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Book Memories vol.6 : 初心者でも勝率99%の株ポートフォリオ戦略

Theme: 金融

Time: 約30分

Difficulty:

 

 

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  vol.1とvol.2の記事で述べたように、

 

Book Memories vol.1 : ビジネスエリートになるための 教養としての投資 奥野一成 - BobY2

 

Book Memories vol.2 : 元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法 - BobY2

 

保守的な日本人は、「投資」という言葉に対してあまり親しいイメージを持っていない。それはおそらく、「投資」することは難しく、損をすることの方が多いと考えているからだ。

 

 しかし、実際は正しい長期の投資(ポートフォリオ運用)を行うことで、その勝率は99%にもなるものなのである。

投資においては「時間」を味方に付けることが大事であり、短期ではリスクがリターンを上回るという関係が、10年、20年、30年と時を経ることによって、逆転する。

これは数学的に証明されていることであり、リスクは期間の平方根に比例するのに対し、リターンは期間に比例するということで表されている。

200万円以上のポートフォリオを組んで運用を行うことで、20年で9~16倍ものリターンが見込むことができる。

 

 NASDAQやS&P500、日経平均投資信託、個別銘柄を組み合わせながら、一つのポートフォリオというチームを作り、長年にわたって運用する。それぞれが悪いところを補ってリスクを抑えながら、最大限のリターンを目指す。

それはスポーツチームの監督として長年にわたってチームをマネジメントすることと等しいと思う。経済状況を見ながら、適宜、銘柄(選手)や配分を修正していく。短期の激しい相場変動に惑わされることなく運用を続けていくことで、損することはなく、安心感を持ちながら楽しんで投資することができるのだ。

 

 

 また、投資というものは、勝ち負けを決めるゼロサムゲームでは決してなく、経済を応援するものである。興味のある分野の専門知識はなく、またそれを職にしていない場合でも、投資によってその分野や企業を応援することができ、人類の発展に寄与することができる素晴らしいものだ。

例えば僕の場合、理系の学部に所属しているわけではないが、多くの人がそうであるように、小さいころから宇宙開発や深海探求といったことに興味を持っていたし、今後の人類の発展に寄与する分野に携わりたいという気持ちをもっていたため、投資という形でその夢を実現できることができるのだ。

 

 投資家というものは決して億万長者だけを意味するものではなく、誰でもなれる、小額から始められる身近なことでものであり、投資という様々な面で大きな意味を持つ世界に簡単に足を踏み入れることができるため、日頃から勉強し、正しい運用方法を学ぶことが今後の人生において非常に大事だと感じる。

 

 

今回そのようなことを学んだのは、

 

初心者でも勝率99%の株ポートフォリオ戦略

 

山本潤 かんき出版

 

という本。

 

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link below  ↓

 

 自分なりに大事だと思ったところをまとめたので、興味のある方は読んでいただければ、と思う。

 

 

 特に本を読んだ上で自分なりの解釈だったり派生させたことを書いたりしているわけではないが、一種の教科書的な感じで大事な点をさくっとまとめ、自分の知識の幅を広げていくためのアウトプットのツールとして使うことにしている。また記事の最初にVocabs欄を設け、キーワードや専門用語などを載せているので知識を効率的に広げていただきたい。読者の方々にはもし知らないことがあれば身につけていただきたいし、ただ要約しているだけなので、よくわからない点があれば自ら購入して読んでいただくなりと、自由に使っていただければと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 [Vocabs]

 

 


信用取引:「借金をして株を買うこと」。

証券会社から自らの資産額を超えたお金を借りて投資することができる。

運が悪い場合、元本を全て失うだけではなく、借金まで背負うことになる。
信用取引では100万円の現金があれば、証券会社が元手の2倍となる200万円まで融資してくれる。


現物取引:100万円の現金がある場合、最大でも100万円の株しか買うことができない。
現物取引で最悪のケースとは、株が紙切れになってしまうこと。

しかし、現物取引でそれ以上のリスクを負うことはない(株式投資有限責任)。

 


集中投資:投資額の大部分を1銘柄に投資すること。

 

回転売買:年に何回も資産がごっそりと入れ替わる投資手法。
信用取引や集中投資より危険度は低い。
イメージとしてはデイトレードがそれに当てはまる。「買っては売り、売っては買う」を繰り返す。
手数料等がかさみ、結果として資産を損なう可能性が高い。
回転が多いほど資産が減る可能性が高いからおすすめできない。


1回転:各1回ずつの売買で資産を全て入れ替えること。

 

ディーラー:証券会社の社員。
会社が保有する余裕資金(自己ポジション) をトレーディングして増やすことを職務としている。

 

売買スプレッド:マーケットに絶えずある、売りと買いの間の0・1%程度の「隙間」。

10 回の売買をすれば1%の資金が失われてしまう、つまり、回転売買をすると大切な顧客の資産が失われてしまう。

 

空売り保有していない株を証券会社から借りて売り、株価が下がったら買い戻して株を返済し、利益を得る売買方法。

 

一様分布:人間が管理できることや人間がシステムを提供しているものについてリスクを計量する。

 

ポアソン:普段はあまり発現しないが、一旦発現すると大惨事になるような確率。
確率が過去の行動によって大きく変わらない。

いくら待っても期待値に影響を与えない。


フィード・イン・タリフFIT):feed-in tariff。

自然エネルギーから作った電力の買取価格を法律で定める方式の助成制度のこと。

固定価格買い取り制度。

電力会社に対し、自然エネルギーから作った電力を一定期間(10年から20年)、有利な固定価格で全量買い取ることを法律で義務付けて、自然エネルギーの利用拡大を図る。これにより、太陽光発電などを設置した家庭や事業者は、発電装置の設置にかかる費用を早く回収でき、採算性の見通しが立てやすくなる。

 

独立事象地震、法律改正、驚異的イノベーションの出現など。

互いに関連がないと想定できる。
独立事象の確率は、一つひとつを重ね合わせることができる。

 

エイジング:投資案件を案件のまま寝かせること。
良いと判断してから数年間は案件をアイデアのまま寝かせる。

 


仕手株:してかぶ。

特定の投資家たちが意図的にまとまった投資資金を流入させることで、急激な株価吊り上げや吊り下げが行われた銘柄。

 

仕手筋:特定の銘柄に狙いをつけて大量の買いを入れ、意図的に株価を吊り上げようとする投資家グループ。

「自称プロ」が群がってくる。

仕手集団の情報を、あなただけに素早く教えると囁く。いわば、チンピラ。
何も知らない初心者や資金力の弱いものしか相手にしない大バカ者。

犯罪者のように悪質な人々。

相場を短期で吊り上げることが容易だと勘違いしている輩。

 

PER(Price Earnings Ratio):「株価収益率」のこと。

会社の利益と株価を比較して「割安性」を測る指標。

一般的には、PERが低いと割安と考えられている。

 

万年割安株:いつも指標が低い銘柄群が存在する。

 

資産バリュー株:企業の保有する資産(大昔に購入した土地など) の簿価が低く、その時価を考えると株式の時価総額を超えるような企業。

あるいは、保有現金から借金を引いた額が時価総額を超えるような企業。


PBR(Price Book-value Ratio):株価純資産倍率。

企業の資産面から株価の状態を判断する。
PBRが低いということは、経営者のコストが高いということ。


経営者のコスト:企業の財産を株主へと分配しない可能性(=コスト) 。

エイジェンシーコスト代理人のコスト)」ともいう。

 

バリュー投資家:バリュー投資を低いPBR株や低いPER株だけに投資する人。

 
小さくて弱いポジション:多数派のポジション。

 
ランダムウォーク:株価の動き。日本語では「酔歩」。
株価は短期で見れば、上がったり下がったりをランダムに繰り返す。オレンジ色のハイ


ドリフト率:「配当の成長率」のこと。

株価は、ランダムな振動部分と「ドリフト率」という右肩上がりの部分の2つで構成されている。

長期ではどの国の株価も一様に右肩上がり。 

日本においては長期 70 年程度の平均ドリフト率(=リターン) は7%程度。

そしてランダムな部分(=リスク) は年率に換算すると 20%程度。

 


Clay Finley:米系投資顧問。

 

シャープレシオ:リターンをリスクで割った数値。
ファンドマネジャーの成績。

 


複利:倍率と倍率をかけるのが金融理論の基礎。

単利の足し算は行わない。

株式投資複利のゲーム。

 

デルタヘッジ:証券会社のオプションのデスクで行っている手法。

下がったら買い、上がったら売りを多数繰り返すことで儲かる。

ただし、規律を持って行う必要があるため、初心者には困難。

忙しい取引になり、割に合わない。

 

ロングショート:伝統的なロングオンリーに対して、買いポジション(ロング)と空売りによる売りポジション(ショート)を組み合わせた運用戦略。

 
トレード戦略:⇔ ポートフォリオ戦略。

一つひとつのトレードでリスク管理を徹底する投資。

多くはテクニカル分析によるトレード。
テクニカル分析チャート分析によるトレードでは、最適なトレーディングのサイズは元本の1%程度。

ポートフォリオ戦略が最大で 25%のウエイトを認めているから、トレード戦略は随分と小さなサイズ。

ダマシ:チャート分析により、分析が失敗するケースがあったり、損切りを事前に設定することで勝率が半分以下になってしまったりする。

 
NASDAQ100 ETF:銘柄コード1545。米国NASDAQ市場の100社からなるETF(上場投資信託)。
実質的に集中投資を避けることができる。

長期実績には目を見張るものがある。

過去 10 年で陽線が8本、陰線は2本。2本の陰線の幅は短く陽線は長い、理想的なチャートとなっている。

過去 10 年で5倍のETFだから、運用の手数料が0・45%と低い。

グローバルIT革命のリーダーであるGAFA(GoogleamazonFacebookApple を代表とする100社で構成されている。

価格変動率は年率で 20%程度。為替のリスクがあるが、株価の変動率 20%程度であれば許容範囲。

 

 
SPDR S&P500 ETF:銘柄コード1557。

米国を代表する上場企業500社から構成される。

過去9年の年足のうち7本が陽線、2本が陰線。過去9年で3倍になっている。

運用手数料も年率0・1%以下と低い。
円建てだから、為替の取引も不要。

グローバル経済の中心である米国株の代表的なものを束ねた強さがあるため、 10 年という時間軸で考えると今後も着実な上昇が見込まれる。
10 年放っておけば、全く時間をかけないで3倍、5倍になるから、米株インデックスは「最強インデックス」。

