式投資のことなどきっぱりと忘れ去った方がいい。あなたに向いたお金を稼ぐ方法はきっと他にある。


「架空の損」と「本当の損」を混同するな


・「実際には何も損をしていないのにミスを犯したと思い込めば、本当に多額のお金を失うミスを犯すはめになるだろう」。


・リンチによると「ある企業に投資をしなかった」ということは実際に損をしているわけではないからミスではない。にもかかわらず、それをミスと思い込み、「2度とあんな損はしたくない」と躍起になって、たとえば「第二のインテルは?」などと探し始めると、人は時に大失敗をすることになる。


・人々が 囁く「まだ知られていないけれど、すごい株があるんだ」には落とし穴がつきまとう。


・「大きく儲けたい」「損をしたくない」と思い込むと、正体の見えにくい株に走ることになるが、リンチによると本当にすごいのなら「会社が実績を挙げてからでも間に合う」という。


・よほどの自信があればともかく、ほとんどの人にとって「疑わしきは待て」となる。投資の世界にはたしかに驚くほどの儲けを手にする人もいる。何だか自分一人が損をしたような気分になるが、それは「本当の損」ではない。投資では「架空の損」と「本当の損」を混同してはいけない。そんなことをすると「架空の損」ではない本当に大きな損を被ることになる。


投資の成否を決めるのは知能指数よりも性格、資質である


・「慢性的に損をする者と成功者との分かれ目は、知識や下調べとともに性格的な心構えにある場合が多い」。


株式投資家には「忍耐強さ、自主性、常識、苦痛についての耐久力、こだわりのない自由な思考力、利害に対して超然としていられる強さ、根気、謙虚さ、柔軟性、独自の調査をする意欲、失敗を認める強さ、パニックを無視する力」などが求められる。

一方、数学的な素養に関しては、「小学校四年生くらいの算数の知識で十分」となる。IQも天才レベルである必要はない。大切なのはIQの高さよりも、性格や資質の方だ。

たとえば冷静さを失いやすい性格だと何が起きるか。

「長期投資家を自負している人でも、株価が大きく下がると一転して短期投資家になり、大きな損か、せいぜい少しの益で売り離してしまう」持っている株の価格が急速に下がり始めると、持ち続けることの大切さを頭で理解していても、冷静さを失い、パニックになり、売ってしまうということだ。こうしたふらつき、信念のなさこそが大けがの元になる。


・「株式市場では、あやふやな意志の者はいけにえになり、強固な信念がないと生き残れない」。


・誰もが投資家になる必要はないのだから、向かなければ「株を持たない」と決めればいいし、性格や資質に自信があるなら投資をすればいい。


・「投資家の運命の決め手は、相場や選ぶ銘柄ではなく、投資家自身なのだ」。


・優柔不断な者は流れに 吞 み込まれ、安値での売却を余儀なくされる。株式投資で成功するためには自分の性格や資質を知り、自らのルールに忠実であることが必要。


株価に関心を持つ必要はないが


・投資をする際には「なぜその企業の株を買うのか」というストーリーを組み立てるのがリンチのやり方。


・気づき、調べ、そしてストーリーを組み立て、納得がいけばそこで初めて大切なお金を投資することになる。リンチの特徴は多くの投資家がやるように「時々刻々と変わる株価を追い続けろ」とは言っていない。


・リンチが行っているのは市場全体を読むことではない。

本当に良い会社、強い会社を探し、その会社の株価が割安なら投資するやり方。

なぜなら「良い会社」「強い会社」はどんな時でも生き残っていくことができるから。


・あまりに市場動向に 囚われすぎると、市場環境が最悪の時に、せっかくの良い会社の株を投げてしまう恐れがある。大切なのは市場の先行きを読むことではない。本当に良い会社、強い会社を探し、過度な期待を抱くことなく、しっかりと持ち続けること。


・長期に利益を最大限にするような戦略をとることで、人は結果として大きな利益を手にすることができる。


・刻々と変わる株価ではなく何を見るかというと企業そのものの動向だ。

「企業はダイナミックに動き、見通しも変わる。内容を知らなくて持っていてよい株など一つもない」  

企業というのは変化に適応することで生き残り、成長し続けていくことができる。投資を始めた時にはたしかに「良い企業」だったかもしれないが、取り巻く環境が変わり、企業の戦略が変わることでせっかくの強みを失うこともある。どんな大企業も変化に適応できないとまたたく間に「過去に繁栄した企業」になるのが今という時代。


・競争し続けている企業は環境を含めて常に変化をしている。だとすれば、ある時点で「良い企業」と判断した企業もその内容がいつ変わる可能性があるか分からないと考えるのは当然のこと。


・時折の点検を経ながら投資を続けることで投資家は長い目で見れば成功を手にすることができる。


・内容をよく知らず、理解できないままに持っていていい株などあり得ない。株価を日々追う必要はないが、刻々と変化する企業の姿は時折確認しなければならないというのがピーター・リンチからの投資家へのアドバイス

 

 

6.オマハの賢人 ウォーレン・バフェット


「稼ぐ」「貯める」から「大きく殖やす」


・バフェットによると、何がビジネスの成功に関係しているかというと、それは学業成績でも家柄でも、ビジネス・スクールに通った経験でもなく、ビジネスを始めた年齢が早いかどうか。


・バフェットが親から受け継いだのは「使う金は入る金よりも少なく」という考え方だ。それは生涯変わることのない考え方だが、バフェットの場合はそこに「複利式の考え方」が加わったことで「大きく殖やす」ことができた。


初めての投資で学んだ教訓


・多くの投資家が指摘しているように「知らない」ことは最大のリスクの一つ。


・1、買った時の株価に拘泥してはいけない。

 2、よく考えないで慌てて小さな利益を得ようとしてはいけない。

 3、他人のお金を使って投資してはいけない。


・自分のお金なら下がっても「待つ」ことができるが、他人のお金に責任を負っているとそうはいかない。それでも「自分がよく知る」企業であれば、たとえ株価が下がっても「自信を持って待つ」こともできるが、よく知らない企業だと、それこそ「株価が下がっているから」「みんなが売っているから」という理由で慌てて売ることになりかねない。


・市場の人気に左右されて株価は上がったり下がったりを繰り返すが、有能な経営者に率いられた競争力の事業であれば、その企業の株価はやがて実力に見合ったものになる。


株式投資において大切なのは日々の株価の変動に一喜一憂することではなく、投資する企業を「よく知る」ことと、「信じて待つ」こと。


原則にはとことん忠実であれ


・バフェットの特徴は原則を見つけることが上手で、かつ 一旦 見つけた原則にはとことん忠実であること。


・「第一の原則は、損をしないこと。第二の原則は、第一の原則を忘れないこと」。


・損を取り返す方法は一つではない。投資で損失を出したからと、投資で取り返そうと冷静さを失うとたいていはさらに損失を増やすことになる。損失を出さないためにはしっかりとした分析を行い、安全域を考慮する。こうした基本原則を忠実に守り抜くことができれば、投資でまずまずの成果を挙げることができるというのがバフェットの考え方。


・経営理念をないがしろにした企業がやがておかしくなるように、投資で成功するためには自らのルールや投資哲学にとことん忠実であり続けることが必要。


生涯の師ベンジャミン・グレアムとの出会い


・グレアムが1949年に刊行した『賢明なる投資家』に出合った時のバフェットは「まるで神を見つけたみたいだった」というほどの衝撃を受けている。バフェットが生涯大切にしているのは「自分が好きなことをとびきり上手にやる」ことと、「尊敬できる人々と働く」ということ。


・尊敬できる人の所で働くことができれば、自分の能力も発揮できるし、成長もできる。それ以外の履歴書を飾り立てるための就職は意味がないというのがバフェットの考え方。


グレアムの基本原則をベースに独自の投資原則をつくりあげる


・グレアムは投資対象の企業の経営陣に会うとか、実地に調査することはせず、ひたすらに資料に目を通していた。もちろんこの資料を詳細に分析することこそグレアムが投資の世界にもたらした革命の一つだが、資料を分析して「シケモク」とも呼ばれる割安株を探すだけでは限界があるのもたしか。