 


日経225連動型上場投資信託:銘柄コード1321。

日本株の代表的なインデックス。
10 年で2・5倍程度。悪くはない。

年足 10 年チャートで7本が陽線、3本が陰線でギリギリ。

運用手数料は0・2%程度。
日本にも世界をリードしようとするグローバル企業がある。ソフトバンクグループやユニクロファーストリテイリング)。

 

日経平均レバレッジETF:銘柄コード1570。

セカンドプラン以降で活躍するETF。つまり、相場の暴落時に、活躍する。
ポートフォリオ構築時点では、レバレッジタイプは入れないようにする。

レバレッジタイプとは、日経平均の2倍の動きをするもの。リスクが2倍になる代わりにリターンも2倍になる。

8年で4倍。

運用手数料が年率0・8%と高いのがネックだが、 10 年に数回も出てこないスーパーサブの役割を担う。

効率の良い日経先物を使って実現できる高度な運用手法。

 

セカンドプランポートフォリオ運用は、あらかじめ下がることを想定している。

例えば、「 10%相場が下がったら、こうしよう」と決めておく。

5年から 10 年に1~2回発動する頻度。

 
攻撃ポートフォリオに相場の変動よりも大きな変動を持つ株を多く入れるということ。暴落後のちょっとした戻りが期待できるから。

相場が 10%戻ったときに、ポートフォリオの一部が 20%戻るようにする。それがレバレッジETFの活用方法。

 

サードプラン: 50 年から100年に1度発動する頻度でプランを練る。

こうすることで、長期の運用が継続する。

 

内需:売上のほとんどを国内であげている企業。


外需:海外からの売上の3割以上を現在、あるいは近い将来海外であげる。

 
シェアの変動リスク:例えばIoTの業界が伸びると見立てて、関連企業の勝ち組が2つまで絞れた場合、その2つとも買うことで、どちらかが負けてもどちらかが勝つのでリスクヘッジになること。

 
ディフェンシブ:景気が悪くなっても、業績が悪化しない企業。
 例えば、食品・日用品メーカーや鉄道などの社会インフラ企業などと呼ばれる景気変動に強い企業群。


ワンアウト・ワンイン (One Out One In ):「一つ出して一つ入れる」という意味。


ワンイン・ワンアウトOne In One Out ):どうしても採用したい銘柄を見つけたときに、その銘柄を採用する方法。

内需(外需) であればポートフォリオ内需(外需) を一つ売る。


高値づかみ:急騰銘柄の株価のピークで購入すること。

 

 

 

 

 

 

 本文

 

 

 

[:1.株式投資の「六悪」]

[:2.長期投資の基本哲学]

[:3.リスクとリターンの簡易計算法と金融理論の基礎知識]

[:4. 勝率 99%を実現する「ポートフォリオ運用」とは?]

[:5. 初心者でも年1回、 30 分でOK!「ポートフォリオの構築法」]

 

 

 

・投資の時間軸を1年、3年程度の「短期」で考える方々にとって、その不確実性は厄介なものかもしれない。一方で、超長期の投資家にとっては、 99%という勝率は当たり前のものであり、誰でも達成できるものになる。


・投資においての最重要な要素は、時間。

 

・約 70 年前の1949年の日経平均は、200円に満たない水準だった。それがいつの間にか2000円を超え、現在でも2万円を超えている。

 

・2020年2月、新型コロナウイルスなどの影響によって株式市場は大荒れすると一部では予測されている。また、「リーマンショック以来となる世界的恐慌がやってくる」などとメディアでもSNSでも騒がれている。

しかし将来、日経平均は間違いなく 20 万円を超えていくと断言できる。それは必然の流れ。


・将来価値が株価よりも高いものを選ぶことで、長期の保有なら 99%勝てるゲームである。


・「銘柄さえうまく選べば、その都度儲けることができる」と考えている人は多い。  しかし、短期では株価はランダムに動くので、当然、買った後に下がることもある。いくら選び方を紹介しても、購入後の運用の方法を紹介しなければ完全なものにはならない。ポートフォリオの運用手法を知らないと、相場の荒波に一喜一憂することになる。悪い相場で精神的にも不安定になり、投資を諦めてしまう。そうなれば、 99%勝てるものも勝てなくなってしまう。

銘柄選びも重要だが、ランダムな動きをコントロールする実践的な運用手法はより重要。


・「損切り」という概念は、長期投資のポートフォリオ戦略にはない。

損切り戦略は、本を書く必要もないぐらい単純な戦略(「下がったら売れ」でおしまいだから)。

「下がってからが勝負」の長期投資とは相容れない。


・投資の最終形は応援。

 

 

 

1.株式投資の「六悪」

 


リターンを得るためにはリスクの理解から


・ほとんどの個人投資家は「最短で最大のリターンを得たい」という思いばかりが先行し、リスクの意識が欠如しがち。その気持ちもわかるが、あまりにリスクを顧みない態度は、資産を大きな危険にさらすことになる。

リターン最大化のために、リスクを顧みない態度は、ブレーキのない車で街中を猛スピードで運転するようなもの。 無謀な運転は必ず悲惨な事故を誘発する。


超危険な投資手法 ① 「信用取引

 

 

投資における〝制約〟は負けを意味する


信用取引は、残高を超えた投資が可能であるため、株の初心者に「手っ取り早く金持ちになれる」という幻影を振りまいている。


・ネット証券各社は、高い金利個人投資家からとって、大きな勝負をさせ、損失したときには、すばやく自身の債権保全に動く。


・「最大の失敗は、最も自信がある取引から生じる」もの。投資家は、最も自信がある取引で破産してしまう。


・投資に〝制約〟があると、それは勝率を著しく下げる「敗北の方程式」となる。

逆に言うと、投資における成功の秘訣は、制約がない状況下をつくること。


金利コストの制約


信用取引の一つ目の問題点は、高いコスト。

借りた部分の金利が年間数%かかる。例えば、レバレッジ(=運用額 ÷ 元手) が3倍の場合、2%の金利を払えば、元手に対して年率4%の金利コストがかかることになります。 これは、短期金利が大きく1%を割り込むなかで、外債並みの金利を払っているのと同じ。


② 時間的な制約


信用取引では、「6カ月」といった反対売買(買った銘柄を売る、あるいは売った銘柄を買うこと) の期間が設定されている。その短期で勝負をしなければならないため、どうしても変動が大きな株を選ぶことになる。


・証券会社による強制的な反対売買となれば、反対売買の手数料も余分にかかる。年間数%のコストは数十年で数十%になってしまう。


③ 資金的な制約


・市場の仕組みというものは、余裕資金に比べて投資額が小さい人が最終的には勝ち、大きな人が必然的に負けるようになっている。


④ 精神的な制約


信用取引をしていると、多少の株価の上げ下げで気分が影響を受け、判断力も鈍ってくる。仕事にも身が入らない。これでは、何のために投資をしているのかわからない。


・株式市場とは信用取引の顧客のお金を吸い上げるためのもの


・株式市場とは、「性急な結果を求める投機家から、余裕をもった長期の投資家へ富を移転するシステム」


超危険な投資手法 ② 「集中投資」

 

投資に絶対はない以上、集中投資はリスキーでしかない


・銘柄の固有のリスクが大きすぎる。


機関投資家(他人から委託された資金を運用している大口投資家) の場合、資産の8%を超えて一つの銘柄に投資することはない。


・ファンドの最大ポジションはせいぜい8%程度。


・多くの機関投資家は、伝統的な投資手法として信用取引や集中投資を社則で禁止されている。


超危険な投資手法 ③ 「回転売買」

 


・年金運用の場合、資産回転は年に1回程度だが、それでも多い部類。


・20 銘柄程度のポートフォリオだが、年に「最大1回転まで」と定めている。


・1回転ではやや多いため、実際にはそれよりも少ない回転数でポートフォリオを管理している。多くの年金基金向け運用を行っている機関投資家の回転数も1以下に定められている。


集中投資が損切りを誘発、損切りが回転売買を誘発する


・集中投資と回転売買は、同時に発生するもの。


・集中投資はリスクが大きいため、多くの投資家が損切りを徹底する。


・「損切りは早く、利食いは遅く」。

 


・ディーラーとファンドマネジャーの投資手法は百八十度違う。


・ディーラーが個別の投資対象に回転売買を繰り返すのに対して、ファンドマネジャーは多数の投資対象でポートフォリオを組んで分散投資して、回転売買を抑える。


・ディーラーは個別のトレードの損益管理を徹底している。

一方、ファンドマネジャーはポートフォリオ全体のリスク管理を徹底している。


損切りの考えを徹底していくと、回転売買が発生しやすくなる。


・「損切りは早く利食いは遅く」を実行するためには、当然のことながら、利食いできる確率は低く、損切りする確率は高くなる。

損切りをすれば次の候補が必要になる。


・ディーラーは回転売買が許されるが、それは彼らが証券会社に属し、手数料を払う必要がないから。


機関投資家は証券会社に発注するため手数料がかかる。

そして無闇な売買は手数料と売買スプレッドが余計にかかるため、顧客の資産を減らすことになる。

 

売買スプレッドの存在が資産を減らす主要因

 

・マーケットでは売りと買いを同一銘柄で保持すれば、必ず得にならない仕組みだから厳禁されている。


・売買スプレッドと手数料を合わせると、年間で数%の手数料。だからこそ、回転売買のコストは、長期ではとてつもないマイナスになってしまう。


・回転売買をする投資家は、証券会社のために働いているようなもの。しかしこうしたことは、一般には認知されていない。手数料もスプレッドもわずかに見える。


個人投資家に長期投資をされると、証券会社は儲からない。そのため、彼らは個人投資家には集中投資と回転売買を積極的にしてもらいたい。

信用取引によって取引量も増やすことができ、さらに高水準の金利収益も得ることができる。


超危険な投資手法 ④ 「空売り


空売りは初心者には必要ない


ロングショートから再びロングオンリーに戻ることにした理由は、空売り空売りは実際には儲からない手法であると見切ったから。


空売りが難しい理由


・① 貸株料が高い
空売りを行う際は、現物取引とは異なるコストが発生する。その一つが「貸株料(証券会社から株を借りるために支払う費用)。

大企業の場合、株価の0.2%程度。
ところが、これが中小型の貸株になると、1%を超えてしまう。小型の場合、数%ということも珍しくない。


・② 配当負担がある
配当利回りが年率2%の株であれば、空売りをするとその分だけパフォーマンスが悪くなる。

 