・グレアムはやりすぎではないかというほどの分散投資を行っており、バフェットはグレアムの理論をベースにしながらも徐々に独自のやり方を身に付け始めてもいた。


・グレアム、そしてバフェットの原則。
1、株券ではなく会社を買う。

2、安全域を確保する。

3、市場の変動に一喜一憂せず、長期保有


・何よりバフェットがグレアムの影響を受けたのは投資というものが「知的な行為」であり、自分がとことん調べつくして納得したなら、誰が何を言おうと、市場がどう反応しようと、自分が正しいという考え方。

 

・たいていの人はどんなによく考えた決断であっても、周囲の反対があったり、自分以外の大半の人が逆の方向に進めば不安になったりするものだが、バフェットもグレアムも正しさを「他者」ではなく「自分」の中に求めている。

 

・バフェットも認めているようにグレアムの理論が教えてくれるのは「健全な投資」。


・「グレアムが説いていたのは、あくまで健全な投資です。せっかちにならずに健全な投資を追求すれば、誰でも大きな資産を築けると私は考えています。少なくとも貧乏になることはありません」。


自力で考えない限り投資では成功できない


・誰かの真似をして、あるいは誰かのあとをついていくのは楽だし簡単だが、もし前を行く人が間違っていたらどうなるのか? 

独力で考えない限り、投資では成功できないというのがバフェットの教訓。


・バフェットはたっぷりの資金を持っている時にたっぷりの内部情報が入ってきたらまたたく間に破産すると言うほど、ウォール街的な内部情報を嫌っている。


・バフェットにとって大切なのはムーディーズやスタンダード&プアーズの格付けでも、証券会社の推奨レポートでも、内部情報でもなかった。


・「独力で考えなかったら、投資では成功しない。それに、正しいとか間違っているとかいうことは、他人が賛成するかどうかとは関係ない。事実と根拠が正しければ正しい。結局はそれが肝心なんだ」。


・集団の中から飛び抜けた投資実績は生まれてこない。


ウォール街は誤った投資判断と愚かな横並び意識の 巣窟 だ。ある企業が株価を上げると誰もが追随し、下がり始めると確たる根拠もなしに誰もが慌てて売ろうとする。こうした集団の中にいては独自の判断を貫くのは難しい。


絶対の確信があればシケモクである必要もないし分散投資の必要もない


・グレアム流の割安株というよりは将来の成長に期待するやり方、そして分散投資の原則を無視するという点でバフェットのこの時の決断はグレアム流からかけ離れたものだったが、とことん調べつくし、自力で考えるという点ではいかにもグレアム流。

 

まずまずの企業を素晴らしい価格で買うよりも素晴らしい企業をまずまずの価格で

 

・困難なビジネスを立て直す難しさを知り、それよりも強いブランド力を持つ優良企業をそれなりの価格で買う方が、はるかにメリットは大きいと考えるようになっている。

 

・バフェットは安い値段で悪い企業を買うよりも、手頃な値段で良い企業を買うべきだと考えるようになった。


・現在、バフェットが求めているのは「長期的な競争力があり、経営陣が信頼でき、納得できる値段で買える会社」。


・投資すべき企業の基準は何か。

明確な基準を持ち、その基準を守り抜くことができるかどうかが投資における成功を左右する。


4億ドルのものを8000万ドルで買う時のリスクはゼロ


・グレアムはあくまでも帳簿上での安全域を重視したが、バフェットはその企業の持つブランド価値や競争力を含めての資産価値と株価の比較の中で安全域をとらえている。


・競争力を持ち、成長が期待でき、優れた経営者が率いる企業、そうした企業を納得のいく価格で買える時には即座に行動を起こすことにしている。


・「リスクとは自分が何をやっているかよくわからない時に起こるものです」。


・バフェットにとって肝心なのは優れた企業の「価値と価格に大きな差がある」こと。


・まず価値を測る。そして株価を見て時価総額を計算すればいい。その差額が大きければ誰が何と言おうとも即座に行動を起こす。差額が大きければ、そこにリスクはほとんどない。これがバフェットの言う「安全域」。


・「根底をなす事業を大まかに概算できる知識がなければなりません。ただしぎりぎりで見積もるべきではありません。(…)価値が八三〇〇万ドルの事業を八〇〇〇万ドルで買おうとしてはいけません。大きな余裕をみることが肝要なのです。三万ポンドの負荷に耐えると業者が主張する橋が建造されたとしても、その橋を走行するであろうトラックはせいぜい一万ポンドです。これと同じ原則が投資にも当てはまるのです」。


・安全域が大きければ大きいほど、投資が失敗によって帳消しになる可能性は低くなる。
反対に安全域が小さければ、リスクは当然のように大きくなる。


能力の輪を知り、能力の輪を守り抜け


・投資におけるリスクを最小に抑えるためにはどんな事業を行い、どんな経営者が経営をしていて、そのブランド価値、資産価値はどのくらいかを大まかにでもつかむ必要がある。詳細に知れば知るほどリスクは小さくなり、分からないままの投資にはいつだって大きなリスクがつきまとう。


・バフェットが重視しているのが「よく分かる」分野への投資であり、それ以外の分野への投資は行っていない。これがバフェットの言う「能力の輪」であり、能力の輪をどう守るかこそが投資の成功に直結すると考えている。


・投資の世界には次々と新しい業界が生まれ、新しい企業が誕生する。なかにはIT関連企業のように、またたく間に世界的企業へと急成長する企業だって少なくない。ウォール街の人々はこうした業界や企業を急成長する銘柄、大儲けできる銘柄としてはやし立てるわけだが、バフェットはこうした声に乗ることは決してない。


・近年はIBMやアップルにも投資しているようにバフェットはテクノロジー業界が分からないわけではないが、それ以上によく分かっている業界がいくつもバフェットにはある。その業界の企業をよく知り、ある企業の財務諸表を見ただけでその価値を大まかに計算するほどの力があれば、中途半端にしか知らない業界に手を出すよりも、最も得意な業界、よく知る業界に特化していく方がいいに決まっている。


・市場には新しい業界や新しい企業が次々と現れる。こうした企業を追いかける人もたしかにいるが、バフェットはこうしたやり方は否定している。

「最も重要なのは、自分の能力の輪をどれだけ大きくするかではなく、その輪の境界をどこまで厳密に決められるかです。自分の輪がカバーする範囲を正確に把握していれば、投資は成功します」。


・大切なのは能力の輪の広さではない。中途半端に能力の輪が広い人よりも、狭いけれどもその分野や企業に関しては経営陣よりも豊富な知識を持っているとすれば、そちらの方が投資でははるかに有利に働くことになる。投資で成功したければ、一業種ずつコツコツと勉強し、ある程度深い知識を持つ業種をいくつか持つことだ。そのうえでよく知らない業種には目もくれず、本当によく知る業種に特化して優れた企業を選び投資をすることだ。そうすれば能力の輪は広いが境界が曖昧な人に比べ、ずっと豊かになれるというのがバフェットの考え方。


投資の世界には見送りの三振はない。絶好球だけを打てばいい


・もし自分の能力の輪の中に目ぼしい投資先が見つからなかった時、どうすればいいのだろうか。「投資先がない」わけではない。「能力の輪の中に投資先がない」のである。たいていの人は焦り、能力の輪の外にある企業であっても、あるいは能力の輪の中にある多少「高いなあ」と思うような企業であっても投資をしたいという誘惑にかられるのではないだろうか。


・「投資の世界には、見送りの三振がありません。投資家は、バットを持ってバッターボックスに立ちます。すると、市場という名のピッチャーがボールをど真ん中に投げ込んできます。たとえば、『ゼネラル・モーターズ株を 47 ドルでどうだ』という感じで投げてくるのです。もし 47 ドルで買う決心がつかなければ、バッターはそのチャンスを見送ります。野球であれば、ここで審判が『ストライク』と言いますが、投資の世界では誰も言いません。投資家がストライクを取られるのは、空振りした時だけなのです」。


・投資家は自分のストライクゾーンに来た絶好球だけを打てばいい。ウォール街のストライクゾーンと投資家自身のストライクゾーンが違っていたって一向に構わない。みんなが「絶好球じゃないか、なんで振らないんだ」と 野次ったとしても、自分のストライクゾーン、自分の絶好球でなければ、平然と見送ればいい。バフェットは自分が納得しなければ、決してバットを振ることはなかったし、無理に能力の輪を広げるようなこともしなかった。