・③ 企業特有の緩やかな上昇バイアスが存在
過去 30 年の上場企業の配当の歴史を振り返ると、平均して、配当は年率6~7%の成長を記録している。


・配当成長率は、ROE(資本に対する年間の純利益の比率) という指標が元。


・上場企業は概ね黒字だから、配当成長率も概ね毎年のようにプラスになる。このプラス分が年月を経て累積することで株価は上がっていく。


・10 年程度の長期で見れば、どの主要国の株式市場も上昇している。つまり、株価は、長期では上昇トレンドが確認できる。長期で保有すれば上昇するものをあえて空売りすることはそもそも不利な行為だといえる。


・買い持ちと売り持ちのパフォーマンスの差は、年率で 10%弱となる。 10 年でとてつもない負担となる。


超危険な投資手法 ⑤ 「小型株への投資」

 

世の中の構造と企業体力の重要性


・一般論になるが、大企業と小企業を比較すると、「顧客」「地域」「体力」はすべて大企業が上回る。


・大企業はグローバル経済とつながっていることがリスクであり、小企業にはそういう余計なリスクがないと見なされている。


・小企業は、「グローバル経済の拡大の恩恵を受けられない」 という決定的な欠点がある。

 

・小企業は、運よく大企業から頼りにされて、業績を伸ばすということが多々ある。すると株価は評価される。しかしその後、大手からの契約を切られるということもしばしばある。そのとき、株価は暴落する。


一様分布とポアソン


・小企業を好む人は知らないうちにギャンブルをしている。ところが、本人は往々にしてギャンブルをしていないと思っている。


・天災や原発事故など、滅多に起こらない事象を扱うとき、一様分布は用いることができない。

 


・一様分布とポアソン分布との決定的な違いを理解することは、株式投資において非常に重要なこと。


ポアソンの例


・「小企業が大企業から契約を切られる」、あるいは、「顧客に想定外の損害を与える」という普通は想定していない事故は、一様分布ではなく、ポアソンで測るのが適切。


・税金を少しでも安くしようとするビジネスは、当局から見れば、いつか壊してやろうという具体的な対象になっている。それがいつになるかはわからないが、壊滅するリスクがある業界。


・多くの相続税対策(航空機リースや農地の利用によるアパート経営) 銘柄のPER(株価収益率。会社の利益と株価を比較して「割安性」を測る指標) が1桁である理由は、明確に存在する。


機関投資家は、破滅的なイベントが生じるという想定をしたうえで投資判断している。一方、多くの個人投資家はそうしたリスクを考えてはいない。


独立事象とポアソン

 


・市況にビジネスが依存している。これが定常的なリスクとして大きく株価を押し下げている。こうした想定外のリスクは、小企業が倒産するインパクトを持つ。一方、大企業は自らが事業を営むから、一様分布で計算できるものが多い。


・PERの低さは、リスクの高さの裏返しであることがほとんど。


・大手企業から採用された初期の段階で、小企業は過大評価される傾向があり、ニューヒーローとしてチヤホヤされるが、数年後には株価が大きく下がってしまうケースが実に多い。


個人投資家の中には、「いや、暴騰する過程があれば、そこで儲けることができる」と強弁する方が多いが、暴騰や暴落をするようなものは投資ではない。


小企業の会社業績予想は当たらない


・多くの小企業は、自らの業績を予想する能力がない。

なぜかというと、彼らにとってほとんど全ての新しいチャレンジが試行錯誤だから。

人手不足から作業を見直す。アルバイトに過度の負担をかけようとする。それを前提に業績を予想する。すると、アルバイトがどんどん辞めていく。「あれ、こんなはずではなかった」と経営者はびっくりする。仕方ないので店を開ける時間を短縮する。業績は下方修正となる……こんな具合。


信用取引も集中投資も、投資についてよくわかっているベテラン投資家であれば問題ない。彼らはプロ。嗅覚が鋭い。


株価が数十倍になる企業も、スタート時点の利益は100億円規模


・成長とは、大規模な投資ができる企業が有利になる場合がある


大企業と小企業の違い


・大企業は、小企業と何が違うのでしょうか。それは経験値。


・大企業は、社員に過度な期待はしない。個人の力というよりも集団で戦う方法がわかっている。無理な拡大をしない。過去にさまざまな失敗や苦労をしているから。


・大企業にも試行錯誤の時代がかつてあり、苦労して海外へ販路を築いてきた。過去の経験が豊富なため、世界情勢や与えられた外部環境を咀嚼して適切な無理のない計画で業績を考えている。  こうした過去から積み上げた経験値の多寡が大企業と小企業の差。


・少なくとも 20 億円程度の利益を稼ぐまで、企業をモニターし、 20 億円を超えて成長が見込まれるならば、その時点から投資するのがいい。

なぜ 20 億円が基準になるかというと、大きな世の中を相手に成長をするためには利益が必要で、 20 億円の利益があれば、次世代への投資を敢行できるから。


超危険な投資手法 ⑥ 「IPO銘柄への投資」

 

一目惚れに注意


・投資家は初顔(新規公開などの新人銘柄) に弱いもの。よいと思うとすぐに購入してしまう人が多くいる。恋愛に喩えるならば、一目惚れ。第一印象で決めてしまう。


・コア銘柄、つまり、ポートフォリオの中心に据える自らの代表銘柄にこうした「一目惚れ」を入れるのは危険な行為であることは間違いない。


・上場間もない企業には、過去の業績のトラックレコードが3年しかないから、経営者の実績が正しく評価できない。


・ベテラン投資家であれば、ビジネスモデルや顧客層を見るだけで、概ねリスクは理解できるが、投資の初心者がIPO銘柄に参加するのはリスクが大きい。


・ 投資家は過去を振り返ることによって、リスクを大幅に軽減できる。


・歴史を振り返ることは投資においては必須。


・ライバルが多数いる投資の世界では、短期的な投資家とは違う時間軸で投資対象を見つめることがパフォーマンスを向上させる。


・長期目線によって、世の中はどのように変化するものなのか、どの程度、経営者の意思が業績に反映されるものなのかが体感としてわかるようになる。

簡単な話、ビジネスを見ただけで、バランスシートが細かいところまで予想できるようになる。あるいは、バランスシートを見るだけで、顧客の属性までわかるようになってくる。


景気が悪いときこそ企業の実力がわかる


・人間の組織である企業がどの程度の変化に対応できるのか。経営者は長期でどんなビジョンを実行してきたのか。そうした客観的な事実を一つひとつ拾うことで、企業の獲得してきた経験値を推定することができる。


・長年の経験から、企業提携のニュースは全くあてにしない。


・結局、人間は、本気でやるなら、自力でなければ何も始められないもの。提携とは、裏を返せば他力本願。「助けてください」では、他人は動かない。


・企業が提携を模索しているフェーズでは投資をしない。


・経営者に社員がしっかりとついていけるのか。確信を得るためには、どうしても、景気循環の期間程度は企業の決算が欲しい。


どん底で、この会社は何をやったのかを確認する。


・景気の良いときには、本当に伸びる企業とそうでない企業との差は見分けがつかない。景気の悪いときに、その差が見える。


・景気が悪いという時期は数年に一度。そうなると、景気循環が2、3度あると、さらにその差が見やすくなる。今期や来期の業績だけで企業を評価するのではなく、過去の全ての業績を振り返ることで企業を評価するほうが重層的な解釈ができる。


・米国年金運用は、決算書を 30 年間しっかりと見る。その狙いは、「状況が最悪のときに、どう経営したか」という企業のDNAを特定するため。


・好きなタイプの企業は、例えば、リーマンショックのような大きな危機のときに、社員のリストラをしなかった企業。

大不況のとき、社員は仕事がないので暇になってしまう。ところが、良い経営者は、暇なときには社員に勉強させたり、これまでの業務のあり方を抜本的に見直させたりする。不況時には不況時の仕事があるの。職場に首切りが横行しては、社員が長期展望を持つことなど期待できない。苦しいときに、一緒に頑張ったという経験が組織を強くする。それが、ワンチームを作っていく。その過程を見て、投資家も奮い立つ。


・IPOに参加したことで、良い投資先を見逃してしまうこともある。しかし、過去の業績をしっかりと復習してから、投資をしても遅くはない。

 


・投資でエイジングの役割は、見えていなかったリスクを炙り出すこと。


・顧客との価格交渉力が高いと判断した企業が決算を繰り返すうちに、そうではないことが徐々に判明するということがある。企業が当初投資家に説明した内容を投資家が間違って咀嚼してしまうことも多い。


・過去の業績を見る場合、やはり 10 年ぐらいのトラックレコードは必要。
10 年では厳しいという初心者の方は5年でもいい。
IPOすぐではなく、上場後2年間、しっかりとウォッチする。
2年経って、やっぱりいいなと思えば購入してもいい。その2年間で、上場直後にはわからなかったことが多数わかるはず。それが投資のリスクを著しく軽減してくれる。

・運用とは、本能の逆をやること。

買いたくてしょうがない。でも、あえて買わない。心底良いと思っても買わない。  

本能に逆らうことが投資家としての基本的な訓練の一つ。

・本当に良いアイデアであれば何年先であっても遅くはないから、 投資に遅いということはない。利益規模が大きくなってから投資をしても、十分間に合う。

どんな企業が当てはまるのか

・狙い目は、上場後、最低2年経っていることに加え、利益を 20 億~100億円程度にしっかり伸ばした実績のある企業。


・100億~200億円の利益の企業は、現在240社程度ある。  

例えば、ワークマン、MonotaRo神戸物産など。
これらは、局地的な勝ち方がわかっている企業。


三浦工業ピジョンリログループオービックビジネスコンサルタントファンケルハウス食品、アシックス、エフピコ、アリアケジャパン、富士通ゼネラルカゴメ、エン・ジャパン、ツムラヤオコーエレコムメイテック富士ソフトラウンドワンなど、多くの候補がひしめいている。

・もう少しリスクをとって、 20 億~100億円というレンジだと900社以上あり、大変な数。利益率を10%以上に絞れば、260社程度。
レオン自動機、リオン、イソライト工業、トリケミカル研究所、ナガイレーベン、じげん、ナカニシ、MARUWA、ジャパンマテリアル、KOA、福井コンピューターホールディングス、SHOEI、トーカロ、ペプチドリーム、ジャストシステム、マニー、イリソ電子工業、ユニオンツール、技研製作所、JCU、マックスなど。