・人は日々絶え間なく正しい判断ができるわけではない。そんな無理をしなくとも、時折優れた判断をすれば成功を手にすることができる。投資で成功するためには、投資すべき対象がない時はじっと待つ勇気が必要だ。そして好機が到来、自分のストライクゾーンに絶好球が投げ込まれた時には即座に行動すればいい。間違っても悪球に無理に手を出して三振するような愚を犯してはならない。


保有期間は「永久に」でいい


・「辛抱強さや冷静さは、知能指数よりも重要かもしれないと私は思っています」。


・株式市場は時に集団ヒステリーに襲われる。熱気に押されて勝負に出ることもあれば、弱気に負けて売り急ぐこともある。周りのみんなが「儲かった」とはやし立てれば、よく知らないけれども「つい」買ってしまうこともある。
そうならないためにも投資家には冷静さと辛抱強さが欠かせない。バフェットが「絶好球を待て」と言うのも一つの辛抱なら、バフェットのように長く、時に「永久に」株を持ち続けるためにも辛抱が必要。


・バフェットの考える「優れた企業」とは、「今後 25 年から 30 年、偉大であり続ける企業」のこと。


・市場ではさまざまなことが起きる。バブル崩壊もあれば、株価の急騰や急落もある。しかし、真に偉大な企業、人々の暮らしにとってなくてはならないものをつくっている企業はずっと成長し続けることができる。こうした企業であれば、毎日の株価がどう動こうが気にすることなく持ち続けていても大丈夫。


・「喜んで 10 年間株を持ち続ける気持ちがないのなら、たった 10 分間でも株を持とうなどと考えるべきですらないのです」。


・投資の世界では株価の変動はもちろんのこと、魅力的な株の出現もある。つい売りたいとか、買い替えたいという誘惑にかられることも少なくないが、バフェットのような長く持ち続ける信念の持ち主こそが真の成功者になることができる。投資に限らず、すぐに揺れ動くような信念は信念とも呼べない。


お金は稼ぐよりもどう使うかが難しい

 

・投資家はどれほどのお金を稼いだかで評価されることが多いが、稼いだお金をどう使うかが最終的にその人の評価を決めることになる。お金は稼ぐのも難しいが、どう使うかはさらに難しい。

 

 

 7.バフェットの師 ベンジャミン・グレアム


「バフェットの師」 ベンジャミン・グレアム


・グレアムの教えには三つのポイントがあり、その三つは「健全な投資の基礎であり、向こう100年間そうであり続ける」と考えているから。
1、株式は単なる紙切れではなく、その企業の一部である。

2、市場の変動を敵視せず、親しく付き合う。うねりに乗るのではなく、当初の方針を愚直に貫く。

3、安全域を考慮する。


・こうした原則をしっかりと守れば「誰でも大きな資産を築けるし、少なくとも貧乏になることはない」というのがバフェットの見方。


緻密な分析を行ったうえでやるのが投資、それ以外は投機である


・「投資とは、詳細な分析に基づき、元本の證券性を確保しながら、適正な収益を得るような行動である。これらの条件を満たさない行動はすなわち投機である」。


・グレアムは債券か株式かといった「何を買うか」ではなく、「どのようにして選ぶのか」こそが大切であり、きちんとした分析を行ったうえでなら株式投資も「投機」ではなく立派な「投資」であり、分析を伴わない資産も収益力もない企業の債券を買うことはただの「投機」であると言い切っている。


・グレアムの投資手法は企業の将来の成長性や競争力といった完全には予測できないものに頼るのではなく、公表された数字だけを詳細に分析したうえで、たとえば「1ドルのものを 40 セントで買う」というやり方。


・今日的には成長性やブランド力の無視とも言えるが、むしろ数字の詳細な分析が軽視されていた時代にこうしたやり方を持ち込んだことはとても革命的なことだった。


投資と投機を決して混同するな


・「投資とは、詳細な分析に基づいたものであり、元本の安全性を守りつつ、かつ適正な収益を得るような行動を指す。そしてこの条件を満たさない売買を、投機的行動であるという」。


・グレアムの特徴の一つは「投資」と「投機」、「投資家」と「投機家」をはっきりと分けて考えるところ。


・一般の人が投機的なやり方で利益を挙げるのは難しく、堅実に利益を挙げたいと考えるなら投機と投資を明確に区別し、投機家ではなく投資家にならなければならないというのがグレアムの考え方。