出来高が十分にある企業を選んでいき、すぐには判断しないで、アイデアを寝かして満を持して投資する。

 

・六悪さえ避けていけば株の投資で決定的な負けはなくなる。


ポートフォリオ運用を行えば、決定的に勝てる投資家になることができる。


column  最大の失敗は、最も自信のある取引から


・自信がある取引は、その自信から比較的大きなポジションを取ることになる。大きなポジションはもちろん、それだけ危険を伴う。所詮、人間が作り上げた確信。ファンドマネジャーは世の中のことが全部わかっているわけではない。世の中、仮に神様がいれば神様のほうが正しく、一介の個人の考えは往々にして間違っている。確信を過度に信じてはならない。


・銘柄間のポジションに大きな差をつけない

 

 

2.長期投資の基本哲学


投資家の常識は世間の非常識


・投資家には、確固たる投資哲学が必要。なぜなら、人は弱い生き物であり、強い意見に流され、多数派についてしまうから。


株式投資における哲学とは、人に流されないための教え。多数派に流されず、絶えず少数派であろうとすること。経済原則やマクロや業界の状況を信じないこと。みんなが相場に参加するときには休み、みんなが相場を敬遠するときに働くこと。


・人類の希望になりうる尖った企業にお金を託すこと。自己の利益の追求ではなく、社会の利益の追求をすること。ゼロサム的な二者択一的な思考をしないこと。


株式投資とは少数派のゲームであり、例外探しのゲーム。


・お金儲けの手段ではなく、頑張る同世代の仲間を支援する利他のゲーム。


・過程をコントロールし、結果を出すのが運用。


・甘い話、上手い話、楽な展開を長期投資家は決して望まない。


・投資家は社会の潤滑剤であり、相応の胆力が求められる。胆力を持つことで、結果としてライバルに対する優位性が生まれ、自らも例外的な少数派になり得る。


一発逆転という都合のよい考え方は、長期投資には存在しない


・投資における種まきとは「銘柄調査」。


ポートフォリオ運用では、多くの銘柄を選び切る必要がある。


個人投資家の典型的な勝ち急ぎパターン
① 調べる時間が足りず、一つの銘柄で勝負をする

② リターンを最大化するため信用取引をしてしまう

③ 当然、集中投資になる
損切りを繰り返し、図らずも回転売買となってしまう。


・投資額の 10%で前述の ① から ④ を行う。これならリスクは限定的。  

そして、投資額の 90%はNASDAQ100などの優良ETFを購入する。

これで結果的に、株式投資の「六悪」に頼らないポートフォリオ運用になる。


情報の対価とその質は比例しない


・まず、「すぐに上がる」という情報を信じてはいけない。 そうした情報を売る人は多くいるが、その全員が詐欺師。


・投資とは、アルゴリズムではない。アルゴリズムとは「こうなったらこう、こうならなかったらこう」という手順のようなもの。手順さえ踏めば儲かるという話も全て詐欺。どんなときでも通用するアルゴリズムなど存在しない。


・本当の投資のプロは、個別株を単独で推奨したりはしない。何十銘柄というバランスの良いポートフォリオでソリューションを提示するはず。 ポートフォリオが個別株のお互いの短所を打ち消す最適解だから。


・運用のプロは、必ず現物だけのバランス良く分散された銘柄への投資をする。


仕手筋を信頼してはいけない


・過去の検証で良いアルゴリズムが発見できたとしても、その発見は誰もが真似することができる。なぜなら、誰でも利用できる情報を検証しただけだから。

 


特許や企業間の提携は業績との関係がほとんどない


・特許、発明のリリース、新商品の発売のリリース、企業間の提携。  

これらは業績には直接関連がない。

将来の業績のインパクトへと変換しているから。企業の提携や発明などを見ても、そのマーケットや顧客層などから判断して、業績にほとんど無関係だと即座にわかるのがプロ。


・マーケットは誰もが自由に売買できる。おかしな株価は遅かれ早かれ是正される。その是正の前提は、長期投資家の考える企業の基礎的条件である業績の見通し。株価は短期の需給で揺れるが、長期的には業績の見通しで決まる。


相場の詐欺師を見分ける方法


・●チャートが載った広告
 機関投資家はチャートを見せて営業することはない。

 

 ●年間の成績しか載せていない広告(リスク量がない広告)
 ちゃんとした機関投資家は 10 年以上のトラックレコードを月次で数字で載せる。
 リスク(年率のファンドの変動率) とリターンを併記するのが本物の投資家。
 

 ●損切りの重要性が書いてある広告
 ポートフォリオ運用には損切りは必要ないから、そもそも損切りという言葉があるこ とが1銘柄による集中投資型の投機であることを意味する。


・ほとんどの投資顧問は、単発の銘柄勝負。


・銘柄によって株価の変動率が違うのに一律の損切りルールは合理的ではない。


・証券会社も損切りを必ず奨励する。注文が増えるから。


鮮度の良い情報はあとで見るとお笑いもの


株式投資とは、慌てて売ったり買ったりするものではない。


・上がる株は将来性を見込まれて上がるわけだから、安易な利食いは長期のパフォーマンスを痛め、優良投資案件を惜しげもなく手放す羽目になる。相場に反応してはならない。


・情報番組を見て、「世の中やマーケットで何が起こっているのかを知りたい」「経済の背景や解説を聞きたい」という気持ちはわかる。でも、それらが全部わかっても、投資は上手くならない。むしろ、無用な情報で混乱するだけ。


・なぜ日経平均が上がったのか(下がったのか) 解説するコメントがあるが、それに大した根拠はない。


・上がる(下がる) 理由は、買った人(売った人) の動機の数だけある。


・日々の株価の変動に意味などない。


私が日経新聞を読まないわけ


日経新聞を全く読まずに運用している。新聞だけでなく、ネットニュースやツイッターも見ない。それで全く問題はない。


・大勢の参加者が見ているものは特に見る必要はない。マーケットに織り込まれるから。

 

・何を見ているのか。  

場が引けた午後3時から東証で適時開示が発表される。 企業から直接出されるリリースを読む。


・一次情報に当たるのが投資家の基礎行動。
チェックしている一次情報は、企業が発表する適時開示情報。 主には有価証券報告書決算短信、特許情報 。  

二次情報を読むのであれば、ブロガーや投資家のツイッターや新聞記者の書いた記事ではなく、大家が書いた教科書や著名作家が何年もかけて調べた小説やドキュメンタリーを読むべき。
山崎豊子さんの『沈まぬ太陽』という小説は日本航空の内部者への何年にもわたる取材で書き上げたもの。こうした作家が何年もかけて調べ上げたものは新聞の記事よりも読む価値が高い。小説によって企業がいかに腐りやすいかを知る。それが投資に生きる。


・人生の余暇に充てる時間の 10%程度でいいから、読んでも理解できないものに挑戦する。


・情報は早さではない。
情報よりも思考や考え、そして一つひとつの数学の定理や統計学的な事実が本質を理解するのには必要。


Yahoo!ファイナンス掲示板も見ない

 

アナリストレポートも読まない。IR資料は参考程度に


・アナリストレポートは、万人のために書かれたものではあるが、実際には自分の情報の整理のために書くもの。レポートを書いた本人には書く意味があっても、それを読む他人には重大な意味をもたないもの。


・投資とは自らの価値観で判断するもの。他人の価値観のベースで書かれたものを採用することはできない。


・アナリストレポートの中には、 単に企業の代弁に成り下がっているものが多数ある。 アナリストレポートのかなりの部分は企業からお金をもらって書かれている。企業に対して有利になるように書かれている。


・IR資料も同様。その大半は都合良く書いてある。IR資料に「シェアが高い」と書かれていたとしても、シェアの具体的な定義が書かれていない資料ばかりだから、それを信じたら痛い目にあう。


・企業へ多くの取材をしなければ本当のことはわからない


・アナリストレポートやIR資料も日経新聞のように、暇つぶし、もしくはエンターテインメントとして読むのは構わない。すぐに理解できるものを読んでわかると脳は嬉しいもの。


・電話取材でも構わないし、IRフェアや株主総会に参加して企業から直接話を聞くのもいい。成功している個人投資家はそうしている。自分でちゃんと取材をしている方々が成功している。


セクター分類は役立たない


東証では、セクターは 33 業種に機械的に分類されている。


・セクター情報は、投資には全く必要ない。せっかく個別株の情報が東証から開示されている。有価証券報告書もせっかく個別企業ごとに開示されている。

 

・投資とは、例外を見出すこと。そのためには、個別企業ではなく、個別企業の中の個別のチーム、個別の商品やサービスを丹念に評価する必要がある。 個別株の動きではなく、その企業のサービス、製品、社員、経営者を見る。そして有価証券報告書や特許などの一次情報を調査し、個別の商品や企業、集団の中で頑張る個人を応援する。それが長期投資の考え。


日経の観測記事に登場する上場企業は投資対象にはならない


・たまに社長がポロリとニュアンスで事前に業績を伝えてしまうことがあるが、機関投資家は絶対にその企業の株を保有しない。そのような「アホ」経営者では企業の先行きは危ういとわかるから。


日経新聞に業績を発表前にすっぱ抜かれる企業もまともではない。そんな企業は経営のコントロールが利いていないダメ経営であり、決算発表前に日経新聞の観測記事に出てくるような企業は、買ってはいけない企業の見本。


・企業と一部マスコミとの馴れ合いによって一部のマスコミだけが業績をリークするような株式市場は国際的に低評価となり、外国人は日本株を持たなくなる。


効率よりも現場


有価証券報告書に書いてあることをしっかりと分析し、企業経営者との長年にわたる対話から結論を得ようとする。電話取材は原則しない。訪問取材が基本。
人間関係を構築するために訪問する。


・日々の雑音は全て切り捨て、年に一度だけ有価証券報告書を読み、しっかりと対面で現場を取材して分析をする。これが投資家の作法。


・忙しいからという理由で電話取材で簡単に済ましてはいけない。地方の企業ならばそこまで行く。その地方の空気を感じることで、企業行動の謎が解ける場合もあるから。


・何事も短絡的に考えず、深く考え、物事を長い時間軸で考えることで、投資家としての力量が向上していく。

 

変化ではなく絶対水準が重要


機関投資家が一次情報として最も重視しているのは、年に一度の通期の有価証券報告書。年に一度の業績の水準(絶対値) とその前年との変化率の両方を見るの。  

業績の絶対水準とは、純利益の額や利益率の高さを指す。  

業績の変化とは、純利益の前年との変化率。  

数字の裏にある企業活動という投資対象そのもの(あるいは商品そのものの持つ力) を見るが、動かない過去をしっかりと深く見える態度で分析を行う。


・絶対水準を投資先のハードルとして設定する。


・利益率が低い企業には投資をしない。


・一方、大多数の投資家は絶対水準ではなく、変化の大きさを重要視する。


・投資家は大幅な増益企業を好むもの。


・大幅な増益はマイナス要因にもなり得る。業績の変化率が大きい企業は、良いときは大きな増益になるが、悪いときには大きな減益になる。そのため、変化の大きさを投資の決め手にしている投資家は失敗を繰り返す。そこに気づくか気づかないかが長期投資の成否の分かれ目。なぜなら、良い変化を見込んでも、現実にはさまざまなトラブルが生じ、想定どおりのシナリオにはならないから。


・利益率という絶対水準が高い企業で、かつ業績の変化の少ないものを選ぶのが長期投資の基本。


PERの低さで勝負をしない


・実際、PERの低さは、「あてにならない利益」(=資本コストの高さ) の裏返しにすぎない。PERが低い企業は長期の業績が予想できないということ。


ポアソン確率で計算できるが、まずいと思われる企業については、市場はそのリスクを懸念する。結果として、PERが低くなる。


・市場がつけた値段は、非常に合理的なもの。株価は投資家一人で決めたものではなく、世界中の投資家の考え方が総意として凝縮されたもの。したがって、一般的に株価が正しく、個別の投資家の意見は誤り。


・「株は割高なときに買うもので、フェアバリューで買ったら上値余地がない」と考えるのは投機家や短期投資家。長期投資家は、フェアバリューで買っても長期では株価が上昇すると考えるので保有する。

逆に言えば、「割安なものがフェアバリューに収斂する」という考えが多数派ということ。


・割安株など存在せず、存在するのはフェアバリュー株。


資産バリュー株の不確実性

 


・要するに、PERが低いということは、「保有し続けていつまで立っても株主に還元しない経営をする企業」だったり、「資産が役に立たない設備に置き換わってしまった企業」である、ということを物語っている。


・視野が広い投資家は、倒産、減配減益の可能性などに加えて、経営者の保守的すぎる非効率経営のコストも株価の一部であると考る。たとえ多くの現金を保有していても、「ああ、あれは私たちのものではなくて、彼らのものだから、ないものと考えよう」と投資家は評価する。


PBRやPERが低い株は需給が悪い


・バリュー投資家に対する私のイメージは、「いつも下方修正で参っているな」。


・長期の利益が見通せない銘柄ばかりでポートフォリオを組めばどうなるかは明白。

業績はぐちゃぐちゃ、不景気になると無配転落の懸念が出てくる。


・個人の小さなポジションは低PBR・低PER銘柄に集まりがち。そうした小さなポジションがそんな銘柄の一つに偏り、重なっていくと、その銘柄は上がりにくくなる。低PBR・低PER銘柄は業績がすぐに悪くなる。赤字に転落してしまうと資本が毀損する。資本が小さくなるとPBRが高くなる。そうなると、もう低PBR銘柄ではない。


・バリュー投資家は、PERやPBRが高くなると即座に売る。低PBR・低PER銘柄はすぐに業績が悪いほうに変化するので、バリュー投資家はいつも売り物ばかりになる。


・バリュー株はリスクが高くなる。なぜなら利益率が低く、誰にでも真似できる事業をしているから。


・有利な経済環境や事業環境が到来しても、彼らは儲けられない。たとえ景気が良くとも、取引先から値下げ圧力があるので下方修正を頻発する。値上げできないので、景気が悪くなると一斉に赤字転落する。それが「バリュー株」。


・PERが高い銘柄の需給は良いのが当たり前。個人はまず買わないし、ヘッジファンド個人投資家信用取引で売ったりする。


・10 年という成長期間と相応の成長率を合理的に見積もり、それが十分にあり得そうだと誰もが思える場合に、長期の業績は見通せる。


・将来の業績拡大がほぼ確実な場合、PERが高くても、株価は安いということが非常によく起こる。そのため、あまり売り物は出ない。


東証一部昇格を狙う投資手法で失敗する


・インデックスに採用されるか否かは、企業価値の本質的な議論では全くない。

本質的な議論とは、その企業が将来、人類に何をもたらすのか。社会的課題をどう解決してくれるのかという問題。


・本来ならば、誰もやっていない少数のやり方を身につけるしかない。その近道は自身で考え続けること。多数派を特定すること。多数派の逆をやること。世の中のトレンドを特定し、その例外を探すこと。人の裏を行くこと。


機関投資家が売らざるを得ないとき、「ああ馬鹿なファンドが売ってくれてラッキーだ」と考える若手のファンドマネジャーもいるが、そう単純ではなく、大きな解約があるほど、世の中が動揺していると慎重になる必要もある。


・短期のチャンスは長期のピンチ。


・市場の動きに対する、即座の反応はいけない。じっくりと満を持す。その姿勢でマーケットに向かい合う。


株価の変化率を構成する要素


・株価の短期の振動は、誰にも正確にはわからない。

 


・短期では 20%のリスクのほうがリターンの7%よりも大きいため、ランダム性により引き起こされる株価の日々の乱高下に目が眩んでしまいがち。


・7%というドリフト率が、基本的な株式投資のリターンの筋。


・リターンは時間に比例しますが、リスクは時間の平方根に比例する。


・仮に年率リターン7%、リスク 21%とすれば、年間の変動率の4分の1は必然的なもの、そして年間の変動率の4分の3は偶発的なもので構成されていることになる。


・しっかり調べる意義があるのは長期の趨勢であって、短期の株式投資は偶然の集まりにすぎない。長期ではどの先進国の株価も上がっているのはそうした理由。

 

コラム 私の運用キャリア その1


・バフェットの投資手法は、当時からすでにお手本だった。設備投資も恒常的に多額になれば、それは全額費用であるという考え。
つまり、いわゆる重厚長大産業では、多額の減価償却費がかかり、その減価償却費をベースに、生産能力に余裕がある局面では、企業が設備投資をしない。すると見かけ上、フリーキャッシュフローが大きく見える。

単に、設備投資のタイミングの問題であって、単年度でフリーキャッシュフローを測っても企業の標準的な実力値ではないから、「減価償却費が大きな企業は投資対象にはできない」。


・ビジネスの本質は、売上と費用との割合やその安定性。

 

 

3.リスクとリターンの簡易計算法と金融理論の基礎知識

 


リターンの計算方法


・リターンとは、「売値と買値の比率」 のこと。


・{売値(投資期間終了時の株価) ÷ 買値(投資期間開始時の株価)-1} ÷ 投資期間

  この計算式は「単利」。


・リターンは、2点間の株価と投資期間という3つの情報があれば計算することができる。

 

簡易リスクの定義と計算方法


・買値と売値と投資期間の3つだけでリターンが測れるのに対して、リスクは途中経過の株価情報が必要。


・途中経過で無配転落や赤字転落、大幅減益などの株価にとって危ない場面が多いほど、リスクは高くなる。こうした危ない株は、逆に、復配や黒字転換によって株価が急に上がることもあり、振幅が大きい。

 

リスクの簡易計算法


・リスクの計算では、「標準偏差」と呼ばれる統計量を用いるのが本筋。


・エクセルなどの計算ソフトを使えば容易に計算できる。


・数字の意味は、株価が概ねその範囲内で変動したということ。ただし、特別に相場が悪いときには、一時的にその範囲を逸脱することもあるということ。相場だから大きく下がることもあるが、それはあくまで一時的な下げ。


・リスクとリターンの計算の違いは、年率のリスクが投資期間の平方根で割るのに対して、年率のリターンは投資期間そのもので割るということ。


・年率のリターンを投資期間分のリターンに直すことを考えると、リターンは投資期間をかければよいだけ。


・年率リスクを投資期間分のリスクに直すには投資期間の平方根をかけなければならない。


・投資期間が長いとシャープレシオは良化する場合がある。良化する条件は、投資リターンがプラスの場合。


・時系列データ を用いて、投資家はリスクとリターンを計算することができる。


・零の扱い(無配) や負の数字の扱い(赤字) は、計算の工夫で消すことができる。無限大という計算不能な状況を回避する工夫をすることがどの学問でも重大なテーマだが、投資も例外ではなく、零などの特異点を回避する計算を行う。そういう工夫が運用の現場でちりばめられている。


個別株、日経平均、TOPIXのリスクとリターン


・注意したいのは、 簡易リスクは投資期間によって変化すること。


株式投資は、リスク量が相場環境によって変化する。


・市場平均は、一般的に企業業績が良いときには簡易リスクは 10%台と低く、リーマンショックのような最悪の事業環境では 40%以上になる。


・リスクだけを見て「高いからダメだ」と判断してはいけない。簡易リスクが高くても、リターンの見通しが高い企業もある。あくまでもリターンとリスクとの関係がよいものを選ぶのが運用のコツ。

 

単利は使わずに「倍率」で考える


・株価は、年間で数十パーセント程度上下に動くもの。


・金融の理論では、単利の100%の上昇は2倍と捉える。

単利は使わずに「倍率」で考える。

金融の人間は、単利の足し算は行わない。あくまで倍率をかけていく。

 

複利とは

 

複利の特性から、 10%上昇して 10%下落しても元には戻らないのが株式投資


・10 から 10 を引いてゼロとは考えない。単利の足し算を行ってはならない。


株式投資は倍率をかけていく複利のゲーム。


・投資とは、数字とその逆数のペアのゲーム。

1に対する1/1。2に対する1/2。1・1に対する1/1・1が投資の双六ゲーム。


金融理論の基礎


・金融理論では、「半分になるものは倍になる可能性が同様にある、倍になるものは半分になる可能性が同様にある」。

両者をペアとみなすことで均衡が保たれる。


・半分になるぐらいの激しい動きをするのだから、倍になるぐらいの激しい動きをするとみなす、ということ。


・もし下がったものが上がりにくいならば、世界各国の株価はずっと右肩下がりのはず。ところが、世界各国の株価は数十年単位で見れば、右肩上がりになっている。


信用取引のシミュレーション


・リスクとリターンの関係は、信用取引によって大きく悪化する。


・「キャッシュを使うと期待値は上がるのでは?」と思った人もいるかもしれない。  そのとおり。一般に、現物株とキャッシュとの比率は5:5がもっとも優れたリスクとリターンの関係となる。