・「間違っても投資資金と投機資金を同じ口座で運用してはならないし、頭の中で混同してもいけない」。


・「投機」と「投資」を区別することは 些細 なことのようで実はとても大きな差になって表れる。一方の投機家は一時的に驚くほどの成功を収めることはあっても、山谷の落差が大きな人生を送り、悲劇的な結末を迎えることも少なくない。


投資とは株券ではなく企業を所有すること

 

・「ウォール街で株式を売買する有能な実業家の多くが、自分の事業で成功するに至った原理原則を全く無視して投資行為に挑もうとするのには、ただ驚くばかりである」  バフェットやグレアムにとって投資とは単に株券を売買することではなく、企業の部分所有者となることを意味している。つまり、投資をすることと、事業を行うことは同じ行為であるにもかかわらず、ビジネスの成功者たちがその持てる能力を生かすどころか、成功の条件さえ無視しているというのがグレアムには信じられないことだった。


・グレアムの言う事業原則の第一は「自分が何をしているのかを知れ─己の事業を知れ」だ。これはビジネスを行う人間なら、経営者でなくとも、普通のビジネスマンにとっても当然のことだ。

ビジネスで成功したいのなら自分が最もよく知ること、最も得意とすることを選び、全力で努力をするはずだ。自分が良く知らない、強みのないビジネスにあえて挑戦しようという人などいないはずだが、こと投資に関してはこうした原則を平気で無視してしまう。


・事業で成功するためには守るべき原理原則があるように、投資で成功するためにも原理原則を守る必要がある。そしてそれは特殊なものではなく、事業を運営するのと同じことなのである。投資で成功するためにはまずはその企業をよく知ることだ。自分がしっかりと理解できる、強みを持つ分野の企業を投資先に選ぶ。そうすれば訳の分からない企業に投資するよりもはるかに好ましい結果が得られるに違いない。


投資する企業の経営者は信頼に足る人物なのか

 

・投資とは自分の大切なお金をある企業に預けることであり、お金を預ける以上、その相手は信頼に足る相手でなければならない。 「相手」とはその企業を経営する経営者であり、あるいは資金の運用を任せる証券会社などを指している。


・「決して自分の事業を他人任せにしてはならない。他人に任せるのであれば、

①彼のやることに対して注意を怠らず、かつ十分に理解することができ、

②その人の誠実さと能力に絶対の信頼がおけるという並々ならぬ確証が持てなければならない」。


・「優れた経営者は望ましい平均市場価格を作り出し、無能な経営者は好ましくない株価を招くのである」。


・お金を預ける以上、証券会社やヘッジファンドが信頼に足るかどうかも当然ポイントになる。経営者に限ったことではないが、仕事を誰かに任せる以上、その人の能力はもちろんのこと人間性においても信頼できるかどうかはとても大きなポイントになる。できるかできないか分からない人間に何かを任せるなどできるはずがない。それは投資においても同様であり、自分のお金を預ける以上、そこに注意、理解、誠実さと能力への信頼は絶対に欠くことができない。


・投資で成功したいのなら、自分が経営者あるいは上司であれば当然するであろう注意を決して欠いてはならない。


真の投資家にとって株を売る理由はあまりない

 

・企業を所有する以上、日々の株価など気にすることなくできるだけ長く保有すべき。


・もっともウォール街の人々から見れば長期保有は決して好ましいことではない。できるなら日々変動する株価を見ながら、みんなが持っている株を短期で売買してくれた方がビジネスとしてはいいに決まっている。


・「買った株の値が上がるまで一年待つなどという考えは、早々に利益を挙げたい投機家には我慢ならないことなのだ。かたや投資家は、一年程度ならば何とも思わず持ってしまう」。


・投資を行うにあたり、保有期間をどう考えるかは「何を買うか」に大きな影響を与えることになる。相場を読み、株価の動きを追いながら、短期間で売却するか、それとも可能な限り長く持ち続けたいか。


・真の投資家が持ち株を売らざるを得ない状況はそれほど多くないという。そしてそうした状況にならない限りは市場価格の動きにいちいち反応して売ったり、買ったりする必要はない。自分にとって最も好ましい条件の時に売ればいいだけのことであり、急なお金を必要としないのなら誰が何と言おうと持ち続けても一向に構わない。