・キャッシュを半分持ちながら、左右対称のギャンブルを繰り返すだけでわずかに期待値はプラスになる。

これが絶対に証券会社が教えない、本当の意味で資産を着実に増やす方法。

しかし、実際には税金や売買スプレッドなどのコストがかかるため、それほどは儲けられない手法。


・売買の板のスプレッドや証券会社に払う手数料、信用取引の場合には、さらに金利もかかる。

 

回転売買のシミュレーション


・半分キャッシュで半分株式の組み合わせならば、回転売買で資産は増える。ただし、多数の売買を繰り返す必要はある。


・キャッシュを用いた回転売買は、実はやりようによっては、トレーディング戦略として有効。


・リスクとリターンとの関係を良化させる手法は、世の中で2つだけ。
  一つは、ポートフォリオで運用すること。単品、単発、集中投資では失敗する。
 一つは、長期で運用すること。株式投資の持つ固有の期待値が存在する。


・投資のリスクである株価の振動は、長期ではリターンほどは増えない。


・ランダムな事象である株価というものを相手にするには、キャッシュという余裕がなければならない。いつでも追加投資が可能な状況にあると、相場が悪いときに残すことができる。

市場にずっと長期間滞在することができれば、自然と時間が味方につく。ポートフォリオを持ち続けることで長期の運用が可能になる。

 

信用取引をしてもいいケースとは?

 

信用取引を使っていいのは、期待値が、ほぼ常時1より大きなゲームだけ。


・ある会社が優れた事業を始めたとする。その事業への直接投資(株への投資ではない) は、財務レバレッジ(いわゆる信用取引) をかける価値がある。


・事業の場合、ほぼ確実に黒字といえるが、投資家の場合、世界一の天才投資家であっても一定以上の失敗確率がある。100戦 90 勝という投資家はいない。株式投資家の場合は、株価がすでに事業内容や質や見通しなどを織り込んでいる。良い事業にはそれなりの株価が付いているため、買値を下回るリスクをゼロにはできない。


・借金で投資資金を賄うというシステムは最低のビジネスモデル。

投資の初心者には信用取引は使いこなすことができない。


長期投資がシャープレシオでは有利になる


・投資には長期と短期の両方必要だという方がいるが、シャープレシオで見る限り、短期投資のシャープレシオは低いと言わざるを得ない。


・良いときに稼ぎ、悪いときに守る。  

これが「ロングオンリー(買いポジションだけ)」の運用。

勝ち組は景気の良いときに、無理に投資をしない。景気が良いときには、投資が割高になるから。


・状況の良いときは、トップ企業は、あえて2番手や3番手にシェアを取らせることもある。


・一旦、景気が悪化すると、トップ企業は投資をゆっくりと始める。そのとき、2番手や3番手から顧客を奪うので、トップ企業の業績は比較的安定的に推移する。


・株価とは、単年度の利益ではなく、将来の利益を反映するもの。


・将来への希望がある企業の株価はそれほど下がらないもの。


・相場が悪いときに、財務優良株はディフェンシブ性を発揮する。

銘柄を財務状態が良く、商品力の優れた企業に限定する。これがロングオンリー運用の守り方。

 
ロングショートの場合、ショートがロングのヘッジになるため、ファンドとしてのリスクを大きく低減できるが、同時にショートのコストが大きいことによって、リターンが犠牲になる。


・ショートの目的は、ロングのポートフォリオのヘッジだが、多くのロングショートオーバーヘッジといって、ヘッジを頑張りすぎている。ヘッジ量が多すぎて、リターンそのものが犠牲になっているファンドも多い。


空売りも相場の方向性を当てることも難しい。


・キャッシュポジションを機動的に変えないロングオンリーのフル投資こそが、投資の王道である。

 

 

4. 勝率 99%を実現する「ポートフォリオ運用」とは?


「個別取引で勝つ」ではなく「チーム全員で勝つ」方法論


信用取引に対する現物取引、回転売買に対して長期の保有、集中投資に対しての分散投資、すなわち、初心者が失敗する六悪の対極にあるのがポートフォリオ運用。


ポートフォリオの最大の利点は、「相場が良いときだけではなく、相場が悪いときもあえて常時、市場に財産を任せておく」「環境が悪いときも業績が悪いときも、これから悪くなる懸念が強いときも、常時、株式の保有残高をしっかりと保っておく」ということ。


ポートフォリオは、多数の銘柄の集合体ではなく、ポートフォリオという一つの株式と見なす。


ポートフォリオという一つの「銘柄」は、いつも変わらないで保有が継続される。そして常時、市場にさらされる。積もり積もって超長期の保有へとつながっていく。 10 年、 20 年とずっと保有する。これが複利の恩恵を受けるための最低の条件。


・いつもマーケットにポジションをさらしたものだけが、長期の複利運用の恩恵にあやかる。


ポートフォリオを組むことで、保有残高を全てマーケットにさらすことができる。  そして、個別株のそれぞれの力を利用しつつ、長期で株価の複利効果を得ることができ、配当の分をその時々の株価で再投資でき、配当にならなかった部分も企業側で内部留保されて順次、再投資され、事業が拡大し、それを映して配当が時間とともに増えていく。すると、株価は増配に歩調を合わせて上がる。  

このように 株式投資は、 10 年という長期では自然な上昇力を享受できる。


・投資において最も安心な形である、長期の保有でリターンを享受できる。


・20 年以上ポートフォリオ運用をすれば勝率は99%。


・突破力のある企業の持つ業績拡大の力を信じれば、相場が堅調なときに、マーケットに保有残高がないことは大きな機会損失。上がることも下がることも同じ具合であれば株価は振動にすぎないが、私たちの選ぶ株式会社は、世の中の新しい需要を切り開く次世代のスター候補。多少の見込み違いがあっても、ポートフォリオ全体で見れば固有の上昇力が備わっている。


・10 年に1回の大暴落を恐れるよりも、 10 年に8~9年は大暴落がないから、平穏な年月の着実な成長を信じる。 1年単位で判断すると下落してしまう年もある。しかし、 10 年、 20 年で考えれば、ポートフォリオはその価値を増していくことを信じる。


ポートフォリオではメンバー同士が助け合う


ポートフォリオにはあえて、業績の悪い銘柄も入れておく。業績が良い企業だけのポートフォリオは弱く、それだけでは勝てない。かといって、業績が悪い企業だけでももちろん勝てない。調子の良いものと悪いものたちの力を合わせることによって業績の変動を平準化し、景気の波の影響を受けにくいポートフォリオになる。

 

ポートフォリオの定義


ポートフォリオ運用ができている投資家はほとんどいない。

分散投資をしている方は多いが、ポートフォリオ運用にはなっていない。


ポートフォリオ運用とは、多様性が豊かな銘柄群により構成されるバランスの良い分散投資


分散投資とは、銘柄数で少なくとも4銘柄以上。できれば 10 銘柄以上が望ましい。


・多様性豊かとは、業種に偏らず、輸出企業も輸入企業も海外売上の多い企業も国内売上が多い企業も採用するということ。


・バランスが良いとは、ほぼ均等なウエイトで構成するということ。


・大切な資産を守るために想定外の事態になっても対応ができるように一定のキャッシュを持つ。

 

ポートフォリオ運用では多数の売買や集中投資をしない

 
・トレーダーはおよそ、過去の経験則から、多くのトレードをすればするほどトレーダーの実力へと結果が収斂することを知っている。


・1回だけのトレードでは損をするかもしれない。しかし多数のトレードを行えば、習熟している分、全体では勝つことができる。

それがトレーダーのやり方で、勝率を安定させるために多数の売買を必要とする。


・自ずとキャッシュを持ちつつ、常時、投資アイデアを実行する。

パソコンでの自動売買を行うこともある。

 

・トレードを次々こなすのは株の初心者には無理。


・トレードでは、次々にアイデアが必要になる。「今回は、これとこれ。次回はどうしようか」という回転売買になる。そして、ナンピン損切りが回転売買を加速する。取引をしよう、しようという方向に投資家は駆り立てられる。休む暇がないのがトレード戦略。


ポートフォリオ戦略であればトレード戦略ほど忙しくする必要はない。


ファンダメンタルズ投資は、業績が将来拡大する確信の高いものを選ぶわけだが、将来のことは誰にもわからない。ファンダメンタルズを十分に議論し、企業についてどれだけ深い理解をしようが、わからないものはわからない。だから、ファンダメンタルズ投資といえども、集中投資をしてよい理由には全くならない。


・銘柄特有のリスクをヘッジできない以上、集中投資すべきではない。


トレードの集合体とは違うポートフォリオ運用


ポートフォリオは、一組のペアの構築から始まる。

2つが互いの欠点をかばいあうように選ぶことで初めて成り立つ。

どちらかが外貨での売上を持ち、どちらかが外貨の費用を持つようにペアを組んでいく。


ポートフォリオ運用によって、リターンを下げずに、リスクだけを下げることが可能。


・どちらかを個別に管理して損切りすれば、為替リスクを増大させることになり、このようなことはできない。


バランスの良い銘柄選択とは

 

・100万円でもポートフォリオ運用はできる。

4つの銘柄を選び、 80 万円を投資。

残りの 20 万円で「NASDAQ100 ETF」などの優良なETFを組み入れる。  ETFはそれ自体がポートフォリオ

 

・【100万円ポートフォリオの構成例】

① 個別株その1…… 20 万円 内需

② 個別株その2…… 20 万円 外需

③ 個別株その3…… 20 万円 内需

④ 個別株その4…… 20 万円 外需

⑤「NASDAQ100 ETF(1545)」……5万円(米国NASDAQ100への分散投資

⑥「SPDR S&P500 ETF(1557)」……5万円(米国S&P500への分散投資

⑦「日経225連動型上場投資信託(1321)」……5万円(日経225インデックス投資

⑧ キャッシュ……5万円   合計100万


上場投信ETFの例


・【100万円ポートフォリオ

①「NASDAQ100 ETF(1545)」…… 32 万円

②「SPDR S&P500 ETF(1557)」…… 32 万円

③「日経225連動型上場投資信託(1321)」…… 32 万円 ④ キャッシュ 4万円   合計100万

 

・インデックス型ETFは、それ自体が多数の銘柄から構成されている。その場合、 25%以上保有しても集中投資とはならない。だから、構成比率が前述のように 30%を超えても大丈夫。


ETFは手数料などが証券会社が販売する投資信託より安いという特徴がある。そして、ご自身の判断で売り買いできる。

 

・もちろん、個別株だけで選んだポートフォリオのほうが選び方によってはリターンも高くなる。個別株をじっくり選べる方はETFで運用する必要はない。


・極端なケースだが、個別株なしで、全てETFというのも「あり」。

 


入れ替えのあるインデックスと腐ったインデックス


・S&PやNASDAQ100や日経225は古い企業を採用から外し、有望な企業をインデックスに採用している。
そのため、新陳代謝が進みパフォーマンスも良い。


・TOPIX型のETFは、東証一部に昇格した全上場企業がインデックスに採用されるため、ボロボロの企業の株やもう社会的な役割を終えた企業の株も含む。故に、パフォーマンスは元気の比較的よい日経平均に負ける傾向が強い。


日経平均と下の線のTOPIXではパフォーマンスにどれだけ差があるのか。

2年で 10%も日経平均が有利。長期ではかなりの差になってしまう。


日経平均と上の線の「NASDAQ100 ETF(1545)」とのパフォーマンスを比べる。

NASDAQ100が日経平均を2年で 15%以上、上回っている。つまり、イノベーションを世界に起こす米国企業に富が集中している。

 

「NASDAQ100 ETF(1545)」の実力

 
・比較すれば、手数料を1%も毎年とるようなアクティブ運用の投資信託などは長期では不利な運用になりかねない。

 
日経225連動型上場投資信託(1321)」の実力

 
日経平均連動ETF(1321)」は、セカンドプラン発動のために必要。


ポートフォリオでの役割が米国インデックスとは違う。
相場急落時のために、ポートフォリオの 20%を日経連動にしておくのをおすすめする。


・短期の振動は誰にも当てることができない。つまり、想定外に下がったときにだけ、〝伝家の宝刀〟を抜けばいい。


・その伝家の宝刀が「NF日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(1570)」。

 

「NF日経レバ連動型上場投信(1570)」の実力

 
・運用資産が2割毀損したとき、「日経平均連動ETF(1321)」をこの「日経レバレッジETF(1570)」に入れ替える(相場の急落は 10 年に2回程度の大きなものを想定している)。


・個別株だけでポートフォリオを組んでいる方は、やはり、2割損をしたときに、相対的に下がっていない株を売ってレバレッジETFに乗り換える。


・長期投資家は、世の中が大変なとき、大暴落のときにだけ相場の方向性に賭けるもの。平時のときはモニターの前に座ってトレードなどはしない。


・100年に一度レベルの大暴落だと、ポートフォリオは当初の6割程度にまで落ち込む。


・個別株では4割以下になることも大いにあり得るが、バランスのとれたポートフォリオで4割下がることはほぼない。


リーマンショック級の下げが今後もあるかもしれない。しかしそうしたときでも、主人公が「日経レバレッジETF(1570)」に変身して、ポートフォリオを助けてくれる。しばらく経てば、相場は落ち着きを取り戻し、その後、大きなリバウンドを誘発する。元に戻れば、ヒーローは去ってしまう。「日経レバレッジETF(1570)」も役割を終えたら、「日経平均連動ETF(1321)」に戻る。


「セカンドプラン」の重要性

 
ポートフォリオレベルで 10%の下落は、年に1回あるかないかのこと。

 

・10年単位で見れば数年は大幅に下落し、ひどい年には 10%を超えて下落してしまうもの。しかしながら、大変な状況になれば、金融当局や政府が景気対策や金融緩和政策をとり、相場の急落はやがて落ち着き、再び、相場は平常状態に戻るもの。

相場が暴落したときは、それを活かすために、ポートフォリオの内容をやや攻撃的なものにする。

 

外需と内需


・初心者の方に私がおすすめしたいのは、内需株と外需株をペアで組み、計4~ 12 銘柄程度のポートフォリオを運用するというもの。

外需を1つ選んだら、内需も1つ選ぶ。先に内需を選んでも構わない。これを繰り返すと、バランスの良いポートフォリオになるはず。


・「そんな時間はない」という方は、2銘柄だけ選んで、残りはNASDAQのETFなどで構成しても構わない。結果としてポートフォリオ運用になる。


ポートフォリオ運用でもヘッジできないリスクがある


ポートフォリオ運用は万能ではない。投資に絶対はないから。

例えば、下請け企業のリスクはポートフォリオではヘッジできない。競合相手が多い下請けの場合、顧客から取引を切られるリスクがある。そうなると業績は見通せなくなる。


ポートフォリオ運用でヘッジできるのは、ある程度の為替リスクや原材料の変動リスク、同一業界のシェア変動リスクなど。

 

・景気後退リスクも見通しが立たないという意味で、ポートフォリオ運用でもヘッジすることはできない。

 
・価格交渉力が高い企業は、外部環境が悪化しても、値上げに動くことができる。こうした強い企業、安定した企業をポートフォリオに採用することで、ヘッジできない銘柄固有のリスクを低減する。


・あるときは減益、あるときは増益という企業ではリスクだけが高くなる。

いつも着実で力強い増益という企業をポートフォリオに揃えることが 10 年で3~4倍を達成するためのコツ。


ポートフォリオにおけるリスクとリターン


・長期投資にとってのポートフォリオレベルのリスクとは何か。

それは、バランスよく4銘柄以上選んだ場合のポートフォリオの年間の損益のブレ具合。
およそ2割。


・平均すればプラス 10%程度のポートフォリオのリターンが十分に期待できるということ。

この見込みの高さが株式投資の優れたところ。


・腕が良い運用者であれば、現物取引で年 10%程度のリターンをあげることも可能。


・リターンとリスクの関係をよく理解するということが、投資の成績を着実に上げる第一歩。


株式投資をする投資家は全員、リターン 10%とリスク 20%から逸脱はできない。「私だけは、他人と違ってリターンが200%でリスクが0%です」ということはあり得ない。


プロのファンドマネジャーの限界数値


・10 年 10 倍という数字は、運用のプロが挑むギリギリ達成できるかできないかの臨界点

「年間1・2倍にしかならないのか」とがっかりしたかもしれないが、これがプロのファンドマネジャーの限界数値。

リスクを 20%に抑えているため、そうなってしまう。


・1・2倍を 20 年続けることができれば元手は 38 倍になるから(1・2の 20 乗は 38)、それで良しとしていい。


リスクは時間の平方根に比例する。リターンは時間に比例する


日経平均は日々、1~2%程度動くことがある。

この振動を「リスク」と考えている。


・営業日は年間250日程度あるが、だからといって、日経平均が年間で250~500%は変動しない。せいぜい 20 ~ 30%のはず。  

このように、リスク(=変動) は時間に比べてマイルドにしか増えない。


・時間の平方根でリスクは増える。


・リターンは時間に比例して増える。


・リターンとリスクとの関係は長期で運用すればするほど良くなる。


株式投資とは、 20 年で140倍にもなる暴力的なもの


・仕事とは、日々こなすものではない。

達成困難な長期の目標に向かってハードワークすること。  

ポートフォリオ運用とは、そのような世界の主役を抜擢するもの。


・社会的な意義がある分野で、オンリーワン企業であれば、利益率も高く、増収率も高くなる。


column  投資家の社会的な

 

・人々の固定給の面倒を見るのが投資家の社会的な役割。
投資家こそが、本当は、国民の生活を支えている。
金持ち優遇との批判は的を射ていない。
投資家を痛めつけて真っ先に困るのは国民。


・投資家として株価の将来を信じるということは、自らの未来も他者の未来もどちらも諦めないということ。

 


5. 初心者でも年1回、 30 分でOK!「ポートフォリオの構築法」


ポートフォリオ運用を実現する4つの手順


手順1 運用金額を決める


株式投資は余裕資金の半分以下で行う。

運用金額を6で割る。

この金額以内で買える株だけを選ぶ。
最悪でも 25%未満にする。


・売買単位は100株が基本だから、運用資産が100万円であれば、1700円程度までの株価(2500円未満なら可) からなるポートフォリオを構築することになる。
この制約は集中投資を避けるためのもので、非常に重要なポイント。


手順2 投資案件の選定


・「SPDR S&P500 ETF(1557)」「NASDAQ100 ETF(1545)」「日経平均連動ETF(1321)」「日経レバレッジETF(1570)」の4つ。

10 万円以下で買えるものばかり。


手順3 投資案件を類別する(外需と内需に分ける)


手順4 個別株でペアを作り、残りはETFで構成

 

ポートフォリオ全体の金額が低いと多少の妥協が必要になってくる。

優良株の株価は1700円を超える場合が多いから。

したがって、資金が100万円以下の場合、ETFを中心に運用すると良い。


・少額投資が不利になるかといえば、そういうわけではない。

3条件を満たす1700円以内の株もあるから。

選べる企業が少なくなるが、ポートフォリオ運用にはお宝銘柄もブーム株も必要ない。


ポートフォリオ運用を行えば、運用資金が200万円以上なら 10 年で3~4倍程度、 20 年なら9~ 16 倍程度にはできるはず。
それを達成するリターンは年率複利で 12 ~ 14%程度。


セカンドプランの導入


ポートフォリオの年間の変動率は、概ね 20%程度になる。


ETFを多用していること、そして内需と外需をバランスよく個別株で配置していることから、上場インデックスファンドTOPIX程度にリスクを抑えていると考えられる。


・セカンドプランは、時価が当初の価値の8割に下がってしまった場合に実行する。

8割に下がるというのは、景気の後退が予想される局面であり、多くの投資家が失望している状況。


・10 年の運用期間のうち1~2年は、非常に悪くなることもあると最初から覚悟しておく。


・セカンドプランといっても、やることは非常にシンプル。

ポートフォリオの 20 ~ 30%を占めるETFの部分のうち、簿価の 10%だけを売却し、その売却金額で「日経レバレッジETF(1570)」と入れ替える。


・全てを個別株で構成するポートフォリオの場合、個別株のうち、パフォーマンスの相対的に良いものを売却して 10%の資金を捻出する。

その 10%で同様に「日経レバレッジETF(1570)」にスイッチする。


・その後、考えうるパターンは2つ。
ケース1は、 20%下がった後、相場が回復してポートフォリオ時価が100%に戻る場合。

つまり、200万円のポートフォリオが160万円に下がった時点で「日経レバレッジETF(1570)」を購入したが、運よく、200万円に回復するケース。
この場合は、200万円の回復時に再度、反対売買を行って、「日経レバレッジETF(1570)」を「日経平均連動ETF(1321)」などの当初保有ETFに戻す。