チャンスの時以外は株式市場のことなど忘れてしまえ


・「思慮深い投資家は、日々の、あるいは毎月の株価変動によって自分の金が増減するものではないと考えているだろう」。


株式投資において株価の変動は避けて通れない。上がることもあれば、当然下がることだってある。但し、それはあくまでも計算上の増減であり、手元にあるお金が日々殖えたり減ったりしているわけではない。だからこそこうした日々の変動を気にすることなく、「企業の部分所有者」として動じることなく投資家としての姿勢を貫くことが大切


・「真の投資家にとって、株価変動の持つ重大な意味はひとつしかない。相場が急落すれば抜け目なく株を買い付け、急騰すれば売却するチャンスなのだ。それ以外のときには株式市場のことなど忘れ、受け取る配当金と企業業績に注意を注いでいた方が良い結果につながるものなのである」。


・投資家であるためには日々の株価変動など無視して、真のチャンスと呼べる時にだけ株価を利用すればよい。それが長い目で見れば利益をもたらすことになる。


投資には「真の安全域」が欠かせない

 

・元本を保全するためにはたとえ投資した企業が経営不振に陥ったとしても、元本とある程度の利益を確保できることが必要だというのがグレアムの考え方。


・債券の安全

「一〇〇〇万ドルの負債がある企業の資産価値が三〇〇〇万ドルあるとすれば、その価値の三分の二が減少するまでは──少なくとも理論上は──債券保有者が損失を被ることはない」。


・株式の安全

「ある企業が普通株だけしか発行しておらず、その時価総額が株式市場の低迷期において、企業の資産および収益力からみて安全に発行できる社債の金額を下回っている場合である」。


・この「安全域」という考え方に異を挟む人はそうはいない。誰しも投資を行う時には、「この投資は絶対安全だ」「この投資は確実に 儲かる」と「安全」や「確実」を信じて行っているのだから。しかし、グレアムはこうした「主観的な判断」は真の安全域ではないと話している。


・「真の投資には安全域が不可欠だということである。そして真の安全域とは、数字や筋道の立った論証、また実際の経験に照らして証明可能なものでなくてはならない」。


・「安全域」は、主観的な判断や希望などではなく、「統計データから得られる単純かつ明確な数学的論証に基礎を置いている」ものでなければならなかった。投資で安定して利益を挙げるためには安全域が欠かせない。安全域には裏付けが必要だ。間違っても「有名人のお墨付き」とか「証券会社が上がると言っているから」といった 曖昧 な希望的観測を「安全域」と誤解したり言い張ったりしてはならない。


株価は気にするな、しかし企業の業績には関心を持て


・グレアムの手法は財務諸表などを詳細に分析して持てる資産などに比べて時価総額が安い企業を見つけ出し投資をすること。


・分析し、選び抜いた企業であればあとはグレアムが言うように日々の株価の動きなど無視して長く保有していれば、期待通りの利益が得られるのだろうか。

もちろんそうではない。


・「ほとんどの企業は長年の間にその特徴や質が変化するものであり、以前より良くなる場合もあるが、大抵は悪い方へ向かうものだということである」  

企業に限ったことではないが、かつて強かった者が強くあり続けるのはとても難しい。企業が変化適応業である以上、時代の変化、環境の変化への対応が遅れれば急速に力を失うことになる。あるいは、経営者が誤ったビジョンを打ち出すことでせっかくの強さを失い、平凡な企業に成り下がるというのもよくあること。


・「投資家は自分の手持ち銘柄に関して、その企業の業績を厳重に見張る必要はないが、折に触れて厳しい目で業績チェックをしなければならない」。


・投資に限ったことではないが、ものごとはスタートをするだけではダメで、プロセスを管理することで初めて良い結果が生まれることになる。株価は市場で決まるものだが、基本的には企業業績が最も重要な 鍵 を握っている。日々変わる株価を追い続ける必要はないが、株価の裏付けとなる業績については時にチェックが必要だ。ビジョンの変更はないか、経営陣の力量はどうか、新製品開発は進んでいるかどうかなどを折に触れてチェックする。それは実は株価を追う以上に大切なこと。