サードプランの発動


・もう一つのケースが「サードプラン」。


・160万円の時価が200万円に回復することなく、160万円をどんどん割り込む場合。
サードプランは時価が128万円、つまり当初の簿価の 64%にタッチした時点で、実行する。

そのときは、1570以外の残りの保有ETFを全て売り、その売却金額で買えるだけの「日経レバレッジETF(1570)を購入する。


・全てを個別株で構成している方は、再度、パフォーマンスの相対的に良いものをさらに 10%程度売却し、「日経レバレッジETF(1570)」にスイッチする。

 

・サードプラン発動後にはおよそ2割が日経レバレッジに置き換わる。


・その後、どれだけ下がろうが、ただ我慢。

これには相当の覚悟が必要だが、これが生じる確率は 50年に1回あるかないか。


・サードプランは、ポートフォリオが当初簿価の 80%を回復したときに終了する。

サードプランで購入した「日経レバレッジETF(1570)」を売却し、元の「日経平均連動ETF(1321)」を購入する。

あとはセカンドプランの段階に戻るだけ。

 

ポートフォリオの改質


・運用で大切なことは、セカンドプランとサードプランを予め設定しておくこと。

 

・急落相場は早期に回復する場合もあれば、じわりじわりと下げ相場が続く嫌な展開もある。
株価は、短期では振動要素が勝る。その振動が不利な動きをするときに、往々にして、初心者はプランの実行が早すぎる。

5%程度の下げで動揺してしまう。

 

株式投資だから、 20%の下げは当然起こると覚悟を決める。

しかし同時に、 10 年以上の運用であれば、その下落を補ってお釣りがくると信じる。


・日経ETFをダブルレバレッジタイプにシフトするのは、ポートフォリオを攻撃的な性格に変えるため。


・急落後には、相場のエネルギーが溜まり、急騰することも多くある。  

普段は何もする必要はない。急落時だけポートフォリオの改質を行う。

改質もマイルドなもので、極端な改質は行わない。あくまで、主役は銘柄たち。


ステージを設定する


・簿価が1・5倍、2倍、2・5倍と0・5倍刻みで増えるごとに新ステージを設ける。
1・5倍を「第2ステージ」にする。


・第2ステージになったらセカンドプランは、その時点1・5倍の8割にポートフォリオが下がった時点で発動する。


ポートフォリオの維持


ポートフォリオ運用をする場合、1年ごとに銘柄を見直す。

時間のある方は適宜見直して構わない。


・運良く1・1倍になっている場合、制約は少し緩む。

当初は入れることができなかった、少し高い株価の銘柄まで投資対象は広がる。


・運悪く0・9倍になっている場合、選べる銘柄の制約は厳しくなる。

その時点での6分の1程度(最高で時価の 25%以下) の株価で銘柄を再度構成する。


「ワンアウト・ワンイン」と「ワンイン・ワンアウト」


ポートフォリオのメンテナンスには2つのやり方がある。
一つは、手順に沿ってみたら、前年まで前述の銘柄選択の条件を満たしていたものが、満たさない状況になるとき(「ワンアウト・ワンイン」)。

そのとき、その銘柄はポートフォリオにはもはや入れることはできない。

したがって、売ることになる。

 
・もう一つのメンテナンスのやり方は「ワンイン・ワンアウト」。

 

・これらの方式が必要な理由は、時間の制約。

あまりにも銘柄数が多いと、1銘柄当たりの調査などが散漫になってしまう恐れがある。

銘柄数がどんどん増えていくと管理がそれだけ難しくなってしまう。


・最適な銘柄数についてはさまざまな意見があるが、一般的なアクティブ運用の機関投資家は100~200程度に分散。


・集中投資タイプは 30 ~ 40 銘柄程度。


・分散効果というよりも集中投資を避けるために、 20 は必要。


個人投資家の中には、「6も分散するとインデックス並みの運用しかできない」と考える人もいるが、間違っている。

6より少ない分散は非常に危険。

分散効果では銘柄固有のリスクをヘッジできないから。


ポートフォリオをバランス良く組むという観点からは、低いPERだけで組むポートフォリオならば、むしろ、何も考えていないランダムなバリュエーションのポートフォリオのほうが強い。
低いPERは下請けリスクなどのヘッジできないリスクが高く、景気の後退局面で大きなリスクを負う。

できれば差別化できる強い企業を「PER 30 倍程度以内」で選ぶ。

 
・高値づかみを避けるためには、利益率をチェックする。

これは有価証券報告書で直近5年の利益率が報告されている。
純利益率の平均が7%以上あるものを選べば、銘柄固有のリスクは比較的小さい。


・利益率が高い企業は、低い企業に比べて短期の株価の急騰急落のリスクは小さくなる。

黒字からいきなり赤字になることはない。その逆、赤字から黒字へと劇的に変わることもないから。

あるいは差別化された商品を販売しているから利益率が平均的に高い。


・将来が見通せる企業ということから、株価の動きは材料株や仕手株のように大きなものにはならない。


・純利益を見るのは、バランスシートのリスクも考慮するため。

企業によってはバランスシートが劣化している企業もあり、そういう企業はたまに特別損失を出す。その特別損失も考慮して8%というハードルは税引き後であるため容易くはない。


・柔軟に利益率の条件を緩和することは投資家の自由。


・ベテランの投資家であれば、将来の利益率などを想定し、今は低くてもいずれ改善すると見れば投資対象としていただいて問題はない。

 

出口戦略について

 

・まとまった資金が必要になる場合、運用額の一部、または全額を現金化する必要がある。
その際は、 資金が必要になる時期の1カ月前から売却の注文を出して計画的に売却する。


・相場だから、上がる日も下がる日もある。

1日で売却を急いでしまうと、株の中には日々の出来高が乏しいものもあるため、自身の売りで株価に影響を与えてしまう。

だから、数回に分けて売却して少しでも有利な条件で現金化する。


・発注は成り行き注文ではなく指値注文。

そのときの株価の1%以上の指値で丹念に発注する。


・当初設定した目標が達成できた時、達成を祝して一部をキャッシュ化してもいいが、特に緊急の資金のニーズがない場合は、現金化するよりも、ポートフォリオのまま保有を継続することをおすすめする。

長期運用の結果、配当が相応に高くなっていると思われる。預金金利と比べて格段に有利なわけだから、配当を長期にわたり享受した方がいい。


株式投資には予期せぬ暴落もある。  

ただし、長期投資の場合、暴落を過度に恐れることはない。 暴落すれば、将来の配当の再投資の利回りも上昇するから。

暴落分は長期保有であれば、配当の再投資で埋め合わせすることができる。


・永続する配当を信じて保有を継続すれば、1~2年後には、マーケットは再び良い状態に戻る。暴落後にできる特別な対応策はない。

暴落に耐えて待つこと。待てば戻るから。
あえて手を打つとすれば、暴落の前。
暴落前の対応としては、相場があまりにも堅調だなと感じる場面があれば、ポートフォリオの一部をキャッシュ化できる。

 

・「あまりにも堅調」とは、普段は芸能ネタしか取り上げないワイドショーや女性週刊誌が株の特集を組み始めたとき。  

あるいは、普段は無縁のコーヒーショップやアパレルの店員さんが株で儲けた話をしていたり、ご近所で株の儲けの話題になっていたりしたら、それは相場のピークアウトのサイン。

そのとき、一部を現金化して暴落に備えるという戦略は有効な手段。

ポートフォリオの3割から半分をキャッシュ化し、1~2年様子を見ることも有効かもしれない。


・全てをキャッシュ化するのではなく、半分以上は株の保有を継続する。
長期投資では保有ゼロという状況は不利。
相場は良すぎるときも、必ず暴落が来るわけではなく、さらにバブルのように急騰することもあり得るから。


・市場の配当利回りが1%を超えて低下するときは、一般的には売りどき。
したがって、配当利回りが1%以上低下した場合に、ポートフォリオの3割をキャッシュ化するという戦略も有効。


・「1・5%の低下で5割をキャッシュ化する」などと事前にキャッシュ化の戦略を決めておくのもいい。  

いずれにしても、キャッシュ化戦略は 10 年を超える長期の投資にはあまり必要はないもの。


・数年のタームで運用を考える方は、キャッシュ化などの出口戦略は、その場その場で考えるのではなく、事前に策定しておく。


・長く生きる時代。

100年を超えて生きることを想定するならば、 10 年とは言わず 30 年程度のポートフォリオ運用をおすすめする。

ポートフォリオ運用に「年を取りすぎた」とか「始めるのが遅すぎた」ということはない。

 

 


・投資の成功とは、最終的には企業の事業の成功とその持続に負うもの。


・長期にわたり正しい努力を続ける企業だけが高い目標を達成できる。長期のデザインで運用することができれば、誰でも資産を増やすことができる。


・種をまいてもすぐには収穫できない。

同様に短期トレードの成功は偶然にすぎない。短期の株価は単にランダムな振動に過ぎない。

しかし長期では株式投資は年輪のようにじわりじわりとリターンを重ねていく。


・個別株のお宝銘柄の連呼はしない。

それはポートフォリオによる運用とは言わない。


・残念なことに、世の中には上場株の数よりも投資信託の数のほうが多い状況。

運用のプロに預けて投資信託を選ぶと高い手数料がかかる。
しかし一部、非常に良心的な投信は存在する。
例えば、セゾン投信は長期の積み立てに最適な商品を提供している。セゾン投信のような証券会社を介さない直販の良心的な投信で財産を作り、まとまったお金ができたら、最終的にはご自身でポートフォリオを構築する。


・自身でポートフォリオ運用を始めると投資信託と違って、自身で発注すればいいため、運用の手数料はかからない。

配当も入ってくる。

そして議決権も株主優待も入ってくる。

長期にわたり銀行や証券会社などの販売業者に手数料を払わない運用人生を送れる。

 

 

 

以上。これらの知識を活かして、ポートフォリオ運用を行ってみてはいかがだろうか。

 

 

 

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