成功には正しい原則とやり通す人格が欠かせない


・「私は少しの技術と単純な原則があれば、この仕事(投資) で成功できると考えています。重要なのは大枠として正しい原則を持ち、それをやり通す人格を備えることなのです」。


・「投機行為をするなと口で言うのは容易であるが、困難なのは読者がその忠告を守ることだ」  

たしかに株価が大きく上昇し、資産が膨らみ、計算上の利益が増えれば、つい余計なことを考えたくなるもの。
「株価がこれだけ上がっているのだから売ってお金を手にしたいものだ」

「これだけ株価が上がるんだったら、なんであの時にもっと買わなかったんだろう」  

こうした思いが膨らむと、株価の日々の変動に合わせて売り買いをするとか、値上がりを期待して大きな買いに出るといった、グレアム流の言い方をすれば「投機的行為」に走ることになる。グレアムはこうした行為を全否定はしていない。常に投資家であり続けるのは難しい。だからこそこうアドバイスをしている。

「投機をしたければ、最終的には恐らくカネを失うであろうことを覚悟し、すべてを承知の上でやりなさい。そして必ずリスクにさらす金額の上限を定め、投資プランとは全く別個のものとして取り組むのである」。


・自らに課した原則やルールを守り続けるのは難しい。バフェットのように守り続けることができれば大きな成功を手にすることができるが、もしどうしてもその自信がないのなら、グレアムの言うように投資とは「別個のもの」として取り組むのが賢明というもの。


・「知っている」と「実行している」の間にはとても大きな溝がある。「何もしない」と「やり続ける」の間にも大きな溝がある。だとすればせめて実行することの難しさを承知したうえで、実行への努力や工夫を怠らないこと。


正しさを決めるのは自分、みんなと同じかどうかは関係ない

 

・グレアムはウォール街で成功するための条件を二つ挙げている。

「一つは正しく考えること、もう一つは独力で考えることです」。


・投資に限ったことではないが、成功者は時に「みんなの声」に逆らってでも「内なる声」に忠実に前に進むことで成果を手にしている。時に孤独に耐え、信念のみを頼りに進む勇気が求められる。


・「本当の投資家であれば、自分が群衆とは全く逆の売買をしていると考えることに充足感を覚えるものなのである」。


・もちろん「何でも逆」にやればいいというわけではない。みんなの声に逆らうためには確固たる自信が必要になる。

 

・「みんながあなたと正反対の考えであろうとも、そのこととあなたの判断の正否とは無関係だ。あなたのデータやそれに基づく判断が正しければ、あなたは正しいのである」  何かをやる時に「みんなの声」が絶対に正しいとは限らない。きちんとした分析をして、自分が計算ミス、判断ミスをしていないということを確信したなら、たとえ相場が下落していてもそれは証券市場の一時的な気まぐれとして無視しても構わない。反対に資金と勇気があるのなら、みんなの声を逆手に取って行動すれば大きな利益を手にすることができるというのがグレアムの考え方。


・大切なのは安易にみんなの声に従うのではなく、確信が持てるまでしっかりと分析すること。


・「その判断が正しいと確信したのなら、たとえ他人がそれに対して躊躇したり、異なった考えを持っていようが、自分の判断に従って行動しなさい」というグレアムの言葉は投資のみならず人生で成功を手にするうえで最も大切な教え。


優れた知性と技術は「正しく使って」こそ価値を持つ


・利益を得るためには「最大限の知性と技術を駆使する」ことが必要だというのがグレアムの考え方。


・「継続的に平均以上の収益を挙げたいなら、投資家は以下の方針に従うしかない。その方針とは、

①本質的に安全で将来性のあることをする、

ウォール街では一般的ではないことをする──の二つである」。


・投機的なやり方を推奨するウォール街的な考え方ではなく、ウォール街とは逆の賢明な投資家になる。そうすれば安定して平均以上の収益を挙げることができるというのがグレアムの考え方。


グレアム 62 歳での引退


・「私たちにとって、グレアムの著書はバイブルである。そしてウォーレン(バフェット) は、自身の資産運用を通じてこれを改訂した。言うなれば、新約聖書を書いたようなものだ」。

 

 

 

 以上。これらの知識を活かして、偉大な投資家たちのような長期投資を目指してみてはいかがだろうか。

 

 

 

 

